JAXA様

宇宙航空研究開発機構 JAXA(ジャクサ) 衛星利用運用センター 宮崎景太氏、井上一宇 氏、ESRIジャパン 櫻井洋祐 氏に、サーバーワークスにだいち防災ポータルWebのAWSインフラ構築を依頼した経緯について詳しくお聞きしました。※ 櫻井氏はAWSインフラ構築当時ESRIジャパンからJAXAに出向。

宇宙航空研究開発機構 JAXA(ジャクサ)は、宇宙航空分野の基礎研究から開発・利用に至るまで一貫して行う機関です。その一部門である「衛星利用運用センター」はその名のとおり、衛星の「利用推進」と「維持・運用」の二つが主業務です。「利用推進」とは、人工衛星が取得したデータを用いた行政や民間に対する課題解決の支援をする業務のことです。「維持・運用」とはJAXAが打ち上げた人工衛星が正しい軌道を維持できるよう衛星そのものを地上から保守・管理する業務を指しています。

(※ この事例に記述した数字・事実はすべて、事例取材当時に発表されていた事実に基づきます。数字の一部は概数、およその数で記述しています)
(※ 本事例中での「JAXA」という語は原則として「JAXA 衛星利用運用センター」を指すものといたします)


導入サービス

『だいち防災Webポータル』のAWSインフラ構築をサーバーワークスに依頼

今回、JAXAではサーバーワークスにどんな業務を依頼したのでしょうか。

JAXAでは、国内で自然災害が起きたとき、人工衛星から撮影した被災地の画像を自治体など関係者にすみやかに提供するために、Web情報システム「だいち防災Webポータル」を開発・運用しています(※)。サーバーワークスにはこの『だいち防災Webポータル』のAWSサーバーインフラ構築を依頼しました。

『だいち防災Webポータル』では、被災地の画像を大きく次のような手順でユーザーに提供しています。

  1. 人工衛星から被災地の様子を撮像する。
  2. 空撮した画像(生データ)を衛星から地上局のシステムに送信する。
  3. 地上局のシステムから『だいち防災Webポータル』サーバーにインターネット経由で転送する。
  4. 転送された生データは『だいち防災Webポータル』の処理サーバーで、ユーザーが使いやすい形に加工する。
  5. 処理サーバーからWebサーバーに加工したデータを転送する。こうしてユーザーは被災地の衛星画像をWebサーバーから取得できるようになる。

これらシステムのアプリケーション部分はJAXAおよび外部企業が開発・管理しています。サーバーワークスには、アプリケーションの動作の土台となる「仮想サーバーインフラの設計、構築」、「ストレージ、メール配信エンジンの構築・設定」を一括して依頼しました。依頼内容の詳細は次のとおりです。

 

項目 内容
『だいち防災Webポータル』のサーバー構成 管理サーバー
処理サーバー
アプリケーション/Webサーバー
ストレージ(S3)
AWSインフラでの活用サービス VPC構築
AWSサーバーの調達、構築
SES(AWS メールサービス)構築
S3(AWS ストレージサービス)構築
スクリプト開発(ファイルのS3へのコピー)
Cloud Automator初期設定
Deep Securityインストール
スケジュール 平成28年/2月末~3月末(約1ヶ月)

『だいち防災Webポータル』のインフラに求められる要件

『だいち防災Webポータル』のインフラ部分に求められる要件を教えてください。

『だいち防災Webポータル』は、災害発生時に活用するシステムなので、そのサーバーインフラには次の4要件が求められることになります。

要件1: 「高い可用性 ~ 必ず安定して動作すること」

災害はいつ起こるとも知れないものです。そしていざ災害が生じたその時、システムは【必ず】動作していなければなりません。そのインフラには高い可用性が求められます。

要件2: 「高いBCP対応力 ~ 災害の影響を受けないこと」

「災害対策システムの災害時の可用性」を厳密に考えるとき、「サーバーインフラの物理的な所在地それ自体が災害に遭いうる」ことを考慮する必要があります。AWSはサーバーの物理的な位置が「各地に分散している」という点でBCP要件を十分満たすと考えられました。

要件3: 「高速性 ~ 災害情報には緊急性、即時性が求められる」

災害が起きたとき、その対応、対策には「一刻を争う」緊急性が求められます。そのため、『だいち防災Webポータル』は、大容量の衛星画像データを高速に処理し、ユーザーへデータを迅速に提供できる必要があります。AWSは負荷に合わせて処理サーバーの台数を自動調整するオートスケーリング型でのシステム構築が可能であるため、衛星画像の並列処理・データの迅速な提供が実現できると考えられました。

要件4: 「平時の低コスト運用 ~ 災害発生時に集中的に使うが、平時には使わない」

『だいち防災Webポータル』は本質的に災害発生時に集中的に活用し、そうでない平時にはそれほど使う必要のないシステムです。特に「衛星から送られた生画像を自動加工するサーバー」は平時に動作する必要はありません。この特性を考慮し、「不要なサーバーは平時には休眠させて、非常時だけ電源を入れてフル活用する」、そんなイメージの運用体制にして、サーバー運用コストを削減したいと考えました。この「必要なときだけ使う」「使った分だけ支払う」という運用には、AWSのようなクラウドサーバーが最適です。

『だいち防災Webポータル』のAWSインフラ構築の入札は平成28年2月に行いました。その結果、サーバーワークスが要求書に記載した要件を良く満たした上で、最も競争力のある価格を提示していたので、これを採用しました。

そして平成28年2月末より設計・構築を開始、同年3月末には所定の作業はすべて完了しました。『だいち防災Webポータル』は平成29年11月より実運用を開始しています。

サーバーワークスへの評価

実際に作業を依頼してみてのサーバーワークスへの評価をお聞かせください。

まず作業要求書で求めた仕様はすべて的確に実装いただきました。今回、『処理サーバー』では画像処理を高速化するべくアプリケーション側で最大10プロセスが並列動作する仕様で設計し、この並列処理に十分に耐えうる堅牢なサーバーインフラが構築できました。またAWSは、従来比でデータ転送スピードが4倍になるなど基盤自体の基礎性能が優れています。AWSで多くの導入実績を持つサーバーワークスの技術力によりその潜在力が十分発揮されたといえます。

この他に「巨大な画像データの、管理サーバーからS3ストレージへの自動転送」の設定を依頼しました。AWSのサービス体系では、サーバーよりもS3の方がデータ保存の費用が安くなります。衛星から来る画像データは非常に巨大なので、これを管理サーバーで保管し続けるとコスト増を招きます。これを見越して、処理済み画像データをS3に自動転送する仕組みを構築しました。S3への自動転送はAWSのLambdaを駆使して実装しています。Lambdaは当時としては新しい技術であり、どのインテグレーターでも活用可能ではなかったため、Lambdaを使ったことは同社の技術的な付加価値といえます。

今回は構築期間1ヶ月というタイトなスケジュールでした。予算編成の都合上、『年度末完了』が必達納期でしたが、サーバーワークスは的確・確実に作業をこなし、構築は予定どおり完了しました。

この他、構築中に「急遽、管理サーバーの容量を増やす必要が発生」という突発案件が生じましたが、迅速に対応いただきました。大手企業のインテグレーターの場合、組織が大きいためか、「持ち帰って検討」「見積もりは一週間後に」となることも珍しくありません。しかし防災対策Webでは、その本質上、「緊急要請」が必然的に生じます。それを考慮したとき、サーバーワークスは組織サイズが「ちょうどよく」、だから迅速に動けるのだろうと思います。

最後にサーバーワークスは、金融機関での実績が多いこともあり、セキュリティ面の設計、構築に信頼感、安定感がありました。独立行政法人として案件を依頼するにあたりセキュリティ面が確実であるのは、非常に安心感があります。

今後の期待

サーバーワークスへの今後の期待をお聞かせください。

JAXAでは『だいち防災Webポータル』の推進、拡充を通じて、人工衛星を災害対策・復旧活動にさらに役立てていけるよう尽力する所存です。サーバーワークスにはそうしたJAXAの取り組みを、AWSなどクラウドサーバー基盤に関する優れた知識、提案、サポートを通じて後方支援いただくことを希望します。今後ともよろしくお願いします。


※ JAXA(宇宙航空研究開発機構)のサイト:http://www.jaxa.jp/
※ 事例公開日:2018年3月27日
※ 取材制作:カスタマワイズ http://www.customerwise.jp/

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