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セキュアなAWS環境を実現するための主要セキュリティサービスとマルチアカウント戦略

セキュアなAWS環境を実現するための主要セキュリティサービスとマルチアカウント戦略

「AWS環境のセキュリティ、複雑でどこから手をつければいいのか分からない」「進化し続けるクラウドの脅威に、自社の対策は追いついているのだろうか」。そうしたお悩みを抱える方は、多いことでしょう。

そこで本コラムは、AWSセキュリティの専門家が、強固な多層防御の構築方法から、導入必須の主要サービス、そしてエンタープライズに不可欠なマルチアカウント戦略まで、実践的なベストプラクティスを分かりやすく解説します。

貴社のAWS環境をより安全に、かつ効率的に運用するためのヒントがここにあります。

  • 株式会社サーバーワークス 佐竹 陽一

    株式会社サーバーワークス 
    佐竹 陽一

    2010年1月からAWSを業務として本格的に利用を開始。2014年7月にサーバーワークスへ入社。
    プリセールスから導入、運用保守までお客様と長期の関係性を築くことを得意としています。現在は「コスト最適化」と「AWS Organizations を活用したマルチアカウントとセキュリティ」の2つを軸にしたカスタマーサクセスとして活躍中。AWS パートナーネットワークにおいて「2020-2025 Japan AWS Top Engineers」、「2020-2025 Japan All Certifications Engineers」、また「2021-2022 Japan AWS Ambassadors」として表彰。

AWSにおけるセキュリティ対策の現代的課題と重要性

企業のクラウド活用が加速する現代において、セキュリティ対策は避けて通れない最重要課題の一つです。特に、Amazon Web Services(AWS)は多岐にわたるサービスと機能を提供しており、その選択肢が豊富であるがゆえに、「どのようにすればセキュアな環境を構築し、維持できるのか?」と頭を悩ませる方は少なくないでしょう。

AWS自身もセキュリティを最優先事項と位置づけ、早期から重視しています。AWS Well-Architected Frameworkは2015年発表当時、「セキュリティの柱」を最優先事項としていました。

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AWS Well-Architected Framework

しかし、AWSは多機能ゆえに選択肢が多く、また独自性もあるため、深い理解には学習のみならず、「検証・実践」が不可欠です。現時点で約30以上のセキュリティ関連サービスが存在し、さらにAmazon EC2のセキュリティグループのように、各サービス自体にもセキュリティに関わる設定が含まれます。これらすべてを把握し、適切に活用していくには、相当な労力を要するでしょう。

また、セキュリティに「これだけで安全だ」という万能薬(銀の弾丸)はありません。技術の進化、脅威の変化、ビジネス要件の変更等に伴い脆弱性も変化するためです。したがって、一つの防御策に依存せず、複数の対策を重ねる「多層防御」が不可欠とされています。

本記事では、AWS環境におけるセキュリティ対策の普遍的な原則である「多層防御」の考え方、そして近年特にエンタープライズ企業で必須の取り組みとなっている「マルチアカウント戦略」に焦点を当て、セキュアなAWS環境を実現するための実践的なアプローチをご紹介します。

普遍的原則「多層防御」でセキュリティの穴を防ぐ

セキュリティ対策において最も重要な原則の一つが、「多層防御」です。これは、一つの防御策に依存するのではなく、複数の異なる対策を重ねることで万一の際に穴を突かれるリスクを大幅に低減させる考え方です。

この概念を理解するのに役立つのが、ジェームズ・リーズンが提唱した「スイスチーズモデル」です。これはセキュリティ上の欠陥を「チーズの穴」に例え、それらの穴が防御層の中で重ならないようにすることで、事故や攻撃を防ぐという考え方です。たとえ1つの防御層に欠陥があっても、次の層がそれを補完し、全体としてのインシデント発生リスクが低減されるのです。

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セキュリティの多層防御を表すスイスチーズモデル

AWS環境においても、この多層防御の考え方は極めて重要です。例えば、Web Application Firewall (WAF) の導入は一般的ですが、それだけで万全とは言い難いもの。サーバOSとミドルウェアのパッチ管理、そしてアイデンティティ管理も重要になります。故に、決して「MFA(多要素認証)の設定さえ実施すれば安全」ということはなく、「これだけやっていればよい」とならないことが肝要です。重要なのは、「多層防御をAWSでどのように実現するか?」という問いに答えることです。

重要度の高いAWSセキュリティサービス4選

AWSが提供する約30以上のセキュリティ関連サービスの中から、すべてを一度に導入するのは現実的ではありません。まずは、その中でも重要度の高い、以下の4つのサービスから導入を検討することをお勧めします。

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AWS CloudTrail: APIコールの操作履歴を、いつ、誰が、何を実行したのか記録・保存する監査サービスです。操作履歴の記録サービスによって「いつ誰が何をしたのか」が追跡可能に。また、Amazon S3にログを出力することで恒久的かつ安価に保存、分析にも活用できます。これらはフォレンジック調査の要であり、コンプライアンス監査の基盤となります。

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AWS Config: AWSリソースの構成変更を追跡し、コンプライアンス違反を監視するサービスです。AWSリソースの構成変更を継続的に追跡・記録し、設定のベストプラクティスやコンプライアンス要件からの逸脱を監視・評価します。これにより、予期せぬ設定変更やセキュリティリスクを自動で検出し、可視化することが可能です。

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Amazon GuardDuty: 機械学習によるパターン分析や AWS サービスの各種ログの解析結果を活用したインテリジェントな脅威検出サービスです。具体的には VPC Flow Logs、DNS Query Logging、AWS CloudTrail Events を分析し、悪意のあるアクティビティや不正な動作を自動検出します。

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AWS Security Hub CSPM: セキュリティアラートを統合表示するCSPM(クラウドセキュリティポスチャ管理)です。AWSのさまざまなセキュリティサービス(Amazon GuardDuty、Amazon Inspector、Amazon Macie など)やパートナーソリューションから集約されたセキュリティアラートとコンプライアンスチェック結果を統合的に表示し、設定が安全かベストプラクティス基準で自動点検を行い、可視化します。

これらのサービスを導入することで、AWS 環境全体のセキュリティ状況を把握し、リスクを低減させることが可能となります。これらの導入はセキュリティ対策の重要な一歩ではありますが、セキュリティ対策はそれだけで完了するものではなく、同時に、これらを適切に「継続的に運用」していくことが、セキュアな環境を維持するための鍵となります。

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Amazon GuardDutyによる脅威検出の例

例えばこの画面のケースは、複数の深刻なセキュリティリスクが同時に発生している、非常に危険な状況です。まず、ブルートフォース攻撃により、外部からサーバが乗っ取られようとしている、もしくは既に侵入されていることがわかります。加えて、侵入されたインスタンスはマルウェアに感染し、コマンド&コントロールサーバとの通信や、仮想通貨のマイニングといった不正行為に悪用されている可能性が極めて高い状況です。もっとも深刻なのは、この危険な状態が1ヶ月も放置されていた点です。これは本来、検出直後に対応すべき緊急性の高いインシデントでした。

セキュリティベストプラクティスとマルチアカウント戦略

AWSにおけるセキュリティのベストプラクティスとして、近年特にエンタープライズ企業で注目されているのが「マルチアカウント戦略」です。マルチアカウント戦略は、AWS Well-Architected Framework の「セキュリティの柱」において、最優先のベストプラクティスとして「SEC01-BP01 アカウントを使用してワークロードを分ける」と明記されていることからも、その重要性がうかがえます。

マルチアカウント戦略とは

マルチアカウント戦略とは、AWSアカウント自体をセキュリティ境界とし、より強固なガバナンスを実現するセキュリティ戦略です。ワークロードや環境(開発、ステージング、本番など)、あるいは部門ごとにアカウントを分離することで、万一いずれかの環境でセキュリティインシデントが発生しても、影響範囲を最小限に抑えることが可能となります。この戦略は、近年、特にエンタープライズ企業で必須の取り組みと位置づけられています。

そしてこのマルチアカウント戦略を効果的に実現し、管理・統制していくためには、AWS OrganizationsやAWS Control TowerといったAWSサービスの活用が不可欠です。

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AWS Organizations: 複数のAWSアカウントをグループ化し、一元的に管理するためのサービスです。Root、OU、AWS アカウントなどの組織の各エンティティに対して承認ポリシーをアタッチすることで、組織全体のアクセスコントロールを一元的に管理。特に承認ポリシーの1つであるサービスコントロールポリシー(SCP)を活用し、各アカウントの利用できる AWS サービスやアクションをきめ細かく制御し、セキュリティリスクを低減できます。

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AWS Organizationsの構成図(例)

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AWS Control Tower: 安全でマルチアカウントに対応したAWS環境を迅速にセットアップ・管理するためのサービスです。Account Factory機能を通じて、あらかじめ定義された設定に基づき、新しいAWSアカウントを標準化された手法で迅速にプロビジョニングできます。これにより、手作業による設定ミスを防ぎ、ガバナンスの効いたAWSアカウントを効率的に展開することが可能となります。

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AWS Control Towerの構成図(例)

マルチアカウント戦略では、「セキュリティツール、共有サービス、ログ保管、ネットワーク基盤、本番環境やステージング環境のワークロード」といった目的や役割に応じて AWS アカウントを適切に分割。以下の構成例のように、AWS アカウントの役割を分離することで、万一のインシデント発生時に影響範囲を限定することが可能です。

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マルチアカウント:役割別の構成図(例)

セキュリティ対策は「継続的な運用」が鍵

セキュリティ対策は「一度設定したら終わり」というものではありません。技術の進化、新たな脅威の出現、ビジネス要件の変化など、クラウド環境は常に変化し続けています。そのため、セキュリティも常に運用し続け、これらの変化に継続的に追従し、進化させていくことが不可欠です。

セキュアな環境を実現するための鍵は、まさにこの「継続的な運用」にあります。AWS Well-Architected Frameworkの「セキュリティの柱」や多層防御の考え方に基づき、適切な対策を継続的に講じることで、企業はAWS環境におけるセキュリティを維持できるでしょう。

サーバーワークスのマネージドセキュリティサービス「サバソック」のご紹介

株式会社サーバーワークスは、AWSの専門家として長年の経験と実績を積み重ねてまいりました。特に、AWS OrganizationsやAWS Control Towerをはじめとするマルチアカウント管理、そしてAWSセキュリティサービスの導入・運用支援において、数多くの企業様をご支援しています。

私たちは、お客様が直面する「セキュリティ対策の継続的な運用」という課題を解決するため、マネージドセキュリティサービス「サバソック」を提供しています。

サバソックは、お客様のAWS環境のセキュリティ向上を総合的にサポートするサービスです。

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サバソックが選ばれる理由

  • 24時間365日の監視体制: セキュリティ脅威の早期発見と迅速な初期対応を支援します。お客様の運用負荷を軽減し、専門家による監視で安心を提供します。
  • 低コストでスピーディな導入: AWS専門のノウハウを基に、効率的かつ迅速にセキュリティ運用を開始できます。
  • 豊富な実績と専門知識: AWSにおけるセキュリティ対策の知見が不足している企業様でも、当社の豊富な導入・運用実績と専門知識が強力なサポートとなります。

セキュアなAWS環境は、一度構築したら終わりではなく、常に運用し、進化させ続ける必要があります。ぜひこの機会に、サーバーワークスのマネージドセキュリティサービス「サバソック」にご相談ください。貴社のAWS環境におけるセキュリティ課題の解決を、力強く支援します。

まとめ

本記事では、「セキュアなAWS環境を実現するための」というテーマで、以下の重要なポイントを解説しました。

  • セキュリティは「多層防御」が原則であり、スイスチーズモデルのように複数の防御策を組み合わせて利用することが不可欠です。
  • 今回ご紹介した主要なAWSセキュリティサービスを、優先的に導入しましょう。
  • マルチアカウント戦略も、セキュリティのベストプラクティスです。

そして最も重要なポイントが、

  • セキュリティ対策は「一度設定したら終わり」ではなく、「継続的な運用」によって変化に追従し、進化させ続けることである

という点です。

セキュアなAWS環境は、これらの要素を複合的に組み合わせ、継続的に取り組むことで実現されます。ぜひ本記事を参考に、貴社のAWSセキュリティ強化にお役立てください。

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