メール配信サービス基盤のAWS移行でサーバーワークスに技術支援を要請。内製開発によってAWSの技術を習得し共同販売プログラムの認定取得も推進

「テクノロジーの解放」をビジョンに掲げ、セキュリティとメールを中心としたSaaSソリューションの開発・販売を手がけるHENNGE株式会社。同社はクラウド型メール配信サービス「Customers Mail Cloud」の基盤をアマゾン ウェブ サービス(AWS)に移行するにあたり、サーバーワークスに技術支援を要請。AWS ファンデーショナルテクニカルレビュー(FTR)やAWS Well-Architected Frameworkレビューなどの支援を受けながら、内製開発によって無事に移行を完了しました。現在はAWSと共同でソリューションを販売するAWS ISV Accelerateプログラムの認定取得に向けた取り組みを継続しています。
事例のポイント
Before
お客様の課題
- メール配信サービス基盤のAWSへの移行
- AWSのベストプラクティスに沿った設計
- AWS ISV Accelerateプログラムの認定取得
- AWS ファンデーショナルテクニカルレビュー (FTR) の実施
- AWS Well-Architected Frameworkレビューの実施
After
課題解決の成果
- BYOIPに対応した新たなサービス基盤(AWS)への移行
- FTRやAWS Well-Architected Frameworkレビューのノウハウの獲得
- AWS上での開発の内製化
- メンバーの技術レベルの向上
- AWSのコスト最適化
導入サービス
- AWSテクニカルアドバイザリー
Index
メール配信サービス基盤のAWS移行とAWS ISV Accelerateの認定取得
「テクノロジーの解放」をビジョンに多くの顧客企業のSaaS活用を支援するHENNGEのビジネスにおいて、クラウド型メール配信サービス「Customers Mail Cloud(以下、CMC)」は同社を代表するサービスの1つです。
「CMCは、クラウドから簡単に高い到達率でメールを配信できるサービスです。高度な可用性、セキュリティ性能を備えたCMCは、お客様に確実にメールを届けたいBtoC企業を中心に、インターネットバンキングの取引確定通知や電子チケットの発券通知などの配信で利用されています」とMessaging Business Division ディビジョン統括の大久保正博氏は話します。

ディビジョン統括 大久保 正博 氏
同社では、これまでCMCを国産のIaaS上で運用してきました。しかし、既存のIaaS環境ではISP事業者が保有するIPアドレスを同社が借り受ける形でユーザーに提供せざるを得ないため、管理の自由度が低く、IPレピュテーション(信頼度)の責任範囲があいまいになる課題がありました。そこで同社が着目したのが、自社保有のIPアドレスを持ち込むことができる「BYOIP(Bring Your Own IP Address)」に対応したAWSへのメール配信基盤の移行でした。
「AWSへの移行によってBYOIPが実現することに加えて、AWS CloudTrail、Amazon GuardDutyといった高度なセキュリティ機能が活用できること、また多くのエンタープライズ企業が利用するAWS上で運用することでサービス自体の信頼性を高めることができます」(大久保氏)
AWSへの移行がもたらすメリットはこれだけではありません。AWS上で提供が可能なサービスをAWSと共同で販売する「AWS ISV Accelerateプログラム」の認定を取得することで、AWS Marketplaceなどを介して販売を加速できるビジネス面でのメリットもあります。
「AWS ISV Accelerateプログラムの認定を取得するためには、AWS Well-Architectedのベストプラクティスに沿ってソリューションのリスクや信頼性を検証する評価プログラム『AWS ファンデーショナルテクニカルレビュー(FTR)』の要件をクリアしなければなりません。しかし、CMCの開発チームにはそのノウハウがなく、外部のエキスパートの支援が必要でした」(大久保氏)
サーバーワークスに技術支援を要請し内製開発でプロジェクトを推進
CMCの配信基盤のAWS移行とAWS ISV Accelerateプログラムの認定取得に向けて、内製開発の方針を掲げたHENNGEが技術支援を要請したのがサーバーワークスでした。
「サーバーワークスとは、すでに10年近くの取引実績があり、技術力の高さは認識していました。BYOIPやFTRについて相談したところ、ネットワークやセキュリティに強いエンジニアをアサインしていただけるということで伴走型の支援をお願いしました」(大久保氏)
プロジェクトは2023年7月にスタートし、サーバーワークスによる支援は2024年12月までの1年半にわたって続きました。AWSへの移行は既存のIaaS環境をそのまま移行する「リフト」を選択し、AWS環境の設計・構築はベストプラクティスを参考にしながら自社で実施しました。この間、サーバーワークスからは設計書のレビュー、パラメータシートの提供、AWS CloudFormationによるInfrastructure as Code化、監視設定のテンプレート提供、コスト分析などの支援を受けました。プロジェクトの開発リーダーを務めたMessaging Business Division, Messaging DevOps Section セクション副統括の稲田崇氏は次のように振り返ります。

セクション副統括 稲田 崇 氏
「サーバーワークスにはQ&A対応を中心に、アーキテクチャのサンプルを作成していただいたり、私たちが作成した設計書をレビューしていただいたりと、随時相談しながら進めていきました。プロジェクトでは、長期スパンで対応するタスクから短期開発が必要なタスクまで、さまざまなタスクが発生しましたが、サーバーワークスの迅速な対応によって計画どおり進めることができました。コストについても分析に基づいて最適化を進めた結果、当初より30%削減することができています」
AWS ISV Accelerateプログラムの認定取得に向けた対応では、FTRやWell-Architected Frameworkレビューのサポートを受けながら準備を進めていきました。FTRはシステムのセキュリティや品質を評価し、AWSのベストプラクティスに準拠しているかを確認する技術認定プログラム、またAWS Well-Architected Frameworkレビューはフレームワークに沿ってベストプラクティスに対応しているかを確認するプログラムです。

「サーバーワークスのワークショップ形式のわかりやすいレクチャーによって、認定を取得するための基礎について理解を深めることができました。FTRではセキュリティや監視に関する要求レベルが高いことから、他社の事例などを交えたレクチャーは非常に有効でした」(稲田氏)
AWSの知識レベルを向上し内製開発のチーム体制を強化
HENNGEでは、サーバーワークスの技術支援が終了した2025年1月以降も自社のリソースで作業を継続し、同年3月末までにメール配信基盤のAWS移行を終え、BYOIPに対応した新たなCMCの提供を開始しました。サーバーワークスの支援から得られた最大の成果について、大久保氏は「プロジェクトを通じてさまざまな技術課題を解決していく中で、メンバーのAWSに関する知識レベルが向上し、技術的にも人間的にも成長しました。また学び方そのものを覚えたことで、新たな課題に直面した際も自分たちで解決できるようになったことは大きな成果です」と強調します。

同様に稲田氏も「サーバーワークスとのQ&Aでは、CMC固有の課題に即した回答をいただけたことで、サービスの変更箇所を具体的にイメージしながらAWSの理解を深めることができ、自分自身の成長につながっていることを実感しています」と評価しています。
AWS Marketplaceへの出品ほか販売面でもサーバーワークスと協業
AWS ISV Accelerateプログラムの認定取得に向けたFTR対応は現在(2025年4月時点)も継続中で、それと並行してAWS Marketplaceへの出品に向けた準備も進めています。
「AWS Marketplaceへの出品が実現したあかつきには、サーバーワークスが提供する販売プログラム「CPPO(チャネルパートナープライベートオファー)」も活用しながら販売を加速していく計画です。また、今後も継続してCMCのシステム改善やアーキテクチャのクラウドネイティブ化を進めていく中で、内製開発をキーワードにサーバーワークスとの協業をさらに強化していきたいと考えています」(大久保氏)


HENNGE株式会社様
1996年11月設立。「テクノロジーの解放で、世の中を変えていく。」を理念に、クラウドセキュリティサービス「HENNGE One」、クラウド型メール配信サービス「Customers Mail Cloud」を提供。主力サービスである「HENNGE One」は国内でトップクラスのシェアを誇り、導入実績は3,000社以上。
お話を伺った方
- 大久保 正博 氏
- HENNGE株式会社 Messaging Business Division ディビジョン統括
- 稲田 崇 氏
- HENNGE株式会社 Messaging Business Division Messaging DevOps Section セクション副統括
※ この事例に記述した数字・事実はすべて、事例取材当時に発表されていた事実に基づきます。数字の一部は概数、およその数で記述しています。
担当プロジェクトメンバー
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カスタマーサクセス部 CS2課 手塚 忠
ネットワーク機器ベンダの営業SEやISP・放送事業者でのネットワークエンジニアの経験を有し、2019年にサーバーワークスに入社。現在はAWSエンジニアとして、プリセールスの他、SRE契約ユーザのAWS設計、構築、運用を主に担当している。その専門知識を生かして、社内サポートをはじめ、多様な業種のネットワーク課題にも取り組んでいる。
2023 Japan AWS Top Engineers (Networking) および 2024 Japan AWS All Certifications Engineers に認定された。 -
カスタマーサクセス部 CS2課 本田 イーゴリ
2007年からIT業界に従事。2018年にロシアから来日し、日本にてクラウド領域に取り組む。2021年にサーバーワークスに入社し、初期構築やプリセールス、技術支援、SREなど、これまで幅広い業務に携わる。
エンジニアブログで技術記事を書くことが好きで、知見の共有にも積極的に取り組んでいる。
EC-Council CCSEの国際的なセキュリティ認定資格を保持し、2024年には Japan AWS Top Engineers (Security) に認定。2023年に日本国籍を取得。 -
カスタマーサクセス部営業課 小室文
2009年からAWSを使って早◯年…インフラエンジニア、開発エンジニアを経てサーバーワークスで営業をしています。週末エンジニアリングしたり編み物したり…AWSで大体なんとかなります。ぜひ会社問い合わせフォームよりご相談ください!好きなAWSでサービスはIAMです。
選ばれる3つの理由
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Reason 01
圧倒的な実績数による
提案力とスピード- 導入実績
- 1410 社
- 案件実績
- 24500 件
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Reason 02
AWS認定の最上位
パートナーとしての技術力 -
Reason 03
いち早くAWS専業に
取り組んだ歴史