AWSのオブザーバビリティとは?主なサービスやメリット・デメリット

あらゆる産業でビジネスのIT化やIoT化が進展している昨今、運用の大きな課題となっているのが複雑になったシステムの全体像の「観測」です。従来のモニタリングでは不十分になるケースが増えている今、注目されているのが「オブザーバビリティ」というIT手法です。今回は、世界中で導入されているアマゾン ウェブ サービス(AWS)におけるオブザーバビリティを例に解説します。
この記事でわかること
- 現在、システムの複雑性が進んでいるため、従来のモニタリング(監視)だけでは、システムの全体像が把握できない状況となっている
- オブザーバビリティとは、「可観測性」と訳される言葉で、システムの観測に必要なシグナルを収集する仕組みを指すITソリューションのこと
- AWSのコンポーネント間にはオブザーバビリティを実現するサービスが提供されている
- オブザーバビリティを導入すると、「可視性の向上」「情報共有の効率化」「運用コストの最適化」「ユーザー満足度の向上」のメリットがある
※当記事は2025年2月に書かれたものであり、以後に展開された最新情報が含まれていない可能性がございます。
オブザーバビリティの基礎知識
近年、「オブザーバビリティ」というIT手法が注目されています。ここでは、AWSにおけるオブザーバビリティの基礎知識や、求められる背景などについて解説します。
そもそもオブザーバビリティとは
オブザーバビリティ(Observability)とは、「可観測性」と訳される言葉で、システムの観測に必要なデータを収集する仕組みを指すIT手法です。オブザーバビリティでは、AWSのログやメトリクス、トレースのデータタイプを使用し、システムの動作を分析します。
収集したデータタイプからシステムの異常を可視化することで、発生したエラーの根本原因の特定が容易になります。
オブザーバビリティが求められる背景
近年のIT環境はクラウドネイティブなアーキテクチャやマイクロサービスの導入が進んでいます。そのため、システム間の関係が複雑になり、従来の監視手法では対応しきれないという課題が発生しています。
従来のモニタリングだけでは、システムの異常を検知することはできても、システムの全体像が把握できません。オブザーバビリティ手法を取り入れてシステム全体を監視し、適切で効果的な改善策を講じることが重要です。
オブザーバビリティとモニタリングの違い
オブザーバビリティとモニタリングは混同されがちですが、目的やアプローチに違いがあります。モニタリングとは、システムの状態を確認するために、さまざまな指標(メトリクス)を収集し、レポートを生成する方法です。
CPU使用率やネットワークの負荷のモニタリングが代表的な指標で、定量的に測定することで異常が発生した際にアラート通知が可能になります。そのため、異常を検知するものの、トラブルの原因を特定するものではありません。
対して、オブザーバビリティは指標の異常値を検知するだけでなく、問題の根本原因を特定し、改善を図ることを目的としています。このように、モニタリングはオブザーバビリティを実現する上での一要素として捉えられています。
AWSにおけるオブザーバビリティ
オブザーバビリティはビジネス目標を達成するために、取り入れたい手法であることがわかりました。AWSでは、オブザーバビリティを実現するために複数のサービスが提供されています。ここでは、その中でも代表的な2つのサービスを解説します。
AWS X-Ray
AWS X-Rayは、AWS が提供する分散トレースサービスです。
サービスの実行状況を詳細に把握することができるため、エラーや遅延の信号を特定できます。
具体的には、アプリケーション全体でのリクエストの流れを詳細に取得し、追跡データをフィルタリングすることでボトルネックとなるコンポーネントを発見し、トラブルシューティングに役立ちます。
また、AWS X-Rayは、Amazon EC2やAWS Lambdaなど、他のAWSサービスと連携できるため、多くの企業で選択されているサービスです。
Amazon CloudWatch
Amazon CloudWatchは、Amazonが提供するAWS上のサービスを監視するサービスです。
AWSサービスのリソースやイベントログを収集、監視し異常やしきい値を超えた場合、アラーム通知を行います。
ログの収集では、さまざまなデータタイプを分析することで影響範囲を特定できます。
アラーム通知は、通知するしきい値を自身で設定できるため、運用設計に沿った運用が可能です。
パフォーマンス悪化など、さまざまなリスクをアラーム通知の自動化で検知ができるため、多くの企業のワークロードに組み込まれたAWSサービスです。
AWSにおけるオブザーバビリティのメリット・デメリット
オブザーバビリティの重要性が分かりました。ここでは、AWSにおけるオブザーバビリティのメリットとデメリットについて解説します。
メリット
オブザーバビリティを導入することで、可視性が向上するメリットがあります。
メトリクス(Metrics)やログを活用することで、アプリケーションの稼働状況をリアルタイムで追跡、表示できます。
問題が発生した際に、影響範囲を評価し、根本原因を迅速に分析することが可能です。
また、オブザーバビリティは監視や管理の工数を削減することができます。なぜなら、チーム内で監視データをコンソール画面上で確認できるため情報共有の効率化を図ることができ、AWS内のあらゆるサービスに対して監視が可能となるためです。
ほかにも、オブザーバビリティにより迅速に適切な対応が可能となり、サービス品質の向上につながります。
デメリット
AWSが提供するサービスは多岐にわたるため、それぞれのサービス定義や連携作業が必要になります。
正しくオブザーバビリティを機能させるためには、組織にAWSに対する知識と経験のある人材が必要です。
しかし、AWSのオブザーバビリティツールには多くの機能が含まれており、それらを理解し活用するための高度人材の育成には学習コストや時間がかかります。
そのため、簡単に導入することができず、効率的な運用が難しいというデメリットがあります。
AWSのオブザーバビリティを上手く活用しよう
AWSのオブザーバビリティの基本知識とメリット、デメリットについて解説しました。
近年のIT環境複雑化により、従来のモニタリング手法だけではシステム全体の状態を適切に把握することが困難です。
複雑化する分散システムを管理し、パフォーマンスを最適化することが重要な課題になっており、Amazon CloudWatchやAWS X-Rayを適切に活用することで、システムの可視化やプロアクティブな運用が可能になります。
また、オブザーバビリティ手法を活用すると、障害を迅速かつ適切に検知・対処できるため、顧客満足度の向上につながるメリットがあります。
その反面、AWSの各サービスに対する高度な知識が必要であるため、社内での人材確保が難しいです。
実装にはAWSに関する知識や戦略的なアプローチが求められるため、組織全体での適切なガイドラインの整備が重要です。
サーバーワークスでは、オンプレミス環境からAWSへの移行やシステム構築、最適化を支援しています。
AWSにおけるオブザーバビリティ対応は、AWSの各サービスに対し適切な設定や連携処理を行うことが重要です。
AWSにおけるオブザーバビリティのベストプラクティスについて、もっと詳しく知りたい方はお気軽にサーバーワークスにご相談ください。
オブザーバビリティの推奨事項を順守し、効果的な運用を継続的に目指しましょう。