AWSにおけるログ管理とは?主なメリットや課題、管理の手順

アマゾン ウェブ サービス(AWS)の多様なサービスの保守運用に欠かせないのが、リソースや動作などのデータである「AWSログ」の管理です。AWSログを適切に管理できれば、セキュリティやコンプライアンスなどのリスク低減はもちろん、ユーザー行動の分析など有益な情報の収集にも役立てられます。一方、現場においては膨大なデータを効率的に収集、管理して正しく活用するための施策が求められます。そこで今回はAWSのログ管理の基礎知識や運用における典型的な課題を解説します。
この記事でわかること
- ログ管理は、システムの運用・保守には欠かせない
- AWSログとはAWS上で発生するイベントやアクションなどの記録データのこと
- AWSにおけるログ管理は「セキュリティの向上」「パフォーマンスの監視」「リソースの最適化」「データ駆動型の意思決定やBIへの活用」「法規制対応とガバナンスの強化」などが可能
- 具体的な手順はログの種類と対応するAWSサービスによって異なる
※当記事は2025年4月に書かれたものであり、以後に展開された最新情報が含まれていない可能性がございます。
AWSにおけるログ管理の基礎知識
AWSのみならずログ管理は、さまざまなシステムを運用・保守する上で大切な要素の一つです。まずはログから得られる情報を活用するために、避けては通れないAWSにおけるログ管理の基礎知識について紹介します。
そもそもログ管理とは
ログ管理とは、システムやバッチの操作履歴(ログ)を収集・分析し、ログからセキュリティ強化や業務の改善に活用することです。エラーログは、OSやサーバー、アプリケーションログのエラー情報など記録し、障害発生時に原因の特定に役立ちます。
また、ログによって、不正なアクセスや異常な操作を早期検知することも可能です。ほかにも、重要データなどのアクセスを確認したり、勤怠状況を確認したり、幅広く活用することできます。
AWSログとは
AWSログとは、AWS上で発生するイベントやアクションなどの記録データのことを指します。AWSログではさまざまな目的でログの収集が可能です。AWSへのアクセス記録などをセキュリティや監査目的で収集したり、AWS上で稼働するシステムのログをAWSサービスを通して収集したりすることができます。
さらに、閾値の設定をすることでパフォーマンス監視もAWSログとして閲覧することが可能です。
AWSにおけるログ管理のメリット
AWSにおけるログ管理は、実施することで得られるメリットが多くあります。AWSを正しく運用するためには、導入前から各メリットを意識して体制を構築していきましょう。ここでは代表的なメリットを5つ紹介します。
セキュリティの向上
AWSログを適切に収集することで、セキュリティインシデントや不正アクセスの検出、トラブルシューティングが容易になります。具体的にはAWS CloudTrailでは、AWS上の操作をすべて参照することが可能です。内部で不正な操作が行われていないか、セキュリティ監査や規制要件の遵守に役立てることが期待できます。
パフォーマンスの監視
AWS自体のリソースやAWS上で稼働する自社システムのパフォーマンスを監視することができます。例えば、Amazon CloudWatchでは、メトリクスと呼ばれる監視項目を設定することで事前に設定した閾値を超えたり、エラー内容が出力されたりすると、アラート通知を受け取るといったパフォーマンスの監視が容易になります。
リソースの最適化
リソースの使用率などを詳細に監視することで、最適なリソース配置が可能になります。
ログ分析を行うことで、十分に活用されていないリソースや過剰なリソースを特定できます。これらの情報を基に、適切なサイズへの調整や削除を行うことにより、費用削減が可能です。
データ駆動型の意思決定やBIへの活用
AWSのログファイルは、Amazon AthenaやAmazon QuickSightなどの分析ツールと連携することが可能です。ログファイルと連携すれば、データ駆動型の意思決定やビジネスインテリジェンス(BI)に活用しやすくなるでしょう。これにより、ユーザーの行動分析や業務プロセスの最適化が図れます。
法規制対応とガバナンスの強化
AWSにおけるログ管理は、法規制対応やガバナンス強化が可能です。適切なログの収集・分析・管理を通じて、組織はセキュリティの向上、コンプライアンスの遵守、運用リスクの低減などにつながります。
また、AWS CloudTrailは、ユーザーやサービスによるAPIコールを記録し、アカウントのアクティビティを追跡が可能です。AWS Configをはじめ、AWSログ記録は監査証跡として利用できるため、ガバナンス強化に活用できます。
AWSにおけるログ管理の手順
AWSのログ管理の具体的な手順は、ログの種類と対応するAWSサービスによって異なります。ここでは一般的なAWSのログ管理の順序を紹介するので、自社の環境に併せて最適なフローチャートを作成しましょう。
STEP1:管理するAWSログを選定する
まず、管理するAWSログの選定を行います。管理するログは、自社のセキュリティ基準を基に、優先度の高いログを選定しましょう。
優先度の高いログの一例を挙げると、AWSにおける仮想サーバーと呼ばれるAmazon EC2のインスタンス操作ログ、AWSユーザーのIAMサービスの認証ログなどが挙げられます。
STEP2:AWSログを収集する
次に、AWSログの収集です。AWSでは、Amazon CloudTrailやAmazon VPC Flow Logs、Amazon CloudWatch Logsなどのサービスを利用して、収集したいアクセスログなどを環境から自動的に収集します。APIの呼び出しを収集する場合はAmazon CloudTrail、ネットワークトラフィックはAmazon VPC Flow Logsというように、対象によってサービスを選択します。
STEP3:AWSログを保管する
収集したログの保管先には、Amazon S3を活用します。Amazon S3バケットと呼ばれるサービスでは、設定によりセキュリティポリシーや暗号化を設定できるため、データの安全性を確保できます。他にも、長期に保持したいログの格納に向いたAmazon S3 Glaciereなど、用途に応じて利用が可能です。
STEP4:AWSログを可視化する
収集したログは、AWSマネジメントコンソール上でモニタリングする方法があります。
Amazon CloudWatch Logs InsightsやAmazon OpenSearch Serviceなどを使い、ログを視覚的に確認可能です。指標で変化を視覚的に把握できるため、障害や異変を早期に発見できます。
STEP5:AWSログを分析する
AWSログを分析することで、不正アクセスや異常な動作を検出することができます。Amazon Athenaでは、Amazon S3に保管したログを直接SQLで検索することで、取得したい情報を迅速に分析まで行うことが可能です。ほかにも機械学習やルールベースでの分析も行うことができます。
AWSにおけるログ管理の課題
AWSにおけるログ管理は、さまざまなサービスを活用することで利便性を得られます。より便利に利用するためにも、ログ管理の課題も把握する必要があります。
膨大なログによるストレージの圧迫
膨大なログにより、ストレージが圧迫してしまうという課題があります。ログデータが増加することで、ログ管理が複雑化するため、Amazon S3のライフサイクルポリシーなどを活用して、ストレージコストを最適化する必要があります。
ログの可視性
ログが分散していると、見たい時に目的のログを見ることができません。前述した通り、Amazon CloudWatch Logs InsightsやAmazon OpenSearch ServiceなどのAWSサービスを活用することで、ログを一元的に可視化し横断的な分析を可能にします。
リアルタイムのログ分析
ログをリアルタイムに分析する場合、コストや遅延などの問題が発生します。Amazon Kinesis Data StreamsやAmazon CloudWatch Logs Insightsを使ってリアルタイムにログを収集するとともに、フィルタリング機能を用いて分析を行い、必要な部分だけを対象とすることができます。これにより、コストの抑制も可能です。
AWSのサービスで適切なログ管理を
ログ管理を適切に実施することで、さまざまなメリットが得られることを解説しました。
近年のIT業界で注目されているクラウドサービスのAWSでもログ管理を適切に実装することでメリットを得られます。しかし、AWSサービスを有効に活用しなければ、メリットを得ることができません。
サーバーワークスでは、AWS構築支援を行っています。オンプレミス環境からのAWS移行、システム構築、最適化を支援しています。
今回のAWSログ管理についても、自社のセキュリティ基準や運用コストを考慮した上でカスタマイズが可能です。お気軽にサーバーワークスにお問い合わせください。