300床以上の医療機関を対象に、デジタルサイネージを活用した医療情報プラットフォームを提供している、株式会社医療情報基盤様。当初、情報システム部門を持たず、よって開発はもちろん、運営まですべて外注先に任せてい為、ノウハウの蓄積、コスト増大、そしてお客様への柔軟な対応が十分にできていない状況であった。 その状況を改善すべくAWSへの移行を実施するのであるが、なぜ、AWSという選択をしたのか、そして導入後、なんらかの効果があったのか、導入に直接かかわったシステム統括部、マネージャーの粕井智様に語っていただこう。
株式会社医療情報基盤様
本社所在地:東京都港区芝3-4-12 廣済堂芝園ビル 2F
2010年設立。300床以上の医療機関に向けたデジタルサイネージの開発および運営事業を全国で展開。医療を取り巻く情報インフラを整備し、医療施設内の職員間コミュニケーションだけでなく、大学・医療機関・製薬会社を包含したメディアソリューションやビジネスモデルの提供を通じ、病院と病院、企業と病院、行政と病院をつなぐことで社会に貢献している。
- ※この事例に記述した数字・事実はすべて、事例取材当時に発表されていた事実に基づきます。数字の一部は概数、およその数で記述しています。
目次
3つの課題を解決するため、運営の内製化を決意
医療情報基盤の事業について詳しく教えてください。
粕井様:当社は300床以上の医療機関を対象に、デジタルサイネージを活用した医療情報プラットフォームを提供しています。私たちが提供するデジタルサイネージソリューションの最大の特徴は、病院職員専用のサービスという点にあります。病院職員の専用エリアにモニターを設置し、職員の方々が院内情報の伝達や共有、コミュニケーションの活性化を図るための仕組みを提供しています。
収益モデルはコマーシャル契約と聞きました。
粕井様:そうです。わかりやすく言うと当社は医療機関に向けたテレビ局のような存在です。放映枠の半分に、当社とコマーシャル契約を結んだ医療機器メーカーや製薬メーカーなどのコマーシャルを流すことで、残り半分の放映枠を各医療機関が無料で自由に使えるというビジネスモデルです。
なるほど。では、従来のデジタルサイネージシステムにはどのような課題があったのでしょう?
粕井様:サービス開始当初、当社には情報システム部門がありませんでした。よって開発はもちろん、運営まですべて外注先に任せていたんです。しかしずっと運営を任せていては、いつまでたっても当社にデジタルサイネージ運営のノウハウが溜まりません。これが第一の課題でした。
第二がコストの問題です。以前は施設ごとにコストがかかっていました。現在デジタルサイネージを設置していただいている医療機関は60病院ですが、2014年3月末までに100病院へ増やす予定です。設置する病院が増えれば増えるほど、コストも大きくなる。これを削減したいと思いました。
第三は運営に柔軟性が欠けていたこと。各医療機関が配信する情報の入稿は毎月2回と決まっており、「急いでこの情報を流したい」と思っても迅速な対応ができなかったのです。これら3つの課題を解決するため、自社運営に切り替えることを決めました。
“世界標準”の組み合わせでグローバルに通用するデジタルサイネージソリューションを
デジタルサイネージ配信システムのインフラにクラウドを選んだのはなぜですか?
粕井様:社内にシステムを運用できるだけの人手がない、というのが大きな理由です。今後、デジタルサイネージの設置拠点が増えていくことを考えると、オンプレミスでは配信サーバーのスケールアウトのコストや手間不可欠になります。現在はシステム統括部があるとはいえ、まだ少人数のため、運用まで担当するのは難しいと考えました。
クラウドサービスの中からAmazon Web Services(以下、AWS)を選んだ理由を教えてください。
粕井様:実は、最初は国内某社のクラウドサービスを選ぶつもりだったんです。それにAWSと比較したとき、1割ぐらい導入費用が安かったんです。提供しているサービス内容もAWSと遜色ありませんでした。
そんなとき、あるフォーラムでサーバーワークス社長、大石さんの講演を聞いたんです。その話の上手さ、説得力にひかれた、と言うのがきっかけでした(笑)。全世界での多くの導入実績、そして、コスト削減、セキュリティに優れたAWSを導入すべきだと思いました。それから、世界で最も実績のあるクラウドサービス「AWS」と、私たちが採用している世界で最も実績あるデジタルサイネージ配信プラットフォーム「SCALA(スカラ)」を組み合わせてみたいと考えたんです。なにしろ、「AWSとSCALA10」というこの試みは日本初。それにチャレンジするのも面白いですし、グローバルでも通用するデジタルサイネージソリューションが実現するかもしれない。そこにも魅力を感じたのです。
ベンダーはサーバーワークス一択だったのですか?
粕井様:講演を聞いたこともありますし、AWSに特化した技術力、150社以上への豊富な導入実績という事から、AWSを導入する以上はやはりサーバーワークスに頼むしかないと考えました。
検討から半年後には新システムによる配信を開始
導入のスケジュールを教えてください。
粕井様:2012年11月に検討を開始し、2013年1月にサーバーワークスへの依頼を決定しました。それから導入をスタートし、新しいプラットフォームで配信を開始したのは2013年7月からです。稼働までの半年間で、主にスケジュール編成システムのスクラッチ開発を行いました。これは、医療機関がコンテンツを自由に編成できるようにするためです。
本番稼働までにどんな苦労がありましたか。
粕井様:私たちが苦労したことは特にありません。ただ、導入を担当したサーバーワークスでは、SCALAが特殊なアプリケーションだということもあって、インストールに多少手間取ったようです。このあたりはSCALA社にも協力いただくことでうまく解決できました。
すべての情報配信を新システム上で行っているのでしょうか?
粕井様:2013年7月以降、新たにデジタルサイネージを設置した医療機関については新システムで情報配信を行っていますが、従来からの医療機関については現在、移行中で、年内には完了する予定です。
ユーザーの満足度が向上、喜びの声も届く
導入の効果について教えてください。
粕井様:まずはコスト削減ができたこと。先ほど申し上げた通り、従来はすべて運営を外注に任せていたため、コストがかかっていましたが、それがゼロになりました。
そして最大の効果は、ユーザーである医療機関にとってシステムが柔軟で使いやすくなり、満足度が大幅に向上したことです。従来の外注型のシステムでは、情報の入稿や放映スケジュールの変更は月2回しかできませんでした。
一方、新サービスでは自社でシステムを管理することができ、それにより新たにスケジュール編成システムを自社開発したことで、ユーザー自身が自由に配信内容/スケジュールを追加・変更できるようになりました。しかも同システムはWebアプリケーションのため、直感的な操作ができ、使い方も簡単。編成を組み替えても、約1~2時間後には本番環境に反映されます。そのため入退院の予定や見舞客の来訪、空きベッドの状況など、日々変わっていく情報が表示できるようになり、活用の幅が広がったという喜びの声をいただいています。
クラウド環境へ移行したことにより、柔軟な対応が可能になりました。
ユーザーの満足度の向上は大きな効果ですね。
粕井様:ユーザーの声がダイレクトに届くことで、相手の状況が見えるようになったことも大きな効果です。これまでは何かトラブルがあっても、ユーザーの問い合わせ先は外注先でした。しかし今では内製化したことによって、医療機関がどんなことに困っているか、どんな課題があるかが把握できるようになりました。最大の目的だった運営ノウハウの蓄積も実現しつつあります。
今後の展開について教えてください。
粕井様:直近の目標としては、先述したように2014年3月末までに100病院へ設置することを目指しています。その先も設置数を増やし、さらに運営ノウハウを蓄積していくつもりです。
別の展開として考えているのが、患者向けデジタルサイネージソリューションの提供です。既にユーザーからも「患者さん向けのソリューションを提供してほしい」という声をいくつかいただいています。現状、さまざまなベンダーが患者向けデジタルサイネージソリューションを提供していますが、これまで培ったノウハウを生かすことで十分に勝負できると考えています。ただ、現在と同じビジネスモデルというわけにはいきませんので、今後の検討課題でしょうか。
最後に、サーバーワークスをパートナーとして選んだことへの感想をお聞かせください。
粕井様:AWSについては、さすがに実績ナンバーワンなことだけはあるなと思いました。今回の導入についても、BCP(事業継続性)の観点まで踏まえた提案をしていただいたのはありがたかったです。また、将来の負荷増大への対応を踏まえ、ELBを導入しするなど、クラウドのメリットを生かし先を見越した提案もしていただいております。サポートのレスポンスも早く、問題点等に関するレポートや、柔軟な対応に助けられています。
サーバーワークスを選んで本当によかったと思います。
ありがとうございました。
まとめ
株式会社医療情報基盤様はデジタルサイネージソリューションを自社運営に切り替えるため、AWSを導入。
その際にサーバーワークスの導入支援・運用代行サービスを選択し、内製化によるノウハウの蓄積、ランニングコストの削減、ユーザー満足度の向上を実現されました。
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