AWSにBIツールを導入するメリットや注意点、使用できる主なサービス

現代のビジネス環境では、データに基づく意思決定の重要性が高まっています。クラウドサービスの普及やAI・機械学習(ML)技術の進化により企業は膨大なデータを蓄積できるようになりましたが、そのデータから有益なインサイトを得て意思決定に活用するには、BI(ビジネスインテリジェンス)の活用が欠かせません。
本記事では、BIに関する基礎知識から、BIツール導入のメリットや注意点、さらにアマゾン ウェブ サービス(AWS)上で利用できるBIツールやサービスについて解説します。
この記事でわかること
- BIはビジネスの意思決定において広く活用されるソリューション。
- BIツールを正しく活用することで大量データの迅速分析、情報の可視化、タイムリーな意思決定が可能
- AWSはBIを支える様々なツールやサービスを提供している
※当記事は2025年4月に書かれたものであり、以後に展開された最新情報が含まれていない可能性がございます。
BI(ビジネスインテリジェンス)に関する基礎知識
BIはAWSのみならず、世界中で広く活用されています。まずはBIそのもの基礎知識と、一般的に製品を問わず搭載されている主要な機能である「OLAP分析」「データマイニング」「レポーティング」について解説します。
BI(ビジネスインテリジェンス)とは
BIとは、Business Intelligenceの略で、企業が蓄積したデータを分析し、有益なインサイト(洞察)を得て意思決定に活用するための考え方や技術、およびそれを実現するためのソリューション群を指します。簡単に言えば、BIはデータ分析を通じてビジネスに役立つ「気付き」や「予測」を得る仕組みです。BIツールを使うことで、過去や現在の業績データを可視化し、将来の傾向を予測するなど、データに基づいた意思決定が行えるようになります。
BIツールの主な機能
典型的なBIツールの機能には、以下のようなものがあります。
OLAP分析: OLAP(オンライン分析処理)は、多次元のデータ分析を可能にする機能です。例えば、売上データを「地域」「期間」など様々な切り口で集計・比較することで、ビジネスの状況を立体的に把握できます。OLAPによりデータを自在に深掘り分析でき、問題点や強みの発見につながります。
データマイニング: データマイニングは、大量のデータセットに埋もれたパターンや相関関係を見つけ出す手法です。統計手法や機械学習アルゴリズムを用いることで、売上に影響を与える要因の分析や顧客行動パターンの抽出などを行い、ビジネスに役立つ知見を得られます。
レポーティング: レポーティング機能では、定期的なレポートやダッシュボードを生成して共有できます。グラフやチャートによる視覚的なレポートによりデータを直感的に把握可能です。さらに、多くのBIツールはデータをリアルタイムに近い形で更新し、重要な変化をアラートでお知らせする機能も備えています。
BIツールを導入するメリットと確認すべきこと
BIツールの基本知識として、共通するメリットと注意点についても把握しておきましょう。
BIツールを導入するメリット
機能と同じく製品によって差異はあるものの、メリットについてはBIツールの導入効果の向上を図るうえで欠かせないポイントとなります。
ビッグデータの活用: 膨大なデータから必要な情報を迅速に抽出・分析できます。クラウドの計算リソースを活用すれば、Excelなどの簡易なツールでは分析できない大量データへの複雑なクエリも短時間で処理可能です。
情報の可視化: データをグラフやダッシュボードで可視化することで、ユーザーが直感的に情報を理解できるようになります。可視化された情報からデータの傾向や異常を一目で把握でき、新たなインサイトの発見に役立ちます。
タイムリーな情報取得: 常に最新データに基づくレポートや分析結果をタイムリーに得られるため、ビジネスの現状を正確に把握し、変化に迅速に対応した意思決定が可能になります。
BIツールを導入する際に確認すること
BIツールはただ導入するだけでは十分に活かすのは困難であり、逆に業務負担や費用的なコスト増につながる恐れもあります。事前にしっかりとBIツールと導入する環境の情報を収集し、運用体制を構築する必要があります。
目的の整理: BI導入の目的を明確に定めておくことが重要です。何を実現したいのか(例:経営指標の可視化、業務効率化、AI/MLを活用した将来予測など)によって、選ぶべきツールやソリューションが異なります。目的が定まれば、プロジェクトの方向性もぶれず期待する成果につながりやすくなります。
データ連携のしやすさ: 導入予定のBIツールがさまざまなデータソースに容易に接続できるか確認しましょう。既存のデータベースやクラウド上のデータウェアハウスだけでなく、ExcelやCSVなどのファイルからもデータを取り込める必要があります。また、API経由で外部システムと連携し、プログラムからデータにアクセスして取り込めるかどうかも重要なポイントです。
操作性とユーザー体験: 情報システム部門以外のビジネスユーザーも直接使う場合が多いため、ツールの操作性は重要です。直感的に操作でき、日本語の自然言語クエリで質問してレポートを生成できるか、ダッシュボード共有が簡単か、といった点で比較検討しましょう。
サポート体制: ツール提供元のサポート体制が充実しているかも確認しましょう。導入時の設定支援やトラブル対応が迅速に受けられるか、国内でのサポートやコミュニティ、日本語ドキュメントが整備されているかといった点は安心材料となります。
人材スキルと運用体制: BIを活用するにはデータ分析のスキルを持つ人材が欠かせません。社内に専門家がいない場合は、ビジネスアナリストへのトレーニングなど人材育成策も検討し、導入後の運用体制(権限管理・データ品質管理など)も準備しましょう。
AWSで活用できるBIツールとBIサービス
AWSはBIを支えるさまざまなツールやサービスを提供しています。その代表的な存在である3つのツール・サービスを紹介します。
Amazon QuickSight: AWSが提供するクラウドネイティブなBIサービスで、サーバーレスでインフラ管理が不要なため、手軽に利用開始できる点が魅力です。Amazon QuickSightを使えば、Amazon S3やAmazon Redshift、Amazon Athenaなどさまざまなデータソースに接続してダッシュボードやレポートを作成できます。さらに、機械学習を活用した異常検知・予測分析機能や、日本語の質問に答えるAmazon QuickSight Qなど高度な機能も備えています。
Tableau Server (AWS上での利用): Tableau Serverは豊富なビジュアル表現と高度な分析機能を備えた人気のBIツールです。AWS上ではAmazon EC2にTableau Serverをデプロイして利用でき、クラウドサービスのスケーラビリティを活かしたBIプラットフォームを構築できます。Tableau Serverはさまざまなデータソースに接続でき、ドラッグ&ドロップでグラフを作成できる直感的な操作性を備えているため、ビジネスアナリストにも扱いやすいでしょう。ただし、Tableau Serverの運用管理やライセンス料金の検討が必要です。
データ基盤サービス (S3・Glue・Athena・Redshift): Amazon S3は大容量データの保存に適したデータレイクとして利用されます。蓄積した生データはAWS GlueでETL(抽出・変換・ロード)処理を実行して分析しやすい形に整備し、Amazon AthenaでSQLクエリによる分析が可能です。さらに、構造化データはデータウェアハウスのAmazon Redshiftに格納しておけば、高速なクエリ処理が実現できます。
AWS BI導入のまとめと推進のための選択肢
本記事では、BIの基礎から導入メリット、AWS上で活用できるBIツールまで解説しました。BIを活用することで、データに基づいた迅速かつ的確な意思決定が可能となり、競争力強化につながります。AWSは世界中に複数のリージョン(サービス拠点)があり、要件に合わせてシステムを構築する場所を選べます。クラウドサービスならではのスケーラビリティと柔軟性により、比較的低コストにBI基盤を実現でき、さらにAI/機械学習との連携による高度な分析や予測も容易です。 自社でAWS BI環境の構築に踏み出す際には、これまで述べてきたポイントを確認しながら計画を立てることが重要です。
初めてクラウドサービスやBIソリューションを扱う場合、自社だけで適切な構成を検討しデプロイするのは簡単ではありません。そこで選択肢の一つとして、専門家の力を借りることも検討しましょう。サーバーワークスが提供するシステムでは、オンプレミス環境からのAWS移行、システム構築、最適化を支援するサービスを展開しております。
データ活用がビジネスの鍵を握る今、AWS BIの導入は意思決定プロセスの高度化とスピードアップに大きく寄与します。まずは気軽にお問い合わせください。