AWSサーバー構築の基本|必要なサービス、構成手順、導入時の注意点までを解説
AWSのサーバー構築の基本構成に必要なサービス
AWSでサーバー環境を構築するには、いくつかの主要なサービスを適切に組み合わせる必要があります。ここでは、最小限の構成において押さえておくべき基本サービスと、その役割を整理します。
Amazon EC2(Elastic Compute Cloud)
Amazon EC2(Elastic Compute Cloud)は、AWS内で仮想サーバーを構築できるサービスです。750以上のインスタンスオプションが提供されており、ユーザーのニーズに合わせた仮想サーバーを容易に構築できます。設定は簡単で、10分程度で仮想サーバーを立ち上げられるため、迅速な実装が可能です。さらに、仮想ファイアウォールも備わっており、受信トラフィックと送信トラフィックを制御することができます。
Amazon VPC(Virtual Private Cloud)
Amazon VPC(Virtual Private Cloud)は、AWS内に専用のネットワーク空間(仮想プライベートクラウド)を構築できるサービスです。VPC上にAmazon EC2やAmazon RDSなどのサーバーを配置することで、自社専用の仮想ネットワーク環境を実現します。さらに、同じAWSアカウントで複数のVPCを作成できるため、システムごとや災害対策のため、2つ以上のリージョンにVPCを用意することが可能です。
インターネットゲートウェイ
インターネットゲートウェイは、VPC内のリソース(例:EC2インスタンス)をインターネットに接続するために必要なコンポーネントです。作成したVPCにアタッチし、対象サブネットと関連付けることで、外部との双方向通信が可能になります。IPv4およびIPv6のトラフィックに対応しており、ウェブ公開や外部API連携などに利用します。
ALB(Application Load Balancer)
アクセス集中時に、複数のサーバーへ負荷を分散させるサービスです。ALB(Application Load Balancer)は、トラフィックが集中するとサーバーが処理しきれなくなるリスクがありますが、ALBを使用すれば自動的に分散処理できます。ターゲットとなるAmazon EC2インスタンスやIPアドレス、コンテナに対して、正常なリソースに自動的にトラフィックを分配し、大量のリクエストにも耐えられるシステムを構築できます。ALBはURLに基づいてルーティングが可能で、アプリケーションごとに個別の設定をする必要はありません。
Amazon RDS(Relational Database Service)
Amazon RDS(Relational Database Service)は、リレーショナルデータベース(例:MySQL、PostgreSQLなど)をマネージド型で運用できるサービスです。ユーザーは、Amazon Aurora、PostgreSQL、MySQL、 MariaDB、 SQL Server、 Oracle、 Db2など、さまざまなデータベースエンジンの中から選択することができます。自動バックアップや自動パッチ機能が搭載されており、データの保管や運用に適しています。
AWSでサーバー構築することによる主な効果
AWSでサーバー環境を構築することで以下のメリットが得られます。
インフラ管理負担の軽減
物理サーバーの設置・保守・アップグレードが不要になり、インフラ管理業務を大幅に削減できます。物理サーバーの設置、保守、アップグレードの手間から解放され、本来のビジネスに集中できるようになります
コストの柔軟な最適化
AWSは従量課金制の料金システムとなっており、実際に使用したリソースに応じて料金が発生します。このため、必要なときに必要なだけリソースを利用でき、コストの最適化を図ることができます。さらに、スケールイン(リソースの削減)やスケールアウト(リソースの追加)が容易なため、トラフィックや需要の変動に応じて迅速にリソースを調整できます。また、AWS Cost Explorerやアラート機能を使えば、コスト異常を早期に検知・対処できます。
高可用性と災害対策の強化
AWSでは、可用性を確保するための多くの機能が提供されています。例えば、複数のアベイラビリティゾーン(AZ)にリソースを分散配置することで、単一障害に対する耐性が向上します。また、自動バックアップや復旧機能を利用することで、データの安全性も確保され、障害が発生した際の迅速な復旧が可能です。
さらに、AWSを利用することで、BCP対策も容易になります。災害が相次いでいる日本において、BCP対策はあらゆる企業に必要だといえます。異なるリージョンにデータのレプリケーションを行って地理的なリスクを軽減する仕組みは、AWSのBCP対策の代表例となっており、この対策によって、万が一の災害の際も事業を継続できます。
AWS構成例とおおよそのコスト目安
AWSでサーバーを構築する場合、構成内容によってコストは大きく変動します。
以下は代表的な2パターンのおおよその月額費用イメージです。
構成例 | 想定コスト (月額・東京リージョン) |
主なリソース |
---|---|---|
テスト環境(小規模構成) | 約1,000円〜2,000円 | EC2(t3.micro)、EBS(8GB)、無料枠活用 |
本番環境(標準可用性構成) | 約25,000円〜35,000円 | EC2(t3.small×2台)、ALB、RDS(db.t3.micro マルチAZ) |
※価格は2025年4月時点の目安です。運用内容や利用量に応じて変動します。
Amazon EC2を用いてAWS上にLinuxまたはWindowsサーバーを構築する流れ
ここでは、AWS上にLinuxまたはWindowsサーバーを構築する際の基本的な流れを紹介します。最小構成でサーバーを立ち上げるために必要なステップに絞って整理しています。
1.AWSアカウントを作成する
サーバーの構築を含め、AWSのサービスを利用するためにはアカウントが必要です。公式サイトにアクセスし、メールアドレスやパスワードを登録してアカウントを開設します。その際、支払い情報も入力する必要があります。AWSは一定の利用量まで無料で使えるプランを提供しているため、初期費用を抑えることも可能です。
2.Amazon VPCを作成する
AWSマネジメントコンソールにログインし、東京やロンドンなどのデータセンターのある地域を選択します。ユーザーに近い地域を選ぶことで、レイテンシーの低減が期待できます。
次に、選択したリージョンでAmazon VPCを作成します。その際、タグの名前は任意で問題ありません。続いて、Amazon VPCに基づいてVPC IDやサブネット名、IPv4 CIDRを指定し、ネットワークを分割するためのサブネットを設定します。その後、Amazon VPCをインターネット経由で利用可能にするため、インターネットゲートウェイを作成します。
3.Amazon EC2インスタンスを作成する
Amazon VPCが設定できたら、次はAmazon EC2(Elastic Compute Cloud)インスタンスを作成します。作成後、コンソールの「インスタンス」から、以下の項目を設定します。
- AMI(Amazon Machine Image):OSイメージ(例:Amazon Linux、Windows Server)
- インスタンスタイプ:サーバースペック(例:t3.micro)
- ネットワーク設定:先ほど作成したVPCとサブネットを選択
- プライベートIPアドレス:必要に応じて固定設定
- セキュリティグループ:アクセス制御ルール(SSH/HTTP/HTTPS等)
- キーペア:SSH接続用の秘密鍵/公開鍵ペア
設定完了後、「インスタンス起動」を実行します。起動後は、指定したキーペアを使用してターミナル(SSH)からサーバーに接続可能です。
Amazon EC2を用いてAWS上にLinuxまたはWindowsサーバーを構築する際の注意点
オンプレミスサーバーと比較して、Amazon EC2を用いてAWS上にLinuxまたはWindowsサーバーを構築する際には多くのメリットがありますが、導入時には次のポイントに注意が必要です。
コストの変動リスクに備える
AWSは従量課金制のため、利用状況に応じてランニングコストが変動します。そのため、事前に正確なコストを見積もることは困難です。AWSがインフラ設備を提供しているため初期投資は軽減できますが、利用状況によってはランニングコストが増大するかもしれません。事前にAWS Pricing Calculatorなどで概算を把握し、Cost Explorerや請求アラート機能を活用してコスト管理を徹底しましょう。
サーバー構築・運用に必要な知識を確保する
AWSでは、マネジメントコンソール上で基本的なサーバー構築は容易に行えますが、適切なネットワーク設定やセキュリティ対策には一定の専門知識が求められます。AWSの管理画面を利用すれば比較的簡単にサーバーを立ち上げられますが、AWSが提供するさまざまなサービスや機能についての理解は不可欠です。長期的な運用を見据え、社内にAWSに精通した担当者を育成するか、外部パートナーの支援を受ける体制を整えることが重要です。
セキュリティ対策は自社で行う必要がある
AWSは「責任共有モデル」を採用しており、クラウド基盤のセキュリティはAWS側が担保しますが、インスタンス設定やアクセス制御、データ保護などは利用者側の責任範囲です。
IAM権限管理、セキュリティグループ設定、暗号化の徹底など、自社側での基本的なセキュリティ対策を怠らないことが求められます。
構築後に最低限押さえておきたい運用ポイント
サーバー構築後、安定運用のために最低限実施すべき設定をまとめました。
- CloudWatch アラーム設定(CPU使用率/ディスク使用率/ステータスチェック異常)
- Patch Managerの自動適用設定(セキュリティパッチの適用漏れ防止)
- AMIスナップショットの自動取得(障害復旧用のバックアップ確保)
運用の属人化を防ぐため、最初にこれらを整備しておくことをおすすめします。
サーバーワークスでは、AWSに特化したセキュリティ設計・運用支援サービスを提供しています。もし「自社だけでの運用に不安がある」「セキュリティレベルをさらに高めたい」といった課題をお持ちなら、ぜひご相談ください。