生成AIで「お客様の声」を可視化・分析 全通話の文字起こし・要約を実現し、商品開発・サービス改善を加速
1989年5月創業のハルメクホールディングスは、シニア女性向け雑誌の発行と通信販売を主軸に事業を展開しています。グループのコールセンターには年間120万件規模の入電がありますが、通話内容の記録はオペレーターによる手入力に依存しており、情報の網羅性や品質にバラつきが生じ、寄せられたお客様の声(Voice of Customer:VOC)を商品開発やサービス改善に活かしきれていませんでした。
その際にサーバーワークスのAWS運用最適化サービスを活用し、AWS環境の中でAIを活用して音声の文字起こしから要約までを完結する仕組みを構築しました。当時の課題とサービス導入の経緯、導入効果、今後の展望についてお話を伺いました。
事例のポイント
Before
お客様の課題
- オペレーターが通話後にVOCを手入力する運用だったため、記録内容の網羅性や粒度にばらつきが見られる状況であった
- ネガティブな声は顕在化しやすい一方、ポジティブ・ニュートラルな意見は拾いきれず、商品開発・サービス改善に向けた活用に課題があった
After
課題解決の成果
- 全通話の文字起こしと要約を自動化し、200席で年間120万件規模のVOCを網羅的に可視化。オペレーターの記録業務の負荷を大幅に削減
- VOCデータと売上、返品数などのデータを連携し、事業部門で“お客様の声”を活用した商品改善をさらに推進できる環境を整備できた
導入サービス
Index
オペレーターによるVOC収集業務の負荷軽減と、事業活動へのさらなる活用を目指したい
ハルメクグループで受注/商品発送/カスタマーサポートなどのフルフィルメントサービスを担うハルメク・ビジネスソリューションズは、総席数400規模のコールセンターを運営しています。通販商品や雑誌に関する問い合わせなど、年間約120万件の電話が寄せられ、常時約200名のオペレーターが対応しています。
こうした通話には、お客様の率直な意見や要望が数多く含まれており、商品開発やサービス改善につながる重要なVOC(Voice of Customer)として活用が期待されていました。しかし従来は、VOC収集をオペレーターの判断と手入力に依存していたため、情報の網羅性や品質に課題がありました。
ハルメクグループ各社にフルフィルメントサービスを提供する株式会社ハルメク・ビジネスソリューションズ 代表取締役社長の山口泰宜氏は、当時を次のように振り返ります。
山口氏「通話終了後すぐに次の着信対応が始まる環境のため、すべての会話内容を詳細に記録することは難しい状況でした。また、どの内容をVOCとして残すかもオペレーターごとの判断に委ねられており、情報量や粒度にばらつきが生じていました。」
お客様センター ハルメクお客様相談室 室長の安達悟氏も、VOC活用上の課題をこう語ります。
安達氏「記録として残るVOCは、クレームなど緊急度の高い内容が中心になりやすく、お客様の細かな声まで把握しきれない場面もありました。」
また、お客様センター 企画推進室 リーダーの藤居佳恵氏は、VOCの蓄積基準そのものにも難しさがあったと説明します。
藤居氏「類似した問い合わせが続く中で、すべてを個別に記録・整理することは現実的ではありませんでした。そのため、同様のVOCがどの程度発生しているのかを把握しづらく、商品改善につなげる分析にも限界がありました。」
情報システム部 IT基盤・セキュリティ課 課長の小山欣泰氏は、以前から音声データ活用への関心があったと話します。
小山氏「VOC収集業務の負荷軽減だけでなく、“お客様の声”を事業活動へより活かしたいという思いがありました。音声のテキスト化や要約による分析も検討していましたが、精度や運用面の課題から、本格活用には至っていませんでした。」
当初想定していたコールセンター向けオペレーション支援AIサービスと比較し、コストを抑えながら、高精度かつAWS上で完結できる仕組みを採用
同社はVOCのさらなる活用に向けた検討に着手。当初は、SaaS型のコールセンター向けオペレーション支援AIサービスの利用を想定し、既存のコンタクトセンターシステムから音声データをエクスポートしてAmazon S3に保存、サービスへ連携する構成を考えていました。
小山氏「最初は音声データの保存方法について相談していたのですが、文字起こしや要約まで含め、AWS上で完結できる構成をサーバーワークスからご提案いただきました。」
具体的には、Amazon SageMaker AI上にオープンソースの音声認識モデル「Whisper」を構築し、音声データを文字起こし。
その結果をAmazon Bedrockへ連携し、生成AI「Claude」で要約を行う構成です。音声データはコールセンターサービスからAmazon S3へ転送・保存しています。
同社ではAWS構成でのPoCを実施してSaaS型サービスとの精度比較を実施、最終的には、コストと精度に加え、AWS上で柔軟に拡張できる点を評価し、サーバーワークスの提案を採用しました。
小山氏「特に評価したのは、コストを抑えながら高い文字起こし精度を実現できた点です。通販商品の商品名なども高精度で認識できていました。また、既存の分析基盤と連携しやすく、“お客様の声”と売上・返品データを横断して分析できる環境を構築できた点も大きかったと感じています。」
さらに、既存の分析基盤との連携性も採用を後押ししました。
小山氏「既存データとの連携性や、柔軟にカスタマイズできる点も大きな評価ポイントでした。当社 では、売上や返品数などの基幹システムデータをAmazon Redshiftへ集約し、分析基盤として活用しています。今回、新たに同じAWS環境上に蓄積されるVOCデータを組み合わせることで、“お客様の声”と事業データを横断した分析が可能になりました。
また、生成AI側の調整を自然言語のプロンプト入力で柔軟に行える点も、運用のしやすさにつながっています。」
山口氏「今回のポイントは、既存のコールセンターシステムをそのまま活かしながら、文字起こし以降の処理をAWS上に構築した点です。AWSでコールセンター支援の仕組みを構築するというとAmazon Connectを導入するケースが多いと思いますが、既存のコールセンター環境への手を加えることなく、ここまでVOC活用を深められたことは非常に満足しています。」
全通話の可視化や要約のレポート化により、VOCを事業改善に活用する取り組みがさらに進んだ
今回のAWS環境構築プロジェクトは2025年7月に始動し、同年10月に運用を開始しました。現在は200席のオペレーターによる全通話が自動で文字起こしされ、要約、分類されたデータとして蓄積されています。
安達氏「最大の変化は、クレームなどのネガティブな声だけでなく、ポジティブな声やニュートラルな意見も継続的に把握できるようになった点です。これまで埋もれがちだった「この商品はここが良いが、もう少しこうなればさらに良い」といった声も蓄積・分析できるようになり、事業部門へ共有できる情報の幅が広がってきました。」
BIツールを活用したデータ分析を担当する
情報システム部 東京システム課 リーダーの塚越由美枝氏は、「分析の幅が大きく広がった」と話します。
塚越氏「現在は、商品別の売上や返品数とVOCを同じ軸で可視化できるよう、BIツール上で分析環境の整備を進めています。基幹システムから取り込んだ事業データとVOCを掛け合わせることで、商品ごとの傾向や背景まで含めた、より多面的な分析が可能になりました。」
山口氏「これまでは、限られたVOCを週次レポート単位で確認する運用が中心でした。そのため、“お客様の声”と事業指標との関係性まで把握することは容易ではありませんでした。現在は、定番商品ごとの売上や返品数の推移とVOCをクロス分析できる環境が整いつつあり、VOCを事業改善の判断材料として活用しやすくなっています。」
こうした分析基盤の整備に伴い、現場での活用も徐々に広がり始めています。
安達氏「現在では、週次レポートを待たずに、事業部門の担当者が要約済みのVOCを直接確認できる環境が整っています。
例えば、コスメ事業部の担当者から、『コース購入特典が明細書に記載されていないため、同梱された特典商品にお客様が驚かれている』というVOCが多く寄せられているとの共有がありました。中には、特典付きコースであること自体を忘れてしまっているお客様もいらっしゃったようです。
そこでコスメ事業部では、『明細書にも特典内容を記載できるようにしたい』という改善提案につながりました。」
このように、各商品カテゴリーの担当者が自らVOCを確認し、顧客満足度向上に向けた具体的なアクションへ結び付ける動きが生まれています。
小山氏「こうした取り組みは社内でも高く評価され、2026年4月の全社表彰では、業務改善表彰の社長賞を受賞しました。
“お客様の声”をAIで可視化・活用し、事業改善につなげた点が評価され、全社的にも注目度の高い取り組みとなっています。」
今後は、音声AIエージェントの活用も視野に入れながら、オペレーター支援の高度化を段階的に検討していく
今回のAWS環境構築プロジェクトの背景には、サーバーワークスとの密なコミュニケーションがありました。サーバーワークス クロスインダストリー第2本部 インフラ技術課 課長の田畑頼勝、同 AI推進課 課長の村上博哉、同 首都圏営業課の伊藤響は、今回のプロジェクトを次のように振り返ります。
田畑「最初は音声データの保存方法についてのご相談でしたが、お話を伺う中で、AWSの生成AI基盤を組み合わせれば、文字起こしから要約、分析までを一連の流れとして構築できると感じました。
既存環境を活かしたまま必要な機能を柔軟に拡張できる点は、AWSならではの魅力だと思います。」
村上「AI活用の中でも、特に難しかったのがAmazon Bedrockのチューニングです。初期段階では、お客様が通話の最後に「ありがとうございました」と話しただけで、オペレーター対応を高評価する要約が生成されてしまうケースもありました。
そこで、個人情報のマスキング精度も含め、どのようなプロンプト設計を行えば意図したアウトプットに近づけられるか、細かな検証と調整を重ねていきました。
お客様センターの皆様にも早い段階から検証へ参加いただき、多くのフィードバックをいただけたことで、実運用に耐えうる精度まで高めることができたと感じています。」
伊藤「今回のプロジェクトを通じて、当社のAWS運用最適化サービスも、インフラ運用に加えてAI活用支援まで含めた形へと広がりました。
生成AIを実運用へ落とし込むには、基盤だけでなく、継続的な改善やチューニング支援も重要になります。今後もハルメクグループ様と伴走しながら、AI活用の高度化を継続的に支援していきたいと考えています。」
今回の取り組みを通じて、山口氏の視線はさらにその先の活用にも向き始めています。
山口氏「現在は、既存のボイスボットでは対応が難しい領域に対して、生成AIをどのように活用できるかも検討しています。まずはオペレーター支援や入電対応の高度化などから可能性を探り、将来的にはより柔軟なお客様への対応につなげていきたいです。サーバーワークスには、今後もAWSパートナーとして継続的に伴走いただけることを期待しています。」
株式会社ハルメクホールディングス様
50代からの女性がよりよく生きることを応援するため、様々な事業を展開。主軸となる雑誌「ハルメク」は、販売部数約46万部(日本 ABC 協会発行社レポート(2025年7月~12月))と、日本で一番読まれている女性誌である。その読者の要望に応えるファッションアイテムやコスメ、体や生活の悩みに対応した生活用品を提供する通販事業や店舗事業を運営。さらにシニア市場に特化したコンサルティング・広告代理事業なども行っている。
取材に協力いただいた方々
- 山口 泰宜 氏
- 株式会社ハルメク・ビジネスソリューションズ 代表取締役社長 COO
- 安達 悟 氏
- 株式会社ハルメク・ビジネスソリューションズ お客様センター ハルメクお客様相談室 室長
- 藤居 佳恵 氏
- 株式会社ハルメク・ビジネスソリューションズ お客様センター 企画推進室 リーダー
- 小山 欣泰 氏
- 株式会社ハルメクホールディングス 情報システム部 IT基盤・セキュリティ課 課長
- 塚越 由美枝 氏
- 株式会社ハルメクホールディングス 情報システム部 東京システム課 リーダー
※ この事例に記述した数字・事実・役職や所属はすべて、事例取材当時に発表されていた事実に基づきます。数字の一部は概数、およその数で記述しています。
担当プロジェクトメンバー
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カスタマーサクセス本部 CS4課 村上 博哉
2024-2025 Japan AWS Top Engineers (AI/ML Data Engineer)。2020年にAmazon Pollyと出会ったことをきっかけに、前職の市役所職員からサーバーワークスへ転職。機械学習に興味があり、現在は生成AIを中心にお客様の支援を担当。好きなAWSサービスはAmazon SageMaker
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クロスインダストリー第2本部 インフラ技術課 田畑 頼勝
ISP・通信事業者での運用保守、金融・証券業界向けNW導入PMを経て法人営業へ。2017年サーバーワークス入社後、営業からエンジニアへキャリアチェンジ。技術と営業の両視点を活かしてAWSインフラ構築プロジェクトのPM・カスタマーサクセスを担当し、現在はインフラ構築チームのマネージャー。趣味はキャンプ。
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クロスインダストリー第2本部 首都圏営業課 伊藤 響
2023年サーバーワークス入社。ガバナンス・セキュリティ領域を得意とし、直近では生成AIにも注力。AWS認定7冠(SAP、SCS、他)。
選ばれる3つの理由
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Reason 01
圧倒的な実績数による
提案力とスピード- 導入実績
- 1570 社
- 案件実績
- 31700 件
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Reason 02
AWS認定の最上位
パートナーとしての技術力
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Reason 03
いち早くAWS専業に
取り組んだ歴史