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AWSのAIエージェントとは?仕組み・主要サービス・活用例をわかりやすく解説

AWSのAIエージェントとは?仕組み・主要サービス・活用例をわかりやすく解説

AIが自律的に判断し、外部システムを操作して業務を進める――そんな「AIエージェント」が注目を集めています。アマゾンウェブサービス(AWS)はこの領域で、生成AI基盤のAmazon Bedrockを中心に、AgentCoreやStrandsなどの開発環境を提供しています。

本記事では、AWSのAIエージェントの仕組みと主要サービスの特徴を整理し、ビジネスやシステム開発での活用例をわかりやすく解説します。

AIエージェントとは

生成AIが「答えるAI」だったのに対し、AIエージェントは目的達成のために自ら動き、外部システムを操作して業務を進める仕組みです。回答ではなく"実行"まで担える点が、大きな進化です。

AIエージェントの定義と役割

AIエージェントは、ユーザーの指示をもとに必要な情報を集め、計画を立て、外部ツールやアプリケーションを操作してタスクを完了させます。生成AIが「知識提供を担う」のに対し、AIエージェントは「業務プロセスそのものを進行させる」実務主体として機能します。

ChatGPTとの違い

ChatGPTのような生成AIは「最適な回答を返す」ことが中心ですが、AIエージェントはその先の処理「申請、更新、通知、分析、実行」まで踏み込みます。つまり、文章を生成するAIから、実務を前に進める"行動するAI"へと進化した形です。

AWSが定義するAIエージェントの全体像

AIエージェントを実装するための仕組みはクラウド提供者ごとに異なりますが、アマゾンウェブサービス(AWS)は「モデルの提供」だけでなく「動作制御」「開発者体験」まで含めたスタックとして整理しています。単なるLLM提供ではなく、実行まで含めた"業務アーキテクチャ"として捉えられている点が特徴です。

AWS生成AIスタックの構造

AWSにおけるAIエージェントは、下層から順に「モデル層(Bedrock)」「エージェント層(AgentCore/Strands)」「開発層(Kiro)」という三層構造で提供されています。これによって、モデル選定からタスク実行、さらに仕様定義や実装支援までを一貫して扱える仕組みになっています。

Bedrockが担う"モデルアクセスの統合層"

基盤となるAmazon Bedrockは、Anthropic、Meta、Mistralなど複数のLLMに共通インターフェースでアクセスできる統合レイヤーとして機能します。用途や精度要件に応じてモデルを使い分けても、開発側の実装が複雑にならない点が強みです。

AgentCoreが担う"行動の制御層"

モデルが出力する回答をそのまま返すのではなく、「どのツールを呼び出すか」「どの順番で処理するか」といった実行ロジックを制御する役割を担います。タスクの分解や例外時のリトライ、状態管理など、エージェントが"自律的に動くための仕組み"を支える中核コンポーネントです。

Strands/Kiroによる開発者支援レイヤー

その上位には、開発体験を補完するレイヤーとしてStrandsとKiroが位置づけられます。Strandsは軽量なオープンソースの開発キットで、迅速な検証や試作に向いています。一方のKiroは、仕様策定や動作確認をGUIで行えるIDEとして機能し、開発手順の可視化と品質担保を支援します。

主要サービス別のAIエージェント構築の仕組み

AWSが提供するAIエージェント関連サービスは、一枚岩の「単一プロダクト」ではなく、役割の異なる複数サービスによって構成されています。これらを組み合わせることで、要件に応じた柔軟な構築が可能になります。

Amazon Bedrock Agents|最上位のエージェント実行サービス

Amazon Bedrock Agentsは、エージェントの設定と実行を一手に担う最上位のサービスです。自然言語で業務タスクを記述するだけで必要なデータソースやAPIを呼び出し、ユーザーの指示を業務フローとして実行可能な形に変換します。PoCやスモールスタートに適した入口として利用されるケースが増えています。

AgentCore|開発者向け制御基盤

AgentCoreは、複数のエージェントを組み合わせたり、実行手順の制御や状態管理を細かく扱ったりするための開発者向けフレームワークです。Bedrockが提供する「完成済みの実行プラットフォーム」をより柔軟に拡張する位置づけとなり、複雑なユースケースや自律性の高いエージェント実装に活用されます。

Strands Agents|OSSとしての実験環境

Strands Agentsは、OSSベースで提供される軽量なSDKです。Pythonでスピーディにエージェントを試作できるため、学習用途や探索的開発に向いています。AWSの公式スタックと親和性を持ちながらも、ベンダーロックインを避けて実装を検討できる点が特徴です。

Kiro|エージェント開発用IDEの役割

Kiroは、エージェントの仕様策定と動作確認をGUIで行える開発者用IDEです。「スペック(仕様)」と「フック(動作ロジック)」を明確に分離し、エージェントの挙動を視覚的に管理できます。コードから入るのではなく、要件定義や設計段階からAIエージェントを扱える点が従来の開発との違いです。

サービス 役割 適用フェーズ 特徴
Amazon Bedrock Agents エージェントの実行・オーケストレーション PoC/スモールスタート 設定ベースで即座に利用可能。自然言語で業務フローを記述できる。
AgentCore 行動制御・状態管理 本格導入・高度化 マルチエージェント構成や高度な実行ロジックの実装が可能。
Strands Agents 軽量OSS SDK 学習・検証 Pythonベースの実験環境。ベンダーロックインを避けて開発できる。
Kiro 設計・仕様可視化 設計・要件定義 GUIでエージェント仕様を管理。実装と仕様の分離を支援する。

AWS AIエージェントのユースケース

AIエージェントは「情報を返すAI」ではなく「業務を進めるAI」であるため、実行対象となるユースケースが明確です。AWSでは、基盤となるBedrockに加えて、AgentCoreやStrandsを組み合わせることで幅広い業務領域に適用できます。

クラウド運用最適化

Strands Agentsを活用すると、クラウド環境のメトリクス監視やコスト推移の分析を自動化できます。必要に応じて削減施策を提案したり、設定変更の候補を提示したりすることも可能です。従来は運用担当者がダッシュボードを確認して対応していた判断を、エージェントが継続的かつ自律的に行えるようになります。

社内業務自動化

社内の問い合わせ対応やドキュメント検索、簡易な申請処理などは、Bedrock Agentsの代表的な活用領域です。単なるチャットボットでは実現できなかった「検索→判断→実行」までを一体化できるため、問い合わせ業務やバックオフィス業務の削減につながります。

カスタマーサポート/販売支援

顧客対応の場面でもAIエージェントは有効です。CRMやチャットツールと連携することで、対応履歴を参照しながら次のアクションを自動で実行できます。問い合わせ内容の理解だけでなく、解決に必要な処理まで担える点が従来のFAQボットとの違いです。

開発プロセス支援

開発現場ではKiroがサポートレイヤーとして機能します。仕様を読み取り、必要なタスクを整理し、コード生成に結びつけることで、実装フェーズまでの手戻りを減らせます。設計と実装の間にあった"翻訳作業"をAIエージェントが補完するイメージです。

AWS vs 他クラウドのAIエージェントの比較

AIエージェントは主要クラウド各社が戦略的に強化している領域です。ただし、提供の仕組みや思想には違いがあり、選択基準も大きく変わります。AWS・Azure・Google Cloudの方向性を比較することで、AWSの立ち位置がより明確になります。

AWSの強み:LLM非依存×エコシステム統合

AWSの最大の特徴は、Bedrockを通じて複数モデルを自由に選べる点と、それを実行基盤(AgentCore/Strands)まで統合したエコシステムとして提供している点です。モデルが将来入れ替わってもアーキテクチャ全体を変える必要がなく、長期利用を前提とした柔軟性があります。

Azureの特徴:OpenAIモデルに最適化した一体型構成

AzureはOpenAIモデルとの統合を強みに持ち、Copilot系のアプリケーション連携に優れています。一体型の仕組みとして操作性が高い反面、モデル選択の自由度は限定的で、Azureスタック内での完結を前提とした設計が中心です。

Google Cloudの特徴:Vertex AIエージェントの統合運用

Google Cloudはデータ処理とAIの統合を重視しており、Vertex AIを基盤にエージェントを構築するモデルを採用しています。検索・推論・データ連携の強みを背景に、分析業務やリアルタイム処理との相性が良い点が特徴です。

AWSが差別化する"拡張性と開発自由度"

この三者の中で、AWSは「どのモデルを使うか」「どの方式で実行するか」を後からでも切り替えられるという拡張志向の設計が際立ちます。実装方法もGUI・SDK・OSSのいずれにも対応でき、用途や成熟度に合わせて段階的にスケールさせやすい点が優位性となります。

まとめ

AIエージェントは、生成AIを「答えるだけのツール」から「業務を遂行する仕組み」へと進化させる技術です。AWSはBedrock・AgentCore・Strands・Kiroといった複数レイヤーを組み合わせることで、モデル選定から実行まで一体的に扱えるエコシステムを整備しています。小さく始めたい場合は、まずBedrock AgentsによるPoCから着手すると導入のハードルを下げられます。



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