RAGとは? 活用するメリットや具体的な活用例、構築方法と注意点

多様なビジネスシーンで生成AIが活用されている昨今、回答精度を高めるための代表的な技術「RAG(検索拡張生成)」に注目が集まっています。今回はRAGを活用することで得られるメリットと活用事例、構築方法や注意点について解説していきます。
この記事でわかること
- RAGとは、外部データベースや社内情報を検索し、正確な情報をもとに回答を生成する技術
- RAGの導入により、回答の信頼性が向上し、業務効率化や情報更新の手間削減が可能になる
- RAGを効果的に活用するためには、正しいステップを踏む必要がある
- RAGの実装から運用まで専門企業のサポートを受けることで、生成AIの効果を最大限に引き出せる
※当記事は2025年8月に書かれたものであり、以後に展開された最新情報が含まれていない可能性がございます。
RAGに関する基礎知識
RAG(Retrieval Augmented Generation)とは、大規模言語モデル(LLM)によるテキスト生成と外部データベース検索を組み合わせて回答精度を高める技術です。
近年、企業内に蓄積された膨大な社内データを活用する方法として注目を集めています。ここでは、RAGに関する基礎知識を解説します。
そもそもRAGとは?
RAGとはRetrieval Augmented Generationの略称で、一般的に「検索拡張生成」と訳します。RAGは大規模言語モデル(LLM)が投げかけた質問を理解し、質問に関する情報を社内データや外部データベースなどの情報源から検索・抽出します。その後、自然言語処理を行い、質問に対して正確かつ具体的な回答を生成することが可能です。
例えば、自社製品に関する問い合わせにRAGを活用する場合、最新の製品マニュアルやFAQを参照させることで即座に反映でき、回答精度が向上します。
RAGが求められる理由
近年、生成AIを活用したDX推進が企業内で注目される中、課題となっているのが生成された文章の正確性です。大規模言語モデル(LLM)単体の使用では学習データに存在しない最新の情報や企業の独自情報に基づく回答が難しいため、ハルシネーションと呼ばれる誤った情報の生成が問題視されています。
RAGはこれらの課題を解決するために、外部データベースや社内文書と連携し、リアルタイムで最適な回答を生成することができるソリューションです。RAGの活用は検索精度の高い情報を活用し、正確性が重要視される医療や金融などの業界でも活用が進んでいます。
RAGの仕組み
RAGは、主に「検索フェーズ」「拡張フェーズ」「生成フェーズ」の3つのプロセスで構成されています。
検索フェーズ
はじめに、ユーザーがプロンプトと呼ばれる質問を入力すると、システムが質問をベクトル化して検索を行います。キーワード検索やセマンティック検索、ハイブリッド検索などの高度な検索方式を活用し、社内データや外部データから関連性の高い情報を迅速に収集します。特定のデータソースから抽出することにより、情報の正確性を高めることが可能です。
拡張フェーズ
検索フェーズで抽出された情報をベクトルデータとして、質問の文脈に最適な形で大規模言語モデル(LLM)に提供します。このプロセスで、文脈や意味を考慮した上での情報処理が行われます。検索結果の要約や、重要なポイントを抽出することにより、生成する回答の質をさらに高めます。
生成フェーズ
大規模言語モデル(LLM)は拡張フェーズで用意された情報をベースに、回答文の生成を行います。質問に関連する既存情報をリアルタイムで反映するため、従来のAIが抱えていた古い情報に基づく誤った回答(ハルシネーション)を回避し、正確で信頼性の高い回答を返すことができます。
RAGを活用するメリット
RAGを活用することでさまざまなメリットを得ることができます。ここではRAG活用の代表的なメリットを5つ紹介します。
回答の信頼性が向上する
RAGによって最新の外部データベースや社内文書と連携することで、明確な根拠(エビデンス)をもとに回答を生成するため、回答精度が格段に向上します。これにより大規模言語モデル(LLM)単体の利用に比べて信頼性を高めることができます。
法務や医療関連の問い合わせ対応において、最新の法令やガイドラインを即座に反映させることで回答をより正確にすることが可能です。
情報の更新に関する手間が減る
RAGを活用することで、情報更新に関する手間を減らすことができます。
従来、AIをファインチューニングする際は新たなデータを追加し、保持するデータを最新化させます。この作業には多大な時間と労力が必要でした。しかし、RAGでは外部データを直接参照させることで、常に最新の情報を基に回答することが可能となるため、更新作業の効率化が図れます。
コスト削減につながる
RAGの活用はコスト削減が可能です。前述した通り、RAGは既存のデータベースやドキュメントをそのまま活用できるため、専用データを作成するコストや追加の人的リソースを削減できます。また、参照元となるデータの最新化もファイルの差し替えなどで容易にできるため、企業内でのデータ活用を推進しながら、効率よくAI実装ができます。
パーソナライズした回答を生成できる
RAGはパーソナライズした回答を生成できます。具体的には、ユーザーごとの質問の文脈や過去の問い合わせ履歴を分析し、最適な情報をリアルタイムで提供可能です。これにより、ユーザー体験を向上させ、サービスの満足度を高められます。
機密情報の保護につながる
RAGは機密情報の保護が可能です。RAGで参照する社内データは安全な環境で管理することができるため、外部への情報漏洩リスクを低減することができます。そのため、情報セキュリティの強化にもつながります。
RAGの活用例
では、RAGをどのように活用すればいいでしょうか。ここでは社内や顧客対応など、詳細な活用方法と合わせて詳しく紹介します。
AIチャットボットサービス
1つ目の活用例はチャットボットサービスです。企業内には、社内規定や業務マニュアルをはじめ、さまざまな資料が膨大にあります。そのため、必要な情報を必要な時にすぐに見つけられないと、社員の負担が大きくなり、業務効率低下につながります。ここで、RAGを用いたAIチャットボットサービスを導入することで、これらの社内情報を検索するサービスの構築が可能です。
例えば「経費精算の手順の方法は?」「休暇申請の方法は?」など、社内規定や業務マニュアルに対する問い合わせに対しても回答することができるため、社員の間接業務時間の削減や満足度向上につながります。特に、新入社員や中途入社の社員が手軽に必要な情報を得られます。
カスタマーサポートによる顧客対応
RAGはカスタマーサポート業務に活用できるソリューションです。多くの分野で活用できますが、特に医療や法律といった高度な専門性が求められる分野で有効です。従来の対応方法では、オペレーターが膨大な資料を確認しながら回答をする必要があり、時間と手間がかかっていました。
RAGに最新の診療ガイドラインや法令データといった外部データベースを参照させれば、問い合わせ内容への回答は最新の診療ガイドラインや法令を網羅した回答を提供できます。専門性が高い分野であっても、回答精度を高めることで信頼できる回答を生成できます。
ヘルプデスクサービス
企業のヘルプデスクサービスでもRAGの導入は効果的です。製品の仕様書や過去の問い合わせ対応履歴などを活用し、質問に関連する最適な回答を提供することが可能になります。
従来のヘルプデスクでは、問い合わせに対する回答を行う際にはマニュアルを確認しながら対応をしていましたが、RAGを利用すれば問い合わせに応じて最適な回答をリアルタイムで自動生成できます。そのため、問い合わせ対応にかかる時間が短縮され、業務効率化や人件費削減が可能です。
マーケティングや市場調査
マーケティングや市場調査においてもRAGの活用が進んでいます。最新の市場動向や顧客ニーズをリアルタイムに把握し、効果的なマーケティング戦略を立案するためには、多くの外部データから迅速に情報を収集・分析する必要があります。
RAGは、さまざまな外部データソースからリアルタイムで関連情報を収集することで、市場動向や競合他社の分析に必要な高品質の情報を即座に提供できます。これにより、データ分析にかかる時間が大幅に短縮され、市場変化に対して迅速かつ柔軟に対応できるようになります。
技術文書やコンテンツの生成
企業が技術文書やマニュアルなどのコンテンツを作成する場合にも、RAGを支援ツールとして利用できます。RAGを活用すれば、企業内の膨大な社内文書やノウハウを活用し、最新かつ正確な技術情報を盛り込んだコンテンツを効率よく生成可能です。
RAGを用いることで、過去に作成した技術文書をベースに新たなコンテンツを生成したり、専門用語の解説や事例紹介を迅速に追加したりすることが可能になります。従来の手作業での情報収集や整理にかかっていた時間を削減でき、コンテンツ作成業務の効率化が図れます。
例えば、ソフトウェア開発企業が製品マニュアルや開発ガイドラインを作成する際、RAGを活用すれば過去資料や最新技術動向を瞬時に収集し、より質の高いドキュメントを短時間で作成できます。
RAGの構築方法
RAGの構築方法を6つのステップで詳しく解説します。RAG活用を検討している人はぜひ参考にしてください。
STEP1:データベースの選定
RAGを実装するための最初のステップは、利用する外部データベースや社内情報の選定です。まずは自社のノウハウやマニュアル、FAQなどをデータソースとして用意します。膨大なドキュメントを効率的に処理できるように、重複しているデータを削除したり、不要なノイズを事前に除去したりすることが重要です。これにより検索精度が向上し、迅速かつ正確な回答が可能になります。
STEP2:Query Encoderの設定
次に、ユーザーが入力した質問内容(プロンプト)をベクトル化するQuery Encoderを設定します。これは自然言語処理技術を用いて、質問内容の意味や文脈を適切に把握し、ベクトルデータへ変換する設定です。ここのステップでは、ユーザーの問い合わせに対してどれだけ正確に関連性の高い情報を取得できるかに関わります。ベクトル化の精度が高ければ、回答生成時の検索精度も向上します。
「契約更新」という質問を適切にベクトル化できれば、関連する社内文書やFAQを効率よく抽出することにつながります。
STEP3:Document Retrieverの構築
Query Encoderでベクトル化した質問に対し、関連情報を収集するのがDocument Retrieverの役割です。ここでは、キーワード検索やセマンティック検索、2つを組み合わせたハイブリッド検索など、適した検索方式を設定します。関連性の高い情報をすぐに抽出できるような検索方法を用いると、応答速度と正確性につながります。
この時に複数のデータベースを連携して、質問に対して最適なデータを迅速に抽出する仕組みを整えることが重要です。
STEP4:Answer Generatorの設計
抽出された情報を元に回答を生成するAnswer Generatorを設計します。抽出したデータをどのように要約して回答に反映させるかを決める重要なステップです。自然言語処理技術を使用し、質問に対する文脈を理解した上で最適な回答文章を生成します。Answer Generatorの設計次第で回答精度が大きく左右されるため、さまざまなユースケースを考慮して細かく調整します。
例えば、製品の仕様に関する問い合わせでは、製品マニュアルの該当箇所を分かりやすく要約して回答として提供する仕組みを構築します。
STEP5:システム性能のテストと調整
RAGでシステムを構築したら、実際の問い合わせなどを想定したテストを行います。質問に対する回答の正確性や処理速度などを確認することが目的です。課題が見つかった場合は、RAGの再調整を行います。回答精度を高めるためには、特定分野や企業内の独自情報を追加反映するファインチューニングも効果的です。
STEP6:定期的なチェックと改善
導入後もシステムを継続的にモニタリングし、定期的にデータ分析を行い、検索精度や回答制度の改善を図ります。常に最新の情報を活用した応答が可能な状態にするために、定期的なデータ反映が重要です。
最新の社内情報や外部データなどをリアルタイムにシステムへ反映できる仕組みを構築する方法もあります。
RAG導入における注意点
RAGを活用することでさまざまなメリットを得ることができますが、注意しなければいけないポイントがいくつかあります。ここではRAG活用時の注意点を2つ紹介します。
高精度な検索エンジンを採用する
RAGは、回答の速度や正確性が外部情報の検索結果に大きく左右されます。高精度な検索エンジンを採用することで、適切な関連情報をスピーディーに取得でき、ユーザーへの迅速な応答を実現できます。検索精度が低ければ、問い合わせ対応時に誤った情報を提供するリスクが高まってしまいます。
例えば、AIチャットボットサービスでユーザーの質問にリアルタイムで対応したい場合は、高精度な検索エンジンの採用しなければ、希望する回答速度を出すことができません。
情報セキュリティを担保する
企業内の独自情報やノウハウを扱う場合、情報漏洩のリスクを十分に考慮する必要があります。特に社内情報や顧客情報を取り扱う際には、安全にデータ管理を行い、外部との連携時に情報が漏れないよう適切なセキュリティ対策を行わなければいけません。
具体的には、情報へのアクセス制限や暗号化、閲覧管理などを徹底することが重要です。
RAGとは業務効率化をはじめとするさまざまなメリットを得られるソリューション
本記事では、生成AIの高度な活用手法として注目を集めている「RAG(Retrieval Augmented Generation)」についてご紹介しました。
RAGは、業務効率の向上や人員リソースの最適化、ユーザーに合わせた応答の実現など、さまざまな導入メリットが期待される技術です。
一方で、適切な設計や設定を行わないと、十分な効果を得られないケースも少なくありません。
サーバーワークスでは、RAGの導入から運用までを一貫して支援しています。
「精度は担保できているか?」「改善の余地はあるか?」といった、導入時によくあるお悩みに対しても、当社の知見を活かしてご支援可能です。
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