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SREとは何?DevOpsとの違いやSREの4要素、導入のメリット・注意点

SREとは何?DevOpsとの違いやSREの4要素、導入のメリット・注意点

現代のITビジネスでは、アジャイル開発による迅速なリリースとシステムの安定稼働を両立することが求められていますが、サービスがクラウドサービス環境へ移行しソフトウェアの複雑性が増す中、人手による従来型の運用ではシステムの信頼性確保が難しくなっています。こうした課題を解決する方法論として注目されているのがSRE(サイト信頼性エンジニアリング)です。
本記事では、SREの概要からDevOpsとの違い、導入メリットや注意点について解説していきます。

この記事でわかること

  • SRE(サイト信頼性エンジニアリング)はGoogle提唱のシステム運用手法
  • SREはDevOpsの概念を具体化した実践であり、運用タスクの自動化や指標管理によって人的ミスを減らし、安定性と効率性を高める
  • SREを実践する上で重要な4つの要素(CUJ・SLI・SLO・SLA)が定められている

※当記事は2025年8月に書かれたものであり、以後に展開された最新情報が含まれていない可能性がございます。

SREの基本情報

SREは「ソフトウェアエンジニアリング的手法」で運用業務を自動化し、システムの安定稼働と開発リードタイム短縮を同時に実現する考え方です。まずはSREの定義と、その誕生背景にあるクラウド普及や開発手法の変化を押さえましょう。

SREとは?

SRE(Site Reliability Engineering)とは、Google社が提唱するシステム管理・サービス運用の方法論で、日本語では「サイト信頼性エンジニアリング」と訳されます。その名のとおりSREは「信頼性」(Reliability)をシステムの重要な機能と位置づけ、ソフトウェアエンジニアリングのアプローチを運用に適用することで、信頼性の高いシステム運用を実現しようとする考え方です。具体的には、開発担当(Dev)と運用担当(Ops)が連携し、自動化ツールによって運用作業(トイル)を減らしつつ、システムを安定稼働させながら新機能のリリースを円滑に行うことを目指します。これによりユーザー体験(UX)を損なうことなく、サービス改善やビジネスの俊敏性(アジリティ)を高めることが可能になります。

SREが注目される背景

SREが注目されるようになった背景には、IT業界全体の環境変化やニーズの高まりがあります。主な要因を以下にまとめます。

クラウドサービスの普及

社内システムをオンプレミス環境のハードウェアで管理していた時代から、アマゾン ウェブ サービス(AWS)などのクラウドプラットフォーム上にサービスを展開する企業が増えました。インターネット上でサービスを提供する以上、世界中のユーザーに対して常にサービスを利用可能にする高い可用性が求められます。クラウドネイティブな環境ではシステムが分散・大規模化しやすく、旧来の手動対応だけで信頼性を維持することは困難です。そのため、自動化やモニタリングを駆使してクラウドサービスの信頼性を確保するSREの価値が高まっています。

デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進

多くの企業でビジネスのデジタル化が進み、Webサイトやモバイルアプリケーションを通じてサービス提供を行うことが当たり前になりました。システムの信頼性や性能は障害(インシデント)発生の抑制や迅速な復旧、アクセス増加時のスケーラビリティ確保といった運用面の強化が重要課題となっています。

ソフトウェアの複雑性の増大

現代のソフトウェアはマイクロサービスアーキテクチャやコンテナ(DockerやKubernetes)の採用により、構成が非常に複雑になっています。複雑なシステムでは、従来型の監視だけでは問題の特定や原因分析が困難です。エラーの兆候を見逃さず、速やかにインシデント対応するには、システム全体を見渡せるオブザーバビリティ(可観測性)の仕組みや高度な分析が不可欠です。SREはこうした複雑性に対応し、ツールやエンジニアリングで信頼性を維持するアプローチとして注目されています。

ウォーターフォール型からアジャイル型開発への転換

IT開発手法は、大きな機能を一度にリリースするウォーターフォール型から、小さな更新を高頻度でリリースするアジャイル開発へとシフトしています。リリース頻度が上がるほど、本番環境でのデプロイやリリース後の障害対応が日常化し、運用チームへの負荷が増大します。SREではエラーバジェット(許容されるダウンタイムの予算)という考え方を導入し、一定の範囲内であれば積極的に新機能をリリースし、範囲を超えたら開発を一時停止して信頼性確保に注力する、といった開発と運用の両立策を取ります。このように開発プロセスを高速化しつつ安定性も維持する新しい手法として、SREが注目を浴びているのです。

SREとDevOpsの違い

SREとDevOpsはいずれも開発・運用のアジリティ向上を目的としたアプローチであり、共通点も多いため混同されやすい概念です。実際、Google社はDevOpsとSREの関係をプログラミングになぞらえて「class SRE implements DevOps」と表現しています。これはDevOpsが提唱する文化・考え方(インターフェース)を、SREが具体的なプラクティス(実装)によって具現化するという意味です。

DevOpsはアジャイル開発の一形態で、「思想・文化」であり、必ずしも手法が明確に定まっているわけではありません。一方でSREは、DevOpsの思想を実現するためにソフトウェアエンジニアリングの手法で運用業務を自動化・最適化し、信頼性向上と開発速度向上を両立させるための具体的な実践を指します。DevOpsが掲げる抽象的目標(開発と運用の協調と迅速化)を、SREでは測定可能な指標や自動化ツールを用いて日々の業務に落とし込んでいるのです。DevOpsは「人とプロセス」に焦点を当て、SREは「システムとエンジニアリング」に焦点を当てているともいえます。つまり、DevOpsとSREは対立する概念ではなく補完関係にあります。

SREの実践において重要な4要素

SREを効果的に実践するには、サービスの信頼性を定義・測定・管理するための4つの重要な要素を理解しておく必要があります。ここではCUJ・SLI・SLO・SLAという4つの用語について、それぞれ概要を解説します。

CUJ:購買体験

CUJ(Critical User Journey)は、ユーザーが製品やサービスを利用する際の一連の購買体験の中で、特に重要な部分に焦点を当てた概念です。一般にカスタマージャーニーと呼ばれる、サービスの発見から購入・利用に至るまでのユーザー行動の流れの中で、ビジネス的に重要度が高いアクションを抜き出したものがCUJになります。CUJを分析するには、まずペルソナ設定やデータ収集を行った上で、ユーザーのサービス接点(タッチポイント)や行動時の心理を可視化し、重要なユーザー行動モデルを作成します。こうしてモデル化された重要行動こそが、そのサービス固有の重要指標観測ポイントとなります。CUJで特定した重要なユーザー体験に対して、後述するSLIを設定することで、サービスの信頼性をユーザー視点で定量的に測定できるようになるのです。

SLI:サービスレベル指標

SLI(サービスレベル指標)は、システムの品質やパフォーマンスを測るための定量的な指標のことです。例えば「稼働率(アップタイム)」「エラー率(リクエストに対するエラーの割合)」「スループット(単位時間あたりの処理件数)」「レイテンシ(応答時間)」といった指標がSLIに該当します。適切なSLIを設定するためには、まず前述のCUJに基づいて「ユーザーにとって重要な体験」を洗い出し、その体験が十分満たされているかを示すメトリクスを選定します。SLIは後述のSLO(サービスレベル目標)を達成しているかを測定するための指標でもあります。たとえば「月間稼働率99%」というSLOを設定したなら、対応するSLI(実際の稼働率)は常にその値を下回らないよう維持されなければなりません。このようにSLIは単なる数値ではなく、目標達成度を示すメトリクスという位置づけになります。

SLO:サービスレベル目標

SLO(サービスレベル目標)は、先述のSLIで測定する指標について目標となる値を定めたものです。言い換えれば「サービスの信頼性や性能に関して、どの程度の水準を目標とするか」を数値で表したものになります。重要なのは、SLOを設定する際に「理想的な完璧レベル」ではなく「ユーザーに許容される最低レベル」を目標値とすることです。ユーザーが不満を感じない範囲であれば、無理に理想的な高水準を追求するより、その分のリソースを新機能開発などに振り向けた方がビジネス価値は高くなるからです。

ここで登場する概念がエラーバジェット(許容されるエラーの予算)です。SLOによって「許容可能なダウンタイムやエラーの範囲」が定まりますが、この許容範囲をどれだけ有効活用できるかこそが、SREの本質である開発と運用のアジリティ向上につながるとされます。エラーバジェットを指標に開発と運用のリソース配分を調整する発想は、従来になかったSRE独自のアプローチです。

SLA:サービスレベル契約

SLA(サービスレベル契約)は、サービス提供者と顧客(利用者)との間で交わされるサービス品質に関する合意(契約書)です。SLAには、上述したSLIやSLOを踏まえて具体的なサービス提供水準が明記されます。

もっとも、SLAはビジネス上の契約事項であり、SREの技術的活動の核はあくまでSLIとSLOの設定・運用にあります。SREではシステムを常に監視し、異常があれば即座にアラートを上げたり自動復旧処理を行ったりする仕組みを導入するため、可能な限りSLA違反の状況そのものを発生させないよう努めます。

SREを導入するメリット

SREを取り入れることで、ヒューマンエラー削減や迅速なインシデント対応、自動化による業務効率化などが実現できます。本章では具体的にどのような成果が得られるのかを詳しく見ていきます。

システムの信頼性向上

SREの導入最大のメリットは、文字通りシステムの信頼性が向上することです。人手に頼った作業を自動化へ移行することでヒューマンエラーによる障害や設定ミスの発生を抑制できます。加えて、前述のSLI監視を取り入れてシステム状態を定量管理することで、異常の早期発見や障害発生時の迅速なインシデント対応が可能になります。

自動化による業務効率化

SREは運用業務のあらゆる部分で自動化を推進するため、結果的に運用効率の大幅な向上をもたらします。たとえばログ監視や定期的なヘルスチェックなど、ルーチン作業をツールで自動化すれば、運用チームの担当者はそれまで費やしていた時間をより戦略的な業務に充てることができます。運用フローを改善し続けることで、さらに効率化が進むという好循環も生まれます。

属人化の防止

SREによって運用タスクの可視化・標準化が進むことは、属人化の防止にも効果的です。自動化に取り組む過程で各作業の手順や条件が明確になるため、作業ノウハウが特定の個人だけのものになりにくくなります。属人化が解消されれば、万が一主要メンバーの異動・退職や想定外のトラブルが起きた際でも、他のメンバーでスムーズに対応しやすくなり、重大なサービス停止リスクを減らせます。特に基幹システムや重要サービスの運用においては、些細な手順であっても手順を明文化し共有しておくことが望ましいとされています。

システム開発・運用の改善

SRE導入はシステム開発および運用プロセス全体の継続的改善にも寄与します。SREでは日々の障害対応の振り返りや運用データの分析に基づき、開発・運用プロセスを絶えず見直していきます。また、新機能のリリース頻度が上がり開発と運用の関わりが密になることで、チーム間の連携が強化され組織としての対応力が増す効果もあります。結果として、長期的な安定稼働と効率的な開発体制を両立できるようになり、ビジネスに柔軟かつ迅速に対応できる組織へと成長できます。

SRE導入におけるポイント

SREを成功させるには、技術的なツール整備だけでなく、全社的な体制づくりとオブザーバビリティの確立が不可欠です。導入初期に押さえておきたい要点を整理します。

高いオブザーバビリティの獲得

オブザーバビリティ(可観測性)とは、システム上で異常が起こった際に単に通知するだけでなく、どこで何が起こったのか、なぜ起こったのか、どう直せばよいかまで把握できる能力や仕組みのことを指します。

SREを実践する上では、このオブザーバビリティを高めることが欠かせない要素となります。常にシステムの全体像を把握し、内部で何が起きているか詳細に知っておくことで、ユーザーに許容される範囲内でサービス品質を維持しつつ高頻度なリリースを継続することが可能になります。

全社で取り組む体制づくり

SREの定着・成功には組織全体の協力が不可欠です。DXが進んだ現在、ITシステムはあらゆる事業の土台となっており、開発・運用体制の改善は会社の在り方そのものに関わる重要課題と言えます。SREを現場の一チームだけの取り組みに終わらせず、全社一丸となって推進する体制を整えることが大切です。SREのメリットや成功例を社内で広く伝え、経営層から現場まで協力して取り組む文化を醸成することで、時間はかかっても着実にSREによる効果を引き出せるでしょう。

SRE導入における注意点

SREは信頼性向上だけを追い求めるものではなく、本来は適切なバランスの下で開発スピードを維持する手法です。導入時によくある誤解と陥りやすいポイントを確認しましょう。

SREの目的を理解する

SREというと「システムの信頼性を極限まで高めること」が目的のように思われがちですが、それは誤解です。確かにSREは"信頼性"を重視しますが、だからといってエラー発生をゼロに近づけるような非現実的な目標を追求してしまうと、開発を止めてでも安定だけを優先する極端な状況に陥りかねません。SREの本来の目的は、単なる信頼性向上やダウンタイム撲滅ではなく、「ユーザーが満足できるサービス運用を維持しつつ、開発のライフサイクルを高速化してビジネスのアジリティを高める」ことにあります。あまりに高すぎる目標値を設定することに固執するのではなく、適度なSLOの下でトイル(手作業で繰り返し行われる運用作業)の自動化を進め、サービス品質向上と開発スピード向上のトレードオフに挑むことが重要です。

SREチームを構築しても上手く機能しないことがある

SREを推進するにあたり、まず専門のSREチームを立ち上げるケースが多いです。しかし、チームを作ったからといって自動的にSREが機能するわけではありません。SREチームを成功させるには、まず適切なメンバー選定が重要ですが、それ以上にチーム発足後の運用方法と会社全体でSREを支える文化がカギを握ります。「SREチームを作って終わり」ではなく、その後に組織へ変化を促すアクションを継続していくことが重要です。

SREでシステムの安定性と開発スピードを両立するには

SREは、システムの信頼性(Reliability)と開発の敏捷性(Agility)を両立させるための強力なアプローチです。適切な指標管理と自動化により安定稼働を維持しつつ、継続的なリリースによってビジネス価値を高めていける点で、現代のソフトウェア開発運用に欠かせない考え方と言えます。

導入にあたっては、チームやプロセスがベストプラクティスに沿っているか定期的にレビューし、社内の課題に合わせてSREのプラクティスを適用・改善していく姿勢が重要です。自社に十分なSREの知見やリソースがない場合には、専門サービスの活用も検討すると良いでしょう。
サーバーワークスの「AWS運用・サポート」では、AWS上でのシステム運用や監視・保守をトータルにサポートしてくれるため、本番環境の安定性確保と運用負荷の軽減につながります。自社だけでSREを推進するのが難しい場合は、このようなサービスを活用しながらノウハウを蓄積し、徐々に内製化していくのも一つの方法です。

いずれにせよ、SREの導入は一朝一夕で完了するプロジェクトではなく、継続的な取り組みが必要とされます。小さな成功体験を重ねつつ組織になじませ、長期的に安定したシステム運用と迅速なサービス提供を両立できる体制を築いていきましょう。

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