AIOpsとは?求められる背景や主なユースケース、導入のメリットと注意点

近年、クラウドサービスやハイブリッド環境の普及により、企業のITインフラはますます複雑化しています。そうしたなかで、トラブルの予兆を見逃さず、迅速に対応するためには、従来の手動中心の運用では限界があります。
そこで注目されているのが「AIOps(Artificial Intelligence for IT Operations)」です。AI技術を活用してIT運用を高度に自動化・最適化するこの仕組みは、システム障害の予測や根本原因の特定、さらには業務負荷の軽減にも寄与します。
本記事では、AIOpsの基本的な概念から、実際のユースケース、導入によるメリット、注意点、導入を成功させるポイントまでを網羅的に解説します。
この記事でわかること
- AIOpsとは何か、そして注目されている理由
- IT運用現場でのAIOpsの具体的なユースケース
- AIOps導入によって得られる5つのメリット
- 導入時の注意点や成功のためのポイント
- AIOps導入を支援するクラウドシェルパの活用方法
※当記事は2025年8月に書かれたものであり、以後に展開された最新情報が含まれていない可能性がございます。
AIOpsの概要
現代のIT環境は複雑化とデータ量の増加が進む中で、企業の競争力や業務効率の向上が求められています。こうした背景で注目を集めているのが「AIOps」です。
本章では、AIOpsの概要と、AIOpsが求められる背景をご紹介します。
AIOpsとは?
AIOps(Artificial Intelligence for IT Operations)は、人工知能技術を活用してIT運用を自動化・効率化するためのアプローチです。従来のIT運用では、膨大なログやアラート情報を人手で処理していたため、対応の遅れやミスが課題となっていました。
AIOpsは、機械学習やビッグデータ分析といった技術を駆使して、収集されたデータをリアルタイムで分析・相関し、異常検出やインシデントの予測、根本原因の特定を迅速に実現します。これにより、従来は属人的で非効率だった運用プロセスを自動化し、運用チームの負荷を大幅に軽減できるのが大きな特長です。
AIOpsが求められる背景
AIOpsが求められる背景は、以下の4点です。
IT運用の複雑化
企業のITインフラは、オンプレミス環境だけでなく、クラウドやハイブリッドクラウドといった多様なプラットフォームが混在する状態が一般的です。
各システムから発生するログやメトリクスは分散しており、障害やパフォーマンス問題が発生した際に、原因を特定するまでに多大な時間と労力がかかります。こうした複雑な構成下でも統合的に可視化・分析を行えるAIOpsの導入が進められています。
運用の属人化
従来のIT運用は、特定の担当者の経験や判断力に依存する「属人的な運用」が多く見られました。しかし、担当者の退職や異動によって知見が失われ、運用品質が低下するリスクも少なくありません。
AIOpsは、過去のインシデントデータや対応履歴を学習し、自動的に判断・対応を行うため、属人性の排除と業務の標準化が期待できます。
データ量の増加
IoTやクラウドサービスの普及により、ITシステムが生み出す運用データは日々膨大になっています。この「大量のデータ」を人間がすべて確認・分析することは現実的ではなく、AIによる自動的なデータ分析とアラートのノイズ除去が求められています。
AIOpsは複数のデータソースからの情報を集約・相関し、有用なインサイトを迅速に導き出します。
即時対応のニーズ
ビジネスのスピードが加速する中で、システム障害や性能低下への「即時対応」は企業の競争力に直結します。AIOpsを導入することで、アラートの検出から根本原因の特定、対応アクションまでの時間を短縮し、MTTR(平均復旧時間)の最小化を実現できます。
DX推進
多くの企業がデジタルトランスフォーメーション(DX)を進める中で、IT運用の在り方も見直されています。
AIOpsは、単なる運用支援ツールではなく、業務の継続的改善や組織全体の業務効率化、さらにはデータドリブンな意思決定を支援する「戦略的なIT基盤」としても注目されています。
AIOpsのユースケース
AIOpsは、単に運用負荷を軽減するだけでなく、ITシステムの信頼性・安定性・俊敏性を高める多様なユースケースで活用されています。
ここでは、代表的な4つのユースケースについて、具体的な活用方法とその効果を解説します。日々の運用業務に課題を感じている情シス担当者にとって、導入のヒントとなる実践例です。
システムパフォーマンスの監視と分析
AIOpsは、CPUやメモリ使用率、ディスクI/O、ネットワーク帯域などのメトリクスをリアルタイムで収集・可視化し、システムの稼働状況を継続的に監視します。これにより、トラフィックの急増やリソース逼迫といった兆候をいち早く察知することが可能です。
さらに、過去のパフォーマンスデータを分析して傾向を把握することで、リソースの最適化やスケーリング判断を効率的に行うことができます。こうした取り組みは、サービス品質の安定化やダウンタイムの最小化にも直結します。
異常検知と予測
AIOpsでは、従来の閾値ベースのアラート管理に代わり、機械学習アルゴリズムを用いた異常検知が可能です。これにより、通常のパターンから逸脱した挙動を自動的に検出し、潜在的な障害を事前に察知することができます。
さらに、時系列データを活用した予測分析により、特定のイベントやトラブルが発生する可能性を事前に判断。予防保守や計画的なリソース配分など、より戦略的なインフラ運用が可能になります。アラートのノイズを抑えつつ、意味のあるアラートだけを運用チームに届ける仕組みは、運用負荷の軽減にもつながります。
根本原因の分析
障害が発生した際に求められるのが、迅速かつ正確な「根本原因分析(Root Cause Analysis)」です。AIOpsは複数のデータソース(ログ、イベント、トレースなど)を横断的に相関分析し、どの要素が障害の引き金になったかを自動で特定します。
これにより、手動による確認作業や属人的な判断に頼らず、客観的なデータに基づく分析が可能になります。結果として、MTTR(平均修復時間)の短縮や、再発防止策の強化に貢献します。
ITサービスの管理
現代のITサービスは複数のコンポーネントやクラウドサービス、サードパーティアプリケーションが連携して提供されています。AIOpsは、それらの構成情報や依存関係を可視化し、サービス全体の健全性を監視・管理する役割も担います。
例えば、特定のサービスに遅延やエラーが発生した際、その影響がどのシステムに波及するかをリアルタイムで把握し、優先順位の高い対応を選択できるようにします。これにより、ユーザー体験の改善や、ビジネスインパクトの最小化が図られます。
AIOps導入のメリット
AIOpsは、複雑化・高度化するITシステムの運用において、企業の競争力強化や運用効率の最大化を実現する重要なテクノロジーです。ここでは、AIOpsを導入することで得られる代表的な5つのメリットについて解説します。
運用の自動化と効率化
AIOpsは、アラート対応やログ分析、異常検知といった繰り返し発生するIT運用タスクを自動化し、人手に頼っていた業務を効率化します。例えば、複数の監視ツールからのイベントデータをAIが統合・相関分析し、重大なインシデントのみを抽出することで、不要なアラートに振り回される「アラート疲れ」を防ぎます。
その結果、IT担当者は戦略的な業務やシステム改善といった付加価値の高い業務にリソースを集中でき、生産性と組織の競争力が向上します。
サービス品質の向上
AIOpsはシステムの状態を常時モニタリングし、異常兆候を早期に検知・対応できるため、サービスの可用性と安定性を高い水準で維持できます。ユーザーに提供するサービスの中断や遅延を最小限に抑えることができ、結果として顧客満足度の向上にも直結します。
また、問題の根本原因を迅速に突き止め、再発防止につなげることで、継続的な品質改善が可能になります。
障害対応時間の短縮
従来の運用では、障害の検出から原因特定、復旧対応までに多くの時間と人手を要していました。AIOpsを導入することで、AIがログ・メトリクス・イベントを自動的に相関し、インシデントの全体像と根本原因を素早く特定します。
これにより、平均修復時間(MTTR)の短縮が実現し、システムダウンによるビジネスへの影響を最小限に抑えることができます。
コストの削減
AIOpsは人手による監視・分析作業を代替するため、運用にかかる工数と人件費を削減できます。また、トラブルの早期検知や予兆予測により、障害による損失や機会損失を抑えることができる点でも、コストメリットがあります。
さらに、クラウドサービス環境におけるリソース最適化や自動スケーリングの判断にも貢献し、インフラコストの最適化にもつながります。
セキュリティの強化
AIOpsは、通常とは異なる通信パターンや挙動をリアルタイムで検出できるため、サイバー攻撃や内部不正といったセキュリティリスクにも迅速に対応できます。セキュリティインシデントの早期発見と対応体制の自動化により、被害の拡大を防ぎ、事後対応の工数も軽減されます。
ゼロトラスト時代のセキュリティ運用においても、AIOpsは有効な手段のひとつとして注目されています。
AIOps導入の注意点とポイント
AIOpsは多くのメリットをもたらす一方で、導入や運用には技術的・組織的な配慮が欠かせません。導入効果を最大限に引き出すためには、事前準備と明確な運用戦略が求められます。ここでは、AIOps導入における注意点と、スムーズに定着させるためのポイントについて解説します。
注意点
AIOpsを効果的に活用するためには、AIや機械学習に関する高度な専門知識だけでなく、IT運用に関する深い理解も必要です。ツールを導入しただけでは成果は得られず、データの収集・整備、分析モデルの構築、組織内の運用体制の整備など、多くの工程が伴います。
特に重要なのが「データの質」です。AIは学習元となるデータの内容に強く依存するため、ノイズの多いデータや不完全なログでは正確な分析が行えません。また、導入初期は期待通りの成果が出にくいケースもあり、短期的な視点だけで評価しない姿勢も求められます。
そのため、社内に十分なスキルセットがない場合は、外部パートナーやコンサルティング企業との連携が有効です。専門家の支援を得ることで、導入リスクを抑えながら効果的な運用基盤を整えることができます。
ポイント
AIOpsの導入をスムーズに進めるためには、以下の4つのポイントをおさえることが求められます。
自社の課題を整理する
AIOps導入にあたっては、まず自社のIT運用における課題を洗い出し、どの領域でAIOpsを活用すべきかを明確にする必要があります。
例えば、「アラートの過多」「障害対応の遅延」「リソース使用率の偏り」など、具体的な課題をもとに導入の目的を定義することで、適切なツール選定や機能設計が可能になります。
既存のシステムやツールとの統合性を確認する
AIOpsは複数の監視ツールやIT資産管理システムと連携しながら運用されるため、既存のシステムとの統合性が非常に重要です。
導入前にAPI連携やデータ形式の互換性を確認しておくことで、データの取りこぼしや重複を防ぎ、スムーズな運用が実現できます。特にオンプレミスとクラウドが混在する環境では、全体アーキテクチャを俯瞰する視点が求められます。
データの整理を行う
AIOpsの精度と有効性は、インプットとなるデータの整備状態に大きく左右されます。
ログ、メトリクス、トレース情報などの収集範囲や保存期間、粒度などを事前に見直し、不要なデータを排除するとともに、分析に適したフォーマットへ変換する仕組みを整備しておくことが重要です。
また、データのサイロ化を防ぐために、部署を横断したデータ共有の体制も求められます。
段階的に導入していく
AIOpsは一度に全社へ導入するのではなく、まずは一部のシステムや部門から段階的に適用することが推奨されます。PoC(概念実証)などの小規模な導入で効果を確認し、課題と成果を可視化したうえでスコープを拡大することで、リスクを最小限に抑えながらスムーズな展開が可能です。
また、現場の運用担当者と連携しながら運用ルールや体制を整備していくことで、AIOpsの定着と継続的な活用が期待できます。
AIOps導入で実現する次世代のIT運用
AIOpsは、IT運用における課題を根本から見直し、業務の自動化・効率化を実現する革新的なアプローチです。システムの監視や異常検知、根本原因分析、サービス品質の維持といった運用タスクをAIの力で強化することで、運用負荷の軽減と迅速な意思決定が可能になります。
一方で、導入にあたっては専門的な知識や高品質なデータ、既存システムとの統合性など、多くの要素を考慮する必要があります。段階的な導入やPoCによる検証を通じて、着実に自社の業務に適合させていくことが成功の鍵です。
自社だけでAIOpsの導入・運用を進めることに不安を感じる場合は、専門家によるサポートを活用することも一つの手段です。
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