AWSへの社内サーバー移行の事例

"社内システムの全てのサーバをAWS化する3年計画を推進中です。AWSの設計・構築・運用はサーバーワークスに依頼しています。"

2016.06.03 掲載

アデランスは社内システムのサーバー基盤を全てAWSに統一する3年計画を推進しています。
小規模の情報系システムから大規模の基幹システムまで、従来オンプレミス運用していたシステムを全てAWSに移行し、クラウド化します(※1)。 サーバーワークスは、そのサーバー移行の設計、構築、運用など全ての業務を依頼いただいています。

推進を進める、廣瀬様、中井様にお話を伺いました。

AWSへの社内サーバー移行の事例

株式会社アデランス様

総合毛髪関連事業のリーディングカンパニー、アデランスは、2013年に米ヘアクラブを買収するなどグローバル展開を加速させています。すでに海外売上げ 比率は50%を超えており、年商791億円は毛髪ソリューション業界で世界No.1です。設立1969年。従業員数6,124名、連結子会社数51社(うち海外19社) (※ 本事例で記述している数字および事項はいずれも取材時である2016年4月に公開されている情報に基づきます)

  • この事例に記述した数字・事実はすべて、事例取材当時に発表されていた事実に基づきます。数字の一部は概数、およその数で記述しています。

目次

社内システムのサーバーを全てAWSに移行

アデランスはサーバーワークスにどんな業務を依頼したのでしょうか。

アデランスは社内システムのサーバー基盤を全てAWSに統一します。
小規模の情報系システムから大規模の基幹システムまで、従来オンプレミス運用していたシステムを全てAWSに移行し、クラウド化します(※1)。 サーバーワークスには、そのサーバー移行の設計、構築、運用など全ての業務を依頼しています。
AWS移行は「まず日本国内、次に海外」という順に行います(※2)。
まず国内サーバーを3年計画でAWS化して移行、運用のモデルを確立し、その後そのノウハウを使って海外支社のサーバー基盤もAWS化する方針です。
現在は国内サーバー移行の3年計画の1年目、フェーズ1が終了したところです。計画の概要は次のとおりです。

フェーズ コンセプト 移行対象システム
1年目
(フェーズ1)
【初期トライアル、評価】
「移行による効果が確実に見込めるシステム」、「もし何かあっても影響が少ないシステム」から移行を開始します。
実際にやってみることで「AWS移行の実際」を体感します。課題が発生した場合は、サーバーワークスと共に対処策を考えます。
■ 新CRMシステム
■ Web公開系システム
■ 3D関連システム
■ ヘアチェック関連システム
■ 海外生産管理システム
2年目
(フェーズ2)
【本格移行】
フェーズ1で得た知見、経験をもとに中核システムをAWS移行します。
■ 会計関連基幹システム
■ BI情報系システム
■ 人事・勤怠管理システム
■ 運用管理システム
3年目
(フェーズ3)
【総仕上げ】 移行が最も困難な「現場販売管理システム」「データベース」を移行します。 以上で国内システムの移行が完了します。 ■ 現場販売管理システム
■ データベース
■ F-Pad関連システム
■ ディザスタリカバリ、バックアップ
3年目以降
(フェーズ3〜)
【海外展開】
国内システムの移行で得た知見、経験をもとに海外拠点のサーバー基盤をAWS化します。
-

その他、今回のAWS移行の概要は次のとおりです。

項目 内容 備考
移行前のサーバー運用体制 データセンターで仮想サーバー(約100台)を運用 今後、新規システム用の仮想サーバーが追加されるので、サーバー数は引き続き増加します。
OS構成 100台のうち、7割がWindows、データベースを含む数台がUNIX、その他がLinuxという割合 UNIXサーバーは台数は少ないですが、データベースや店舗システムなど「重要なシステム」で使われています。
基幹システムの概要 ■ 会計関連:ORACLE EBS(LINUX)
■ 販売関連:自社開発システム(UNIX)
■ 生産管理:IFS(Windows)
■ 人事関連:COMPANY(Windows)
 -

※1: 一部のサーバーで、その方が適切と判断されたものはオンプレミス運用しますが、それはあくまで「例外」です。基本方針は「社内サーバー基盤は全てAWSで構築・運用」です。
※2:アデランスでは、製品の製造をすべて海外で行っています。それら製造拠点は、物理的な場所は海外であっても、その意義は「国内向け製造拠点」なの で、そこで使っているITシステムは「日本国内向けシステム」と見なします。したがってそれらシステムのサーバー基盤は、今回の「国内サーバーのAWS 化」の対象に含まれます。

サーバーワークスに依頼した業務内容

サーバーワークスに依頼している業務の概要を教えてください。

今回のAWS移行については、大きくは「方針策定を除く『実作業の部分』は、原則としてサーバーワークスにアウトソースする」という形にしています。依頼している業務の内容は次のとおりです。

【設計】
■ 移行前の全サーバーの状況をアセスメント
■ アセスメント状況を踏まえて、移行後のAWS利用ガイドライン、AWS最適構成を策定
■ 設計内容は「最初に決めて終わり」というのではなく、それ以後の「アデランス側のIT施策の変更・改善」「外部環境の変化」に応じて、協議の上、柔軟に修正

【構築】
■ 既存サーバー基盤のAWS移行作業
■ アプリケーションベンダー、既存SI会社とも必要に応じて連携

【運用】
■ 死活監視
■ リソース活用の最適化
■ (※【最適化コンセプト】は次のとおり):
-「必要なサーバー資源を、必要なときに、必要なだけ確保」
-「無駄をつくらない。足りなくなることもない。常にちょうどよく」
-「新しいことがやりたいときに、すぐに簡単にできる」

【その他】
AWS利用料金の支払い代行
(AWSはサーバーワークスを代理店として購入するという形態)

導入前の課題

アデランスが、サーバー基盤をクラウド化することに決めた経緯を教えてください。

(廣瀬氏):私がアデランスに入社したのは6年前、2010年ですが、そのとき社内システムは、おおむね「1物理サーバー1システム」の形で、データセンターで運用されていました。

それらサーバーの運用管理は大手SI企業に委託していました。しかし、わずかな変更をするだけでも、大がかりな契約書や見積書が必要になり、また都度都度 「ここまではやりますが、そこから先はやりません」という形の業務定義も発生しました。変更作業はわずかでも、そこに至るまでの手続きは膨大でした。

この問題を解決するべく、2012年に社内サーバーのほぼ全てを仮想化しました。基盤を仮想化すれば、サーバーの新設、変更、削除がスピーディーになりま す。これにより、従来あった課題、つまり「万事につけ作業が重い、遅い、小回りが効かない、時間と費用が膨大にかかる」という状況を解決できると期待したのです。

しかし、残念ながらそうはなりませんでした。

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仮想化で問題が解決しなかった理由

なぜ問題が解決しなかったのでしょうか。

もちろんサーバーを仮想化すれば、諸々のことは、ある程度スピーディーになります。

しかし、いくら仮想化したといっても、結局はその背後に物理サーバーがあります。つまり仮想サーバーの新設や変更も、その物理環境のリソース制限からは逃 れられません。新しいシステムを導入しようとしても、結局は資源不足の問題が出てくるわけで、決して自由にはなれません。

また仮想化したとしても、ハードウエア、ソフトウエアが弊社が所有する「資産」であることに変わりはありません。所有しているということは、それを維持・管理する業務が発生する。具体的には、SI企業からは「ハードディスクが壊れました。どうしましょう」「メモリが足りなくなりました。どうしましょう」と具申が来るわけです。

結局、その問題を解決するべくSI企業にサーバー新設、ディスク交換、メモリ増設を依頼すれば、結局、以前と同じような「作業の重さ、遅さ、高さ」の問題が出てきます。

サーバーを仮想化したことで問題は「ある程度は」解決しました。しかし、それは「ある程度」に過ぎず、私の考える「サーバー基盤の理想型」とはほど遠いものでした。

インフラの理想型

「サーバー基盤の理想型」とは具体的には。

以下、「あくまで『理想型』であり、今でも実現できているわけではない」ということを前提にお話しします。

私はサーバー基盤に限らず、すべてのITインフラは、電気、ガス、水道など一般インフラと同じく、『外部に完全にアウトソース』できるのがいちばん良いと考えています。

私たちは「事業会社のIT部門」なので、「事業を発展させるようなIT施策を企画・立案・実行すること」が本業です。サーバー基盤などインフラ構築・運用は「重要ではあるが副次的な作業」となります。

これは工場など製造部門の本業が「事業を発展させるべく、良い製品を作ること」であり、「電気、ガス、水道などは、外部のインフラ企業から購入している(アウトソースしている)」というのと同じ構造の話です(※)。

ITインフラは電気やガスに比べて歴史が浅いので、「社内で抱え込む部分」と「アウトソースする部分」の境界があいまいです。しかしそれがインフラである以上、やはり外部にアウトソースするのが本来的な姿だと思います。

「事業会社のIT部門はITインフラを構築・維持することを仕事と思ってはならない、それ以外で勝負しなければならない」ということです。

この「情報インフラのアウトソース」は、「インフラのTCOをゼロ化する」と言い換えることも可能です。

所有をやめれば、TCO (所有コスト)はゼロになる

「インフラのTCOのゼロ化」とは具体的には。

TCOとはTotal Cost of Ownershipの略で、直訳すると「何かを所有すること(ownership)により生じる全コスト」のことです。これを減らすべく「TCO削減」の 掛け声のもとに、様々な施策や取り組みがなされています。

ところで電気やガスや水道では、利用者はそのためのインフラを一切所有していません(※)。所有していないのでTCOは発生しない。つまりゼロです。同様 に情報インフラも、それを所有することをやめてTCOをゼロにするのが良いと考えるわけです。

では現状ある手段の中で、この理想型に最も近いものは何か、それはやはりAWSのような「サーバーのクラウド化」となります。

この考えに至った2014年から、「社内サーバーすべてのクラウド化」について、本格的な検討を開始しました。

まず最初に「どのクラウドサービスが良いか」を見定めたいと考え、AWSをはじめとする各種の「サーバー基盤クラウドサービス」を比較検討しました。
※ 「工場の自家発電」などはここでは考えないことにします。

多くのクラウドサービスの中からAWSを選んだ理由

検討の結果、AWSを選んだ理由を教えてください。

検討を開始する前から「サーバー基盤クラウドの中ではAWSが知名度もシェアもNo.1らしい」とは聞いていました。しかし先入観を持つのは良くないと考え、まずは各サービスを冷静に比較検討しました。
といいながらも割合に早い段階で「AWSが良い」という結論に至ってしまいました。実績、機能、将来性を考えると「やっぱりAWS」だなと。
もちろんAWS以外にも良いクラウドはあります。しかし、それらはどれも「大手IT企業が運営するクラウド」というのが難点でした。

今回のサーバー基盤クラウド化には、そもそも「特定企業へのベンダーロックインを解消したい(身軽になりたい)」という意図がありました。それを考える と、アマゾンという「本業がITではない会社」が提供するAWSが、もっとも「ベンダーロックインが避けられそう」に思われました。

次に「AWS構築をどのクラウドパートナー企業に依頼するか」の検討を開始しました。

クラウドパートナーを3段階で選定

クラウドパートナーはどのように選定したのでしょうか。

クラウドパートナーの選定は、「リストアップ」、「RFPによる一次選定」、「最終選定」の三段階で行いました。
今回の「会社全体のサーバー基盤の移行」は、「重要かつ、後戻りが難しい」という性質のプロジェクトだったので、どの選定段階でも「先入観を持たない」「安易に決めない」という姿勢で真剣に比較検討しました。

第一段階「リストアップ」

第一段階、「リストアップ」はどう行ったのでしょうか。

まずアマゾンに連絡して「良いクラウドパートナー企業を教えてほしい」と質問しました。その他、ITコンサルティング会社に費用を払って業界状況の調査、候補企業のリストアップを依頼しました。
まず30社が列挙されてきました。その候補に対し、「既存取引先は残す」「AWSが推奨してくる企業は残す」「有名なところ、おおむね評判が良いところは残す」という方針で30社を8社に絞り込みました。

第二段階「RFP」

第二段階「RFPによる一次選定」はどのように?

まずは候補企業にRFPを出して提案を求めました。RFPの骨子は二つあって、一つは「3年計画で全社のサーバー基盤を移行したい」ということ、もう一つ は「新CRMシステムを3カ月後(2015年9月)にAWSで稼働させたい」ということでした。
RFPを出したのが2015年5月末、回答期限は6月10日、そして新CRMの稼働開始が9月ですから、これはクラウド企業にとっては「タイトなスケジュールの要請」だったといえます。
このRFPに対しては、「実質上、断ってきた会社」、つまり「ウチはその仕事はできません(やりたくありません)」という趣旨の回答をしてきた企業が多くありました。
これはある意味、思惑通りの展開でした。

早期に断られるならその方が良い

「RFP回答を断ってきた企業が多かったことが思惑どおり」とは具体的には。

今回、サーバー基盤をクラウド化するのは、従来あった「少し変更するだけでも、作業が重く、遅く、そして費用は高い」という問題を解決するためでした。
これを裏返していえば、新たに起用するクラウドパートナーには「軽やかな対応、迅速な作業、合理的な費用」という三要素を求めることになります。
クラウド企業の選定を始めた頃、ちょうど目の前に「9月稼働開始が現場から要望されているCRMシステム」というタイトな納期の案件がありました。なら ば、これをRFPに盛り込んで、それに対する反応を見れば、良いクラウド企業を見つけるためのリトマス試験紙になる、そう考えたわけです。
一次コンペを終えて、サーバーワークスを含む数社が最終候補に残りました。

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第三段階 「最終選定」

最終選定はどのように行ったのでしょうか。

最終選定は、候補数社に来社していただき、それぞれ2時間のプレゼンテーションをしていただきました。
この最終選定を行った際しての、主な比較基準、求めた要件は次のとおりです。

要件1.「機能の充足度、納期」

こちらが求める内容、納期に対し、提案内容が必要十分であるかどうか、フィットしているかどうか、という話です。ただし、この点については候補3社とも 「こういうことはできますか?」というRFPに対し、「できます」と回答した上で最終候補に残っているわけです。 3社ともこの要件は満たしていました。

要件2.「スピード感」

今回のプロジェクトは、「脱・重厚長大」が基本コンセプトなので、提案内容、形式がそれに見合っていることを求めました。つまり、身軽、迅速、柔軟、自由、低価格などのキーワードを予感させて欲しかったわけです。
候補数社の中で、隅々まで緻密に設計したキメ細かいサービスを、従来型の重厚長大な形式で提案してきた企業もありました(その分、価格は非常に高価でし た)。そうした提案が有り難い場合もあるのですが、今回の「サーバー基盤クラウド化プロジェクト」では、 基本方針にそぐわないので、その提案は見送ることになりました。

要件3.「柔軟性」

今回のプロジェクトは「3年計画」なので、途中で「予期せぬ突発事態」「外部環境の変化」による内容変更、方針変更が生じることは十分にありえます。 そんな場合でも、「契約内容ではここまでなので、これ以上は別途見積もりです」と対応するのではなく、合理的な範囲でやりくりして何とかするという「柔軟性」を発揮してくれる企業が望ましいと考えました。
この点については候補数社の中で、「完全パッケージ方式の極めて明瞭なサービス内容と価格体系に基づく提案」をしてきたところがありました。もちろんハッキリ、明朗明確であるのは素晴らしいことです。しかし今回のような長期計画では、若干の「そぐわなさ」を感じました。

要件4.「向き・不向き」

リストアップ段階で、ITコンサル会社から言われたのは、「クラウド企業の場合、大きくは『ゲームに強い会社』と『企業情報システムに強い会社』に分かれます。 両者は社風や仕事の進め方がハッキリ違います」ということでした。今回のプロジェクトでは、やはり後者の「企業情報システムに強い会社」が良いと思われました。
これら4要件を基準に比較検討した結果、サーバーワークスが弊社の求める要件を最もよく満たしていたので、同社を起用することに決定しました。
サーバーワークスは提案内容や組織体制が、重厚長大すぎず、かつパッケージ的になりすぎず、AWS化プロジェクトにふさわしい軽快さと柔軟性を備えており、バランスの良さを感じさせた点が、大きな選定理由となりました。
その後、2015年6月から3年計画の第一フェーズを開始しました。これを無事に終えた2016年4月現在は「第二フェースが進行中」という状況です。
これまでのところサーバーワークスは、弊社が求めたとおりの「軽やかさ、迅速さ、柔軟性」を期待通り発揮してくれています。第二フェーズ、第三フェーズも確実に計画を遂行できると確信しています。

先輩ユーザーからのアドバイス

現在、サーバー基盤のAWS化を検討している企業に向けて「先輩ユーザーとしてのアドバイス」などあればお聞かせください。

全社のサーバー基盤をクラウド化するとなると、当然、長丁場の作業になります。その前提でクラウドパートナーを選ぶとなると、機能やサービス内容がRFP にフィットしていることは当然として、それ以外の「熱意、相性、向き不向き」などが重要になると考えます。
それら定性的な要素については、プレゼンの機会などを通じて、会って判定する他はないかもしれません。

今後の期待

サーバーワークスへの今後の期待をお聞かせください。

アデランスの情報システム部門では、今後とも、ユーザー向けシステムの企画・立案・構築設計という「事業会社のIT部門の本来業務」に注力するべく、インフラ部分の構築・運用については、クラウド化、アウトソースを推進していきたいと考えています。
サーバーワークスには、そうした私たちの取り組みを、優れた技術、提案、運用サポートの継続提供を通じて後方支援していただくことを希望します。今後ともよろしくお願いします。

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