AWS 上で CI/CD 環境を構築し、業務用空調機の付加価値を高める新機能の開発サイクルを大幅に短縮
「サーバーワークスの支援によって、新機能の本番環境へのデプロイ期間を大幅に短縮できたことに加えて、アジャイルな開発手法で社内の開発文化に変化をもたらせたことは大きな成果です」
2023.02.01 掲載
160カ国以上で事業を展開し、世界の空調業界をリードするグローバルメーカーとして知られるダイキン工業株式会社。同社は業務用空調機をスマートフォンやパソコンなどから遠隔監視/制御するクラウド型空調コントロールサービス「DK-CONNECT」で提供される新機能の開発を支えるCI/CD環境を、サーバーワークスの支援を通じてアマゾン ウェブ サービス(AWS)上で構築。これにより、空調機の付加価値を高める新機能の本番環境へのデプロイ期間が従来の2~3日から半日に短縮されるなど、開発サイクルが飛躍的に効率化すると同時に、アジャイルな手法によって社内の開発文化にも変化が生まれるなど、大きな成果を獲得しています。
事例のポイント
- お客様の課題
-
- クラウド、IoTを活用した空調ビジネスの新たな価値創出
- クラウドを介した業務用空調機の継続的な機能追加
- 従来のウォーターフォール型の開発手法からの脱却
- アジャイルな手法による開発サイクルの短縮
- 課題解決の成果
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- CI/CD環境によるビルド/テスト/デプロイの自動化
- 本番環境へのデプロイ期間を2~3日から半日に短縮
- 3年間で約30の新機能をリリース
- 新たな開発文化の醸成、エンジニアのマインドチェンジ
- 導入サービス
ダイキン工業株式会社様
「空調」「化学」「フィルタ」の3つ事業を柱に、油機事業、特機事業、電子システム事業などを展開。冷媒と空調機器の両方を製造する世界唯一のメーカーとして、環境技術を活かしたさまざまな製品・サービスを提供。グローバル社会の持続可能な発展に向けた新しい事業分野にも積極的に取り組んでいる。
お話を伺った方:
ダイキン工業株式会社
空調生産本部 ITソリューション開発グループ
主任技師
北村 拓也 氏
ダイキン工業株式会社
テクノロジー・イノベーションセンター 情報通信G
チームマネージャー
古川 修二 氏
- ※2022年11月取材
- ※この事例に記述した数字・事実はすべて、事例取材当時に発表されていた事実に基づきます。数字の一部は概数、およその数で記述しています。
目次
空調ビジネスの新たな価値創出を支えるクラウドサービスの基盤として AWS を採用
ダイキン工業は、連結売上高の約9割を空調事業が占める世界でも有数の空調機器メーカーです。特に2000年以降は、欧州、中国、米国といった海外市場に積極的に進出し、現在は海外からの売上が全体の約8割にまで達しています。
こうした中、同社にとってDX戦略の観点においても最優先の課題となっていたのが、ビル内の空調機器や周辺機器のデータを活用した空調ビジネスの新たな価値創出でした。空調生産本部 ITソリューション開発グループ 主任技師の北村拓也氏は次のように話します。
「当社では、すでに国内、海外で複数のIoTサービスを提供していますが、これらのサービスの多くは個別の市場単位で運用されており、サービスの一元化やさらなる効率化が求められていました。そこで2021年6月に国内市場向けに提供を開始したのが、クラウド型空調コントロールサービス『DK-CONNECT』です。DK-CONNECTは、業務用空調機をクラウドに接続し、パソコンやスマートフォンから遠隔監視、制御ができるソリューションです。これにより利便性、省エネ性が向上すると同時に、クラウドを介してお客様が必要とする新機能を短いサイクルでリリースすることができます」
こうしたDK-CONNECTの新機能開発やリリースを支えるクラウド基盤として採用されているのがAWSです。選定の理由について、テクノロジー・イノベーションセンター 情報通信G チームマネージャーの古川修二氏は次のように説明します。
「DK-CONNECTのクラウド基盤は現在、AWSのフルマネージドサービスを活用したサーバーレスアーキテクチャで構成されています。選定に際しては、やはりAWSの充実した機能は言うまでもありませんが、近い将来、同様のサービスをグローバルで展開していくことも視野に入れると、AWSに精通したエンジニアはグローバルにたくさんいますので、ダイキンの各地域開発拠点でそういったエンジニアをアサインしやすいことは大きなポイントでした」
新機能の開発サイクルを自動化するCI/CDパイプラインを AWS 上で構築
新たな機能を短いサイクルでリリースするDK-CONNECTでは、その開発工程は標準化されたパイプラインの中で効率的に進めていく必要があります。そこでダイキン工業が着目したのが、AWS上でのCI/CD環境の構築でした。
「手書きの手順書をベースとした従来のウォーターフォール型の開発手法はどうしても時間がかかり、開発環境の維持にも相応のコストが発生します。各チームが小さな開発工程を高速に回し、継続的にインテグレーションしていくためにはCI/CDによる自動化が必須でした。そこでAWSの高度な知見を備えたサーバーワークスに支援を要請することにしました」(北村氏)
サーバーワークスは、すでに2017月11月からDK-CONNECTに関連したAWS環境の要件定義や各種技術レビューなどに参画していましたが、同社が初めてチャレンジするアジャイル型の開発手法においても、やはりAWS上での先進的な開発ノウハウを持つエンジニアによる支援が不可欠だったといいます。
「それまでの支援を通じてサーバーワークスの知見は高く評価していましたが、CI/CD環境の構築に関しても、複数のクラウドベンダーに声をかけた中で、当社の状況を深く理解し、最適な提案をしてくれたのがサーバーワークスでした」(古川氏)
2018年5月から2019年12月にかけて進められたCI/CD環境の構築プロジェクトにおいて、サーバーワークスは同社のSREチームの一員として、CI/CDパイプライン全体の設計/構築はもちろんのこと、AWS CloudFormationや AWS SAMを活用したテンプレートの作成、またデプロイ後の環境で利用するパラメータチェック用のテストコードの作成など、広範な支援を行いました。
「開発チームがアプリケーションのバックエンド、フロントエンド、エッジなど複数に分かれている中、サーバーワークスには各チームの要望を踏まえて、ビルド/テスト/デプロイといった一連の仕組みの設計、構築を支援してもらいました。チームを横断して横串で支援してもらえたことで、期待した通りのアジャイル開発を推進することができました」(古川氏)
本番環境へのデプロイが大幅に短縮化開発チームのマインドチェンジも大きな成果
プロジェクトの中で開発されたAWS CloudFormationのテンプレートは、すでに機能単位で約200本に達しています。これらのテンプレートを活用しながら、DK-CONNECTは半年に1回のペースでバージョンアップを続けており、これまでの3年間でリリースされた新機能は、空調機を遠隔から監視する機能、スケジュールを設定して運用を自動化する機能など、約30に上っています。
新たに構築したCI/CD環境の最大の成果として挙げられるのは、やはり開発サイクルの短縮です。従来の手法では2~3日を要していた本番環境のデプロイは、現在は半日程度で完了できるようになっています。
「本番環境へのリリースは半年に1回程度ですが、テストやオペレーションのデモのためのリリースは数百回実施しています。従来の手法ではデプロイに時間がかかるため、デモの回数を減らしたり、テストをまとめて実施したりしていましたが、デプロイの期間が大幅に短縮されたことで、必要に応じてタイムリーに実施できるようになりました」(北村氏)
また新たな開発手法が定着する中で、社内の意識に変化が生まれていることも大きな成果だといいます。
「当初は経験のないアジャイルな開発手法やCI/CDパイプラインによるビルド/デプロイに戸惑いを感じたエンジニアもいましたが、ここでもサーバーワークスの支援によって開発チームのメンバーにマインドチェンジが浸透していきました。これをきっかけに、CI/CDの活用は他の開発プロジェクトへの横展開が進んでいます」(古川氏)
空調ビジネスの新たなモデルとして AWS の新サービスを継続的に活用
今後の継続課題の1つとして挙げられるのは、アプリケーションのGUI関連のテストの自動化です。GUIの領域はモジュールなどのテストと比べてテストコードが多く、初期コストがかかります。この点についても、ダイキン工業では投資対効果を見極めながら自動化に取り組んでいく考えです。
「開発における技術的な課題は、その他にも残されています。サーバーワークスには継続的なアドバイスと、AWSの新サービスをDK-CONNECTに実装していくためのさらなる提案を期待しています」(北村氏)
AWSの最新サービスを活用しながら進化を続けるDK-CONNECTは、同社の空調ビジネスを支える新たなモデルとして、世界中の顧客にさらなる価値を提供していきます。
担当エンジニア紹介
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