Amazon Personalizeで新しい商品に出会える購買体験を従来の約2倍向上

インターネット注文サイトの商品レコメンド機能にAmazon Personalizeを採用し、ユーザーがこれまで以上に新しい商品と出会えるようになりました。

2022.10.13 掲載

パルシステム生活協同組合連合会は、ユーザーである組合員に、より良い購買体験を提供することを目指し、インターネット注文サイトの商品レコメンド機能にAmazon Personalizeを導入。サーバーワークスは導入に向けての検証や基幹システムとの繋ぎ込み、実装を行いました。Amazon Personalizeを選んだ理由や導入効果などについて、同会 インターネット事業推進部 インターネットサービス課 課長 直井勇樹氏に伺いました。

事例のポイント

お客様の課題
  • 既存システムと連携しながら、大量データの活用と複雑な要件の対応
  • 新しい購買体験を実現出来るレコメンド機能のアップデート
課題解決の成果
  • AWSのマネージドサービスを活用してスピーディに基盤構築を実現
  • レコメンド表示からの購入未経験商品の購入割合が従来の約2倍になり、新しい購買体験を実現
導入サービス

AWSアプリケーション開発サービス

Amazon Personalize

Amazon Personalizeで新しい商品に出会える購買体験を従来の約2倍向上

パルシステム生活協同組合連合会様

「パルシステム生活協同組合連合会」は、首都圏を中心とした地域生協とパルシステム共済生活協同組合連合会が加盟する連合会組織です。食を中心とした商品の供給事業や共済・保険事業、福祉事業、電力事業などを展開しています。
お話を伺った方
インターネット事業推進部 インターネットサービス課 課長 直井勇樹氏

  • この事例に記述した数字・事実はすべて、事例取材当時に発表されていた事実に基づきます。数字の一部は概数、およその数で記述しています。

目次

コロナ禍による成長の勢いを止めないために。“攻め”の姿勢でIT戦略を推進

安全・安心な食材宅配を通じて組合員の豊かなくらしを応援するパルシステム生活協同組合連合会(以下、パルシステム)。

コロナ禍では外出自粛要請による“巣篭もり需要”で組合員が急増。同時に増加した問い合わせに対応するために、2019年にはコールセンターにAmazon Connectを活用したIVRによる自動電話注文ダイヤルの仕組みを導入しました。

そんなパルシステムがアフターコロナを見据えた次の一手として着目したのが「増加した組合員にどのように継続して利用してもらうか」ということ。注文サイトで組合員により良い購買体験を提供することをIT戦略の最重要課題として、いくつかの施策を立案しました。

「レコメンド機能の強化」と「口コミ分類自動化」パルシステムが取り組んだ2つの施策

パルシステムが注文サイトの改善施策として、2021年から実施したのは次の2つです。

  1. 商品レコメンド機能の強化
    パルシステムの注文サイトでは、すでにレコメンド機能を導入しており、買い物カゴ画面等において、ユーザーが前に購入したことのある商品を中心に表示するアルゴリズムで「買い忘れ防止」を促す役割を果たしていました。今回の施策において、組合員にとってより役立つレコメンド機能を検討し、Amazon Personalizeにたどり着いたと直井氏は話します。

    直井氏「単純におすすめや過去に購入した商品を羅列するのではなく、『主菜』や『副菜』など、テーマごとに提案する形式の方がわかりやすいのではないかと。また、普段自分では手に取らないような新しい商品にも出会ってもらいたいという思いもありました。理想としたのは、組合員の方が注文サイトにアクセスして食材を選ぶだけで、それらがどのように食卓に並ぶのかがイメージできる…そんな世界観です。最終的にはレシピまで提案して日々献立を考える負担を軽減できるサービスを目指したとき、その入り口としてAmazon PersonalizeのPERSONALIZED_RANKINGは相性が良いのではないかと考えました。既存のレコメンド機能を実装したベンダーさんにも提案をお願いしましたが、費用面で折り合いがつきませんでした。Amazon Personalizeはコスト面でも導入しやすかったです」
  2. 口コミ分類の自動化
    パルシステムの注文サイトには、組合員から毎日200件以上の口コミが投稿されます。そして、コールセンターの担当者はそれらをチェックし、コンプライアンスや倫理的な視点で公開に適さない投稿を非表示にしています。こうした人手によるチェック作業の自動化を目指し、Amazon SageMakerの活用を検討しました。

複数のAWSサービスを組み合わせることで複雑な要件にも対応

Amazon Personalizeによるレコメンド機能の強化と、Amazon SageMakerによる口コミ分類自動化。

機械学習に関する2つのプロジェクトが持ち上がるなか、パルシステムは導入に向けての検証や、基幹システムとの接続・構築をサーバーワークスに依頼。「AWSに関する豊富な知見をもち、すでに取引実績があったので安心感があった」と直井氏は話します。

レコメンド機能の強化について、今回の施策では、単純にレコメンド結果を表示するのではなく、クチコミ点数の高い商品に絞りたい・同じような商品が並ばないよう各種商品カテゴリから均等に抽出したいといったパルシステム側のさまざまな要件がありました。

それらに応えるために、レコメンド抽出を行うAmazon Personalizeとともに、パルシステムの基幹システムが保有するデータとの“繋ぎ込み”を行うAWS Lambda・AWS Step Functions、レコメンド表示するためのデータ加工を行うAWS Glueといったサービスを併用。

また、約80万の組合員を対象として約2000万件の大量データを処理する必要があるため、AWS Athenaによって検証を進めていきました。

直井氏「非常に複雑な要件でデータ量も多く、希望通りに構築できるか不安でしたが、スピーディーに構成図通りの実装をしていただき、驚きました。決められたスケジュールを守りながらも、検証は時間をかけて丁寧に行っていただいた点も安心できました」

構成図

Amazon Personalizeによるレコメンド機能でユーザーがこれまで以上に新たな商品に出会える機会を創出

Amazon Personalizeによるレコメンド機能は、注文サイトのトップ画面の中ほどに表示し、未購入の商品でも興味を持ってもらえるよう、商品クチコミとあわせて表示される形にデザインも変更されました。

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新しいレコメンド機能のデザイン

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買い忘れ防止用レコメンド機能のデザイン

パルシステムはAmazon Personalizeによる実装と並行して既存ベンダーにも同じ要件でレコメンド機能の変更を依頼。

ABテストで効果を比較したところ、レコメンドに表示される対象商品のうちユーザーが購入未経験の商品の購入する割合が、既存ベンダーの仕組みが35%前後だったのに対し、Amazon Personalizeによる仕組みは60%以上という結果になり、パルシステムが理想とする組合員の購買体験を実現しています。

直井氏「ABテストの結果、いくつかの指標では既存ベンダーの方が評価が上回ることもありましたが、Amazon Personalizeによって組合員の方がより新しい商品と出会えるようになったという点で高く評価しています。これは長期的に見てLTV(ライフ タイム バリュー)の向上にも寄与するでしょう。また、コスト面で考えても比較的低価格で実装出来るAWSは魅力的でした」

Amazon SageMakerによる口コミ分類自動化についても一定の成果を得られ、今後も継続的に導入検討を行います。

直井氏「よく機械学習の話題で『一定の精度は簡単に出るけど、そこから上げていくのが非常に困難』という話を聞いていましたが、それを肌で感じる結果になりました。最終的に、求める精度と削減できるコストを天秤にかけたときに、どこまでデメリットを許容するかという判断になりますが、我々にとって口コミは組合員の方々の大切な声ですので精度は妥協ができません。今後も課題・要件に応じて試してみたいと思っています」

成果と課題を糧にさらなる技術導入を続ける

機械学習に関する2つのプロジェクトを通し、成果と課題の両面を実感したパルシステムとサーバーワークス。

最後に、今後のIT戦略における展望を直井氏にお聞きしました。

直井氏「機械学習を適用できる業務や、適用したら面白い機能などはまだまだあると思います。例えば、パルシステムの活動に関する情報を興味のありそうな組合員に対してレコメンドする、口コミのサマリーを商品開発担当向けに提供するなど。今回のプロジェクトで得た知見は、違った課題の解決にも活かせるでしょう。レコメンド機能ついても、Amazon Personalizeを使いつつ、さらに精度を高められるよう、引き続き試行錯誤していきます。サーバーワークスさんには、これからもさまざまなシーンにおいて力を貸していただき、一緒に新しいことに取り組んでいきたいです」

担当エンジニア紹介

内村 和博
アプリケーションサービス部ディベロップメントサービス2課
内村 和博
Web アプリケーション・インフラエンジニア/プロジェクトマネージメントの実務経験後、サーバーワークスへ入社。
Web サービスの AWS 移行技術支援、DB EOL に伴う AWS 移行支援、機械学習を用いた Web サービス機能開発支援、Amazon Connect を用いたシステム開発支援などの案件にPMとして従事。
孔 允培
アプリケーションサービス部 ディベロップメントサービス2課
孔 允培
サーバーレス開発及びAmazon Connectの弊社ソリューション開発や案件を中心に従事。
子供の時の夢は芸人、マジシャン。人を幸せにすることが好きだったため(まだ諦めてません)。
優しさと前向き精神で日々精進中。
好きなAWSサービスはAWS Lambda、Amazon DynamoDB
アプリケーションサービス部ディベロップメントサービス1課
柳田 恵里
SIerで業務システム開発の実務経験後、2019年サーバーワークス入社。Amazon Connect を用いたシステム開発支援や Glue / Step Functions 等を用いたデータ分析基盤構築支援といったサーバーレス開発案件に従事。プロジェクトリーダーも担当。Solutions Architect – Professional、Data Analytics - Specialtyなど、AWS認定資格を6つ保持。
保田 和馬
アプリケーションサービス部ディベロップメントサービス1課
保田 和馬
サーバーレスアプリケーションの開発案件やAmazon Connect案件に従事。機械学習やデータレイク、IoTも少々。Python で綺麗(当社比)なコードを書くのが趣味。
好きなAWSサービスは AWS Lambda 、Amazon Cognito

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