全国600店舗のVPN基盤をAWSへ移行。物理機器のサポート終了を機に、初期費用半減と運用コスト1/3を達成
国内20社・海外4社を擁するサザビーリーググループ全体のITシステムを一括管理する、株式会社サザビーリーグIRIS。同社は、全国約600店舗のビジネスを支えるVPN基盤の中核機器がサポート終了を迎える中、約400店舗のVPN接続環境を維持したまま移行する必要があり、数千万円規模のリプレイスコストと互換性の課題に直面していました。
サーバーワークスは、AWSとネットワークの双方における高度な知見を活かし、Amazon EC2上に仮想ルーター「Cisco Catalyst 8000V」を構築する移行プランとPoC(概念実証)を提案。段階的な実機検証を伴走支援した結果、初期導入費用を半減、運用コストを約3分の1に抑え、ハードウェア管理や災害リスクから脱却する高可用なインフラ基盤を実現しました。
事例のポイント
Before
お客様の課題
- 店舗ネットワークの中核である「Cisco ASA 5545」のサポート終了が迫り、リプレイスが急務であった
- 後継機器では従来使用していたCisco Eazy VPNが使用できず、単純な機器入れ替えが困難であった
- 他社提案は数千万円規模と高額で、全国の店舗での現地作業負荷が膨大であった
- 物理機器の5年サイクルの更新コストや保守費用の値上がりリスクが、毎回の予算承認を困難にしていた
After
課題解決の成果
- サポート終了前に移行を完了し、AWS上の仮想ルーター活用により従来の物理リプレイス想定と比較して初期導入費用を半減、運用コストを約3分の1に削減
- 現地作業不要の遠隔切り替えを実現し、店舗の営業への影響をゼロに抑えた
- 機器入れ替えの初期投資や保守費用の値上がりリスク、5年サイクルの更新コストから完全に解放された
- 物理的な障害ポイントが激減し、台風などの災害時における店舗ネットワークの障害リスクが大幅に低減
導入サービス
Index
迫る物理ルーターのサポート終了。独自規格の壁と数千万円の刷新コストに直面
アパレル、生活雑貨、カフェなど、全国に約600店舗の専門店を展開し、幅広い領域でリテールビジネスを牽引するサザビーリーググループ。グループ全体のITを一括管理するIT専門会社が、株式会社サザビーリーグIRISです。同社の中でITインフラ基盤の設計・維持・運用を担う「インフラグループ」はミッションとして「グループ全体のビジネスをITインフラの側面から止めないこと」を掲げており、全国約600店舗のネットワークやクラウド環境を正常に維持し、トラブルを未然に防ぐことに取り組んでいます。
そんな中、店舗ネットワークの要であった「Cisco ASA 5545」が2025年9月末にサポート終了(EOS)を迎えることになり、リプレイスの検討が始まりました。しかし、単純な後継機へのリプレイスを検討したものの、最新の機器では、店舗側の動的IPアドレスを活かして通信回線コストを抑えていたCisco独自のVPN規格(Easy VPN)が利用できないことが判明しました。移行を完了させるには、約400店舗のルーター設定を現地で変更するか、全店舗の機器を刷新する必要があり、作業費や機器費を合わせると数千万円規模のコストが見込まれる状況でした。
「次世代ファイアウォールのFirepowerやクラウド型のルーターであるMeraki、ネットワークセキュリティサービスのCATOなど複数のベンダーに相談しましたが、いずれも価格が数千万円規模。現地作業が多くなればお店に迷惑をかけてしまう懸念もあり、どうすべきか非常に頭を悩ませていました」と、同社インフラグループの奥氏は語ります。
インフラグループ リーダー
奥 隆宏氏
AWSとネットワーク双方の高度な知見が決め手。密な連携で進めた安心・安全なPoCの始まり
課題を打破するため、同社はAWS上にCiscoの仮想ルーター「Cisco Catalyst 8000V(以下、C8000V)」を構築し、既存の店舗ルーターをそのまま活かす構成を考案しました。C8000Vは仮想ルーターでありながらEasy VPNをサポートしているため、店舗側のPeerを変えるだけで センター側だけを遠隔でクラウドへ移行できる見込みがありました。しかし、この構成を実現できるベンダーを見つけることは容易ではありませんでした。
「AWSに強いベンダーはネットワークに弱く、ネットワークに強いベンダーはAWSの知見が乏しい。2社に分けて依頼する案も考えましたが、トラブル時に責任の所在が曖昧になるリスクがあり、両方に精通したパートナーを探していました」と、同社インフラグループの今上氏は語ります。
インフラグループ プロジェクトマネージャー
今上 一樹氏
そこで、2015年から請求代行サービスなどを通じて、長年確かな信頼関係を築いていたサーバーワークスに相談が寄せられました。今回、最初に同社からルーター周りの相談を受けたサーバーワークスの営業である中島は、当時の社内検討をこのように振り返ります。
「弊社にとっても非常にチャレンジングなネットワーク構成であり、受託については社内で慎重に検討を重ねました。しかし、10年間共に歩んできた同社の大切な節目であり、なんとか一緒にサポートさせていただきたいという強い想いがありました。お客様が常に前向きに、同じ目線でプロジェクトに臨んでくださる確信があったからこそ、まずは移行リスクを最小限に抑えるためのPoC(概念実証)環境の構築を軸とした提案を行い、一丸となって進める決意をいたしました」
クロスインダストリー第2本部 首都圏営業課
中島 有里
検証を支えた3つの設計方針と実機での技術的取り組み
PoCプロジェクトの土台となったのが、プリセールスの菅谷と手塚がPoC開始前に整理した提案の3つのポイントです。
「大きく3つのポイントを整理しました。1つ目はAWSのネットワーク設計で、店舗環境から本社のオンプレ環境までの通信経路の全体像を設計すること。2つ目は、店舗側で現地作業が発生する部分について、お客様と弊社でどこまでを担うかの役割分担を明確にすること。3つ目はPoC環境の設計で、店舗ではなくAWS上に仮想環境を用意することで、物理店舗に依存せず、サンプル設定ファイルをスピード検証・提供することです。」(菅谷)
クロスインダストリー第2本部 AI推進課
菅谷 歩
「物理機器を使った実機検証は弊社では対応できない部分でしたが、お客様にご協力いただくことでうまく役割を分けることができました。チャレンジングな構成でも、この住み分けがあったからこそ着実に前進できたと思っています」(手塚)
クロスインダストリー第2本部 インフラ技術課
手塚 忠
こうした体制のもと、サーバーワークスがAWSの仕様確認・制限確認と検証サポートを担い、同社が実機検証を担当することで、両社は明確に役割を分担しながらPoCを推進しました。
複雑なネットワーク経路の設計とセキュリティポリシーの最適化
検証を技術面から支えたサーバーワークスの北中は、当時の苦労をこう振り返ります。
「C8000VはEasy VPNのサーバー機能しか持っておらず、クライアント機能がないため、AWS内でPoCを完結させることができませんでした。サザビーリーグIRIS様にご相談したところ、実際の店舗機器をお借りできることになり、C8000V をサーバー側として、実機をクライアント側として組み合わせることでPoCを完遂することができました。AWSのルートテーブルとC8000V独自のルートテーブルが混在する経路設計は、クラウドとネットワークの両方の知識が必要な領域で、弊社の強みを活かせた部分でもありました」
クロスインダストリー第2本部 カスタマーサクセス課
北中 雄士
セキュリティポリシーの面では、同社が予期しなかった課題も発生しました。AWS上のセキュリティグループに登録できるポリシー数には上限があり、店舗から社内サーバーへの通信のみをVPN経由に絞り込む設定を追加していく中で、上限に抵触する可能性が浮上しました。
セキュリティグループの上限を引き上げるか、複数のセキュリティグループを紐づけるかという選択肢について、サーバーワークスは過去の構築ナレッジをもとに「この環境では複数のセキュリティグループを紐づける方が運用上、楽になる」と助言。同社はその知見を活かして課題を解消しました。
台風の教訓が後押しした、クラウドへの確信
今回のAWS移行がもたらした価値は、コスト削減や運用効率の向上にとどまりません。耐障害性という観点でも、クラウド移行の意義は大きいものでした。
インフラグループには、ハードウェア依存のリスクを強く意識するきっかけとなった経験があります。2019年に発生した台風 15号による大規模停電で、オンプレミスのデータセンターのインターネット回線が約1週間停止。全国の店舗ネットワークが切断され、倉庫からの補充指示が滞るなど、店舗運営への影響が生じました。
「あの経験から、特定の物理設備への依存そのものがリスクになりうると実感しました。それ以来、インフラの耐障害性をどう高めるかが、私たちの重要なテーマになっています」(今上氏)
今回のAWS移行により、VPNゲートウェイが堅牢なクラウド基盤へと移行したことで、自然災害や物理障害による停止リスクは大幅に低減されました。かつての教訓を踏まえた先手の判断が、より強固なインフラ基盤の実現につながっています。
初期費用は半減、運用コストは3分の1へ。ハードウェア依存からの脱却がもたらした高い可用性
2025年1月末、徹底的なPoCを経て安全性を確認した同社は、本番環境への切り替え準備を完了しました。PoCで実際の店舗機器を用いた段階的な動作確認を重ねたからこそ、最終的に同社が自身で行った夜間の遠隔切り替え作業もスムーズに成功しました。
コスト面では、物理アプライアンスでリプレイスした場合と比較して初期導入費用を約半分に抑制。運用コストについても約3分の1にまで抑えられる見込みとなりました。毎年見直されるハードウェアの保守費用値上がりリスクや、5年サイクルのハードウェア更新コストからも完全に解放されました。
「Cisco機器の保守費用はこれまで毎年値上がりしていて、同じものを使っているのにコストが上がるという説明は社内承認が取りにくかった。クラウドに移行してからはそのリスクからも解放されました」(奥氏)
「データセンターのスペースを借りて、毎日ランプチェックをし、アラートが来たらベンダーと保守対応をするという物理的な維持工数と初期投資が、仮想化によってなくなりました。同じようにハードウェア更新や保守運用に悩むインフラ担当者には、クラウド上の仮想ルーター活用は、自信を持っておすすめしたいです」(今上氏)
リテールITを支える強固なインフラを基盤に、さらなるAWS活用とビジネス拡大へ
今回のVPN基盤のAWS移行成功により、サーバーワークスのエンジニアの技術力およびプロジェクト推進力を高く評価した同社。「コスト的にもサービス的にも最も安定しているのはAWS。AWSに強いといえばサーバーワークスさん」と同社が評するように、本案件の完了以降も後続のインフラ相談が次々と寄せられるようになっています。
「最初はできるかどうかも分からないリスクのある案件でしたが、手厚く伴走していただき本当に助かりました。レスポンスも非常に早く、おかげでトラブルなく完了できました。今後も別の案件でぜひお付き合いいただきたいと思っています」(奥氏)
株式会社サザビーリーグIRIS様
2024年設立、アパレル・アクセサリー・雑貨・カフェ・レストランなどの専門店ビジネスを展開するサザビーリーググループのITを一手に担う専門会社。ITコンサルティング、ITインフラ構築・運用、業務アプリ開発、物流支援、店舗業務支援を事業の柱に、企画提案から運用保守まで全行程を一貫してサポートする。ネットワーク・セキュリティなどのインフラ層からPOS・販売管理などのアプリケーション層まで幅広く対応できる体制を強みに、国内20社・海外4社、全国約600店舗の現場に根ざした実用的なITソリューションを提供している。
取材に協力いただいた方々
- 奥 隆宏氏
- インフラグループ リーダー
- 今上 一樹氏
- インフラグループ プロジェクトマネージャー
※ この事例に記述した数字・事実・役職や所属はすべて、事例取材当時に発表されていた事実に基づきます。数字の一部は概数、およその数で記述しています。
社員プロフィール
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クロスインダストリー第2本部 首都圏営業課 中島 有里
2021年からサーバーワークスにジョイン。今は首都圏の既存/新規のお客様を中心とした営業に従事。最近はクレヨンしんちゃんに癒され中。
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クロスインダストリー第2本部 インフラ技術課 手塚 忠
ネットワークベンダーの営業SE、ISP・放送事業者のインフラエンジニアを経て2019年よりサーバーワークスに在籍。現在はAWSエンジニアとして、プリセールスからAWS設計・構築を担当。強みであるネットワークの専門性を武器に、多様な業種のインフラ課題を解決。2025 Japan AWS All Certifications Engineersに選出。
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クロスインダストリー第2部本部 カスタマーサクセス課 北中 雄士
前職のSIerにて約10年間、オンプレミスの仮想化基盤やクラウド環境の設計・構築・運用に従事。2024年にサーバーワークスへ入社し、CSMにてお客様のAWS活用を支援するほか、顧客向けAWS利用ガイドラインの策定やマルチアカウント環境の設計・構築など様々な業務を担当している。2026 Japan AWS All Certifications Engineersに選出。
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クロスインダストリー第2本部 AI推進課 菅谷 歩
2019年サーバーワークス入社。AWS環境の設計・構築からバックエンド開発・運用監視まで幅広く担当後、現在はAI推進部門にてAmazon BedrockやClaudeを活用した生成AI導入支援に従事。
選ばれる3つの理由
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Reason 01
圧倒的な実績数による
提案力とスピード- 導入実績
- 1570 社
- 案件実績
- 31700 件
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Reason 02
AWS認定の最上位
パートナーとしての技術力
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Reason 03
いち早くAWS専業に
取り組んだ歴史