Amazon Connectで構築したIVRによって「ファミペイ」の暗証番号ロックの自動解除率を向上し、コールセンターの負荷を大幅に軽減
IVRと顧客管理システムの連携では高度な技術知識が要求されましたが、国内でも有数のAWSのプレミアコンサルティングパートナーであるサーバーワークスは、AWSの知見に加えて、他のベンダーが見えていない技術領域に関しても的確にサポートしてくれました

- WEBサービス事例
2023.05.11 掲載
国内外で約2万5,000店舗のコンビニエンスストアを展開し、消費者のライフスタイルに寄り添った多彩なサービスを提供する株式会社ファミリーマート。同社がDX戦略の一環として2019年7月にリリースしたスマートフォンアプリ「ファミペイ」は、すでに累計ダウンロード数が1,500万を超える人気アプリとなっています。この中で1つの課題となっていたのが、増え続けるユーザーからコールセンターに寄せられる暗証番号のロック解除依頼への対応でした。この対策として、同社はAmazon Connectを活用してロック解除用のIVR(自動音声応答システム)を構築。その結果、ユーザーによる自動解除率が約80%に達し、コールセンターの負荷を大幅に軽減することに成功しました。
事例のポイント
- お客様の課題
-
- 暗証番号のロック解除依頼の急増によるコールセンターの応答率の低下
- コールセンターのオペレーターの業務負荷、人的コストの増加
- 煩雑な手続きに対するアプリユーザーの満足度の低下
- 課題解決の成果
-
- IVRの構築によってユーザーによる自動解除率が約80%に向上
- キャンペーン時に低下していたコールセンターの応答率の改善
- IVRの継続的な機能強化によってアプリユーザーの満足度が向上

株式会社ファミリーマート様
「あなたと、コンビに、ファミリーマート」というコーポレートメッセージを掲げ、フランチャイズシステムによるコンビニエンスストア事業を展開。近年はデジタルを活用して消費者の多様なライフスタイルを支援する独自のDX戦略に大きな力を注いでいる。店舗数は国内16,533店、海外8,006店(2023年2月28日現在)。
お話をお伺いした方
株式会社ファミリーマート
システム本部 金融・デジタルシステム部
デジタルシステム運用G
山岸 英子 氏
- ※この事例に記述した数字・事実はすべて、事例取材当時に発表されていた事実に基づきます。数字の一部は概数、およその数で記述しています。
目次
ファミリーマートのDX戦略を支えるインフラとしてAWSを採用
2022年から2024年度までの中期経営計画においてCVS事業(店舗基盤・ブランド・顧客基盤)の強化を掲げ、人型AIアシスタントや無人決済店舗などの取り組みを積極的に推進するファミリーマート。この中でも、バーコード決済、クーポン配信、他社のポイントプログラムとの連携など、さまざまなサービスが網羅されたスマートフォンアプリ「ファミペイ」は、同社のDX戦略を牽引する重要なサービスとして位置付けられています。
このファミペイのサービスを支えるインフラとして、同社が開発段階から採用しているのがアマゾン ウェブ サービス(AWS)です。その理由について、システム本部 金融・デジタルシステム部 デジタルシステム運用Gの山岸英子氏は次のように話します。
「それまでも当社の周辺システムのインフラとしてAWSを活用してきましたが、決済機能などを提供する『ファミペイ』は、インフラの停止が許されないミッションクリティカルなサービスです。この点においても、AWSの高い稼働率や高度なセキュリティ性は、ファミペイのサービスを支えるインフラとしての要件を十分に満たしていました」
そして、同社はAWSを活用したファミペイのインフラ構築、運用のパートナーとして、サーバーワークスに支援を要請。山岸氏は「2019年7月のサービスインの際は、想定以上のアプリのダウンロードによってキャパシティが逼迫しましたが、サーバーワークスの支援によるリソースのスケールアップ、スケールアウトで何とか乗り切ることができました。こうした知見は、国内でも有数のAWSのプレミアコンサルティングパートナーならではだと思います」と当初を振り返ります。
アプリユーザー数の増加に伴い
暗証番号ロック解除の対応が課題に
その後もさまざまな機能を追加しながら順調にユーザーを拡大してきた「ファミペイ」ですが、これに伴う新たな課題も発生しました。その1つが暗証番号のロック解除依頼への対応です。ユーザーは登録時に6桁の暗証番号を設定し、アプリを使う際は電話番号と暗証番号でログインします。暗証番号を忘れた場合は24時間対応のコールセンターに電話をかけ、オペレーターが確認してリセットしていました。しかし、年に何度か実施する大型キャンペーンの時期になると、暗証番号のロック解除依頼が急増することから、コールセンターの業務に支障をきたすようになっていました。
「キャンペーン中は、長くアプリを利用していなかった休眠ユーザーからのロック解除依頼が殺到します。その結果、オペレーターが対応に忙殺され、コールセンター全体の応答率が低下する状況が発生していました。オペレーターの増員はコストがかさむ上、煩雑な手続きを敬遠して『ファミペイ』の利用自体をやめるユーザーも出てきたことから、ロック解除のプロセスを自動化する仕組みの検討を開始しました」(山岸氏)
Amazon Connectで構築したIVRによって
ユーザーとオペレーターの負荷を軽減
複数のパートナーに提案を依頼したファミリーマートは、最終的にAmazon Connectを活用して暗証番号ロック解除用のIVR(自動音声応答システム)を構築するサーバーワークスの提案を採用しました。
「サーバーワークスの提案は、専用の電話番号でロック解除依頼を受け付け、自動音声でユーザーの個人情報の入力を案内するものです。Amazon Connectは初めて利用するサービスでしたが、複数の提案の中でユーザーのストレスが最も少ないのがサーバーワークスの提案でした」(山岸氏)
ロック解除用IVRの構築は2022年2月からスタートし、要件定義、設計、開発、テストを経て、同年8月から運用を開始しました。IVRは、コールセンターの顧客管理システム(Salesforce)などとAPIで連携する形で構築しています。サーバーワークスはIVRの構築に加えて、API連携におけるセキュリティ要件やネットワーク要件への対応など、幅広い領域で支援を提供しました。
「API連携では高度な技術知識が要求されましたが、サーバーワークスはAWSの知見に加えて、他のベンダーが見えていない技術領域に関しても的確にサポートしてくれました」(山岸氏)
運用開始から3カ月後の2022年11月には、コールセンターを介することなく、ユーザーがSMS認証によって直接ロック解除の操作ができる機能も追加。現在は、クーポンやポイントプログラムなど『ファミペイ』の基本サービスのみを利用しているユーザーはSMS認証でロックを解除し、ローンや銀行決済などの金融系サービスを利用しているユーザーはIVRによる3点確認でロックを解除するという、ユーザーの属性に応じた2つの方法を使い分けています。これにより、コールセンターのオペレーターが直接対応しなければならないのは、ユーザーがIVRの認証に失敗し、ロック解除がNGだった場合だけとなっています。
AWSを活用したさらなる自動化
DX戦略の加速に大きな期待
IVRとSMS認証による新たな暗証番号のロック解除プロセスにより、ユーザー自身による自動解除率はすでに約90%以上にまで達しています。キャンペーン時に低下していたコールセンターの応答率も改善され、「電話がつながらない」といったユーザーの不満は解消されています。
「当初は60%程度の自動解除率を想定していましたので、約90%以上というのは期待以上の成果です。キャンペーンのたびに発生していたコールセンターの過大な負荷も軽減し、担当者からは評価の声が届いています」(山岸氏)
その後もアプリのメンテナンス中にかかってきたロック解除の電話に対して、自動アナウンスで返答する機能を実装するなど、Amazon Connectを活用したIVRは機能強化を続けています。今後もコールセンターから寄せられる改善要望に応じて、さらなる自動化や省力化を進めていく考えです。
「ファミペイ」のサービスを支えるインフラについても、山岸氏は次のように期待を寄せています。
「リリースから約4年が経過し、アプリとしての『ファミペイ』は成熟期を迎えつつあります。今後はインフラとしてのAWSの安定稼働、スパイクアクセスへの対応、コストの最適化などが課題となってきますので、サーバーワークスにはさらなる支援を期待しています」
ファミリーマートはサーバーワークスとのパートナーシップを通じて、今後もAWSを活用した独自のDX戦略をさらに加速させていきます。
担当エンジニア紹介
AWS導入・活用に関するご相談はサーバーワークスへ
関連する導入事例
-
サーバーワークスの認定トレーナーによるAWS公式トレーニングを受講、実践的な知見を獲得し、既存環境の設定を見直すグループ横断のプロジェクトにも着手
中級編を受講したセキュリティ担当者は、セキュリティ対策を含めたより実践的なシステム設計やシステム構築のスキルを獲得。またアプリケーション開発チームのメンバーも、初級編の講座を通して、クラウドやAWSの各種サービスについて基礎から実践的な知識までを習得しました。現在受講メンバーも参画したタスクフォースでは、既存のAWS環境の設定を見直し、ITコストを削減するためのプロジェクトに着手しています。
2023.09.20 掲載
-
Zendesk と Amazon Connect の連携で、顧客満足度向上に繋がる新たな基盤を構築し、問い合わせ対応時間を約3分の1に削減したアダストリアが目指すカスタマーサポートの次の領域
「課題の棚卸を通じて明らかになった"あるべき姿"を、Zendeskの標準機能でほぼ実現できることが導入の決め手となりました。今後はZendeskを基盤に、守りだったカスタマーサポートの領域を攻めの領域へとシフトしていく計画で、Web接客のトライアルを進めながら、最終的にはコンシェルジュのようなサービスを目指します。」
2023.06.08 掲載
-
【動画】「ダイキン情報技術大学」における製造業DXに向けたデジタル人材育成の先進事例
ダイキン情報技術大学の中でもデータ活用基盤として AWS は重要な技術の一つと捉えられており、サーバーワークス社内での研修を通じ、キーマンとなる専門人材の育成につなげています。
2023.02.08 掲載
-
社内エンジニアの学習意欲向上とスキルアップを目指してAWSトレーニングサービスを採用、AWS資格取得者数が倍増し、エンジニア同士の議論の場も醸成
社内のAWSエンジニア10名を対象にサーバーワークスの提供するAWSトレーニングサービス「AWS認定試験サポート-SAプロ対策」を採用。受講者からの波及効果で、トレーニングを受けていないエンジニアのモチベーションも大きく向上しています。
2022.12.01 掲載
-
AWS Application Migration Service を活用し、わずか3ヶ月でのサーバーインフラ再構築を実現
2022.09.14 掲載
-
Amazon Connectの電話自動振り分け機能による業務平準化&管理コスト削減などコールセンターのさまざまな課題を一挙解消!
Amazon Connectと番号ポータビリティ(LNP)により電話番号を変更せずにクラウド型コールセンターを構築。これによりコールセンターの業務改革が大きく進みました。
2022.07.27 掲載