Zendesk と Amazon Connect の連携で、顧客満足度向上に繋がる新たな基盤を構築し、問い合わせ対応時間を約3分の1に削減したアダストリアが目指すカスタマーサポートの次の領域

「課題の棚卸を通じて明らかになった"あるべき姿"を、Zendeskの標準機能でほぼ実現できることが導入の決め手となりました。今後はZendeskを基盤に、守りだったカスタマーサポートの領域を攻めの領域へとシフトしていく計画で、Web接客のトライアルを進めながら、最終的にはコンシェルジュのようなサービスを目指します。」

2023.06.08 掲載

「グローバルワーク」「ニコアンド」「ローリーズファーム」など、30を超えるブランドを国内外で約1,400店舗展開するカジュアルファッション専門店チェーンのアダストリアは、ECサイトの成長に伴う問い合わせの増加に、紙ベースでの管理の限界を感じZendeskを導入。Amazon Connectとの連携により増え続ける電話対応の改善を支援したサーバーワークスは、顧客対応におけるエージェントのストレスを軽減すると共に、自己解決の促進、顧客接点の拡充を通じて顧客満足度の向上に貢献した。今後はWeb接客を強化し、カスタマーサクセスの実現を目指していく。

事例のポイント

お客様の課題
  • 返品・交換などの経理上の手続きにおいて印鑑が必要なケースもあり、問い合わせ対応は紙ベースでの管理を続けていた
  • 顧客接点はメールと電話のみ。CTI連携もしておらず、お客様に関する情報を共有できていなかった
  • 問い合わせ対応時に複数システムの管理画面を行き来するため効率が悪く、顧客もエージェントもストレスを感じていた
課題解決の成果
  • 問い合わせ対応に要していた時間が約3分の1に削減
  • Zendesk とAmazon Connectの連携により顧客に電話対応以外の複数の解決チャネルを提供し、顧客満足度を向上することができた。
  • 会員情報、購買情報、商品情報のデータのAPI連携により一次対応における情報不足を解消
Zendesk と Amazon Connect の連携で、顧客満足度向上に繋がる新たな基盤を構築し、問い合わせ対応時間を約3分の1に削減したアダストリアが目指すカスタマーサポートの次の領域

株式会社アダストリア様

「Play fashion!」をミッションに掲げ、”グッドコミュニティ共創カンパニー”を目指す、株式会社アダストリア。顧客一人ひとりの感性と創造的な暮らし、多様なライフスタイルに寄り添うべく、アパレルの域を超えてマルチブランド・マルチカテゴリーでお応えすると共に、独自のバリューチェーンを通じてトレンドや店頭情報をいち早く次の商品展開に活かしながら、常に新しいファッションをお届けしている。

お話をお伺いした方
株式会社アダストリア 顧客サービス部 部長
山下 雄大氏

株式会社アダストリア 顧客サービス部 マネジャー
宇都宮 英氏

  • この事例に記述した数字・事実はすべて、事例取材当時に発表されていた事実に基づきます。数字の一部は概数、およその数で記述しています。

目次

Zendeskソリューション導入の背景と課題

実店舗

実店舗

「Play fashion!」をミッションに掲げ、”グッドコミュニティ共創カンパニー”を目指す、株式会社アダストリアの30を超えるブランドが”どっと”集結した公式ファッションWEBストアが、「.st(ドットエスティ)」だ。自由にファッションが楽しめる『楽しいほうのファッションストア』をコンセプトに、見るだけでもワクワクするコンテンツを展開。コロナ禍で来店機会が減っていく店舗に対しECサイトの利用者数は増加の一途をたどり、会員数は1,400万人を超え、着実に成長を続けている。

.stのWebサイト

.stのWebサイト

これだけの会員基盤を抱えながら、会員数の伸びと比例して増え続ける問い合わせへの対応に、紙ベースでのアナログな管理を続けていた同社。「本来ならお客様が自己解決できることが理想」と言う株式会社アダストリア 顧客サービス部 部長 山下 雄大氏は、カスタマーサポートにおける課題をこう振り返る。
「十数年前の姿と変わっていませんでした。案件の紙ばかりが大量に溜まっていき、共有もままならない状況でしたし、返品・交換などの経理上の手続きにおいて印鑑が必要なケースもありました。顧客接点はメールと電話のみ。CTI連携もしておらず、お客様に関する情報がまったくない、言うなればハダカの状態で対応していたのです。さらに複数システムの管理画面を行ったり来たりしながらですから、エージェントの心理的負担も大きかったですし、お客様にとってもストレスだったと思います。」

10年前は年間2万件だった問い合わせが24万件(2021年実績)に増加する中で、顧客対応品質を維持するための工数や労力は膨らむ一方だった。単に問い合わせ対応を効率化するだけでなく、属人化を解消するためにも、デジタル化は喫緊の課題だったと言える。そこには、サステナブル経営の実現に向けてDXを重点投資領域に据える同社として、デジタルの顧客接点を強化し、提供価値を高める狙いもあった。

画像

Zendeskが選ばれた理由

もちろん、これまで何も手を打ってこなかったわけではない。たとえば、顧客による自己解決を促そうとチャットボットの活用も試みたが、メンテナンスに時間がかかる製品で想像以上に運用負荷がかかり、根本的な解決には至らなかったという。

顧客サービス部の合言葉は「うれしいをもっと演出していこう」。いよいよデジタルツールの導入に向けて動き出した同社は、いかに顧客にとってもエージェントにとってもうれしいサービスを提供するかという視点で、次の5つの実現を目指した。①顧客による自己解決の促進、②顧客接点の拡充、➂周辺システムの一元化による業務の効率化、④円滑かつ効率的な社内コミュニケーション、➄蓄積したナレッジの有効活用である。

この”あるべき姿”を描き出す上では、部内アンケートを通じて合計122個もの課題を洗い出した。山下氏は、実は一番骨が折れたのがこの作業だったとして、「担当者が抱えている課題は一様ではありません。部内のヒアリングに力を入れたのは、DX化の推進にあたり、やりたいこと、つまりソフト面が固まっていないと、どんなに優れたシステムを入れても変わらないと考えていたからです。約2ヵ月をかけてヒアリングした内容をもとに課題の棚卸作業を行い、言語化していきました」と語る。こうして明らかになった”あるべき姿”を標準機能でほぼ実現できることが決め手となり、Zendeskの導入に踏み切った。

株式会社アダストリア 顧客サービス部 部長 山下 雄大氏

株式会社アダストリア 顧客サービス部 部長
山下 雄大氏

株式会社アダストリア 顧客サービス部 マネージャー 宇都宮 英氏

株式会社アダストリア 顧客サービス部 マネージャー
宇都宮 英氏

ZendeskとAmazon Connect の連携により実現した理想のカスタマーサポートの姿

同社は、部内アンケートでもっとも要望の多かった電話対応の改善に向けて、Zendesk とクラウド型コンタクトセンターサービスのAmazon Connectを連携。IVR(自動音声応答システム)で専任チームへの振り分けを行うだけでなく、IVR経由でSMSを送信。問い合わせフォームへの誘導を行い、チャネルの選択肢を増やした。顧客に自己解決を促すことを目的とした電話対応に頼らないサポートの実現は、今回のプロジェクトにおいてもっとも理想としていた姿である。

また、Zendeskと社内システム上にある会員情報、購買情報、商品情報のデータをAPI連携することで、一次対応における情報の不足を解消。さらに、Answer Botを活用して顧客の自己解決をサポートし、それでも問題解決に至らなかった場合は、チャットによる有人対応に切り替えられるようにした。これにより、電話対応の件数は半減。顧客が問題の種類に応じた適切なチャネルを選び、速やかに対話をスタートできるようになり、顧客はもちろん、エージェントのストレスは大きく軽減している。
「Amazon Connect連携のおかげで、どのお客様からどんな問い合わせがあり、今どのチームが対応中なのかが可視化され、お客様とのやりとりも非常にスムーズになりました。」(山下氏)

構成図

効果は数値にもはっきりと現れている。株式会社アダストリア 顧客サービス部 マネージャー 宇都宮 英氏は、こう説明する。
「まず、一元化により問題解決に必要な情報を容易に収集できるようになり、問い合わせ対応に要していた時間が約3分の1に削減されたほか、ヘルプサイトの使い勝手、検索性の向上によって自己解決率が260%アップし、時間を有効に使えるようになりました。生産性が2.4倍にアップしたおかげで稼働時間が10%縮小され、新しいことにリソースを投入できる余裕が生まれています。また、顧客がチャネルを選べるようになったことで、フリーコールの件数は前年比30%まで減少。その分有人チャットの利用件数が増えて、顧客満足度が向上するという良い循環も生まれています。顧客接点の拡充により、有益な対応ができるようになったことへの評価だと思います。」

スマートフォンからもヘルプサイトにアクセス可能

スマートフォンからもヘルプサイトにアクセス可能

分析によって得たインサイトで、業務を改善

分析によって得たインサイトで、業務を改善

Zendeskと Amazon Connect の導入は、顧客にとってのうれしいを演出するだけにとどまらない。エージェントの働き方改革を推進するため、「もれる人を作らない」という方針を徹底。新しいツールに対するモチベーションに温度差がある中で、一人ひとりにとって定着化の道のりがどうあるべきかを考えながら丁寧に導入を進めた点も特徴的だ。
「根気のいる作業でしたが、大人のドリルだと思って取り組みました。『Zendeskに変えて良かった』という声を聞いたときは非常にうれしかったですね」と山下氏。導入後も引き続きZendeskに関わるエージェントの疑問やリクエストを可視化し、見えてきた課題を改善につなげている。

今後の展望

この先も「うれしいをもっと演出していく」ために、「ここからが始まりです。もともと”守り”だったカスタマーサポートの領域を”攻め”の領域にしていきたい」と山下氏。最終的には、コンシェルジュサービスのように、顧客ニーズにアクティブに働きかけを行うWeb接客に着地していきたいという。その第一歩として、まずは顧客にとって利便性の高いチャネルであるLINEとの連携を予定している。

宇都宮氏は、「Zendeskは購入後のアフターケアも含め、既存顧客への価値提供という部分でも手応えを感じているので、チャットツールを活用しながらリアル店舗と同等の価値提供(商品購入の後押し)をしていきたいと考えています。たとえば、ブランドがターゲットとしている年齢層より上の方は、対面よりオンラインのほうが聞きやすいし利用しやすい場合があります。そうした層を始め、お客様がもっと気軽に使える販売経路の実現において、Zendeskの活用に期待するところは大きいですね」と説明する。

一方で、同社はエージェントにとっての「うれしい」も置き去りにしない。Zendesk
のコミュニティフォーラム構築ソフトウェアを活用し、顧客対応に必要なナレッジやチーム間で横展開できる情報を蓄積し、エージェントを支援していく計画もある。

Zendeskを基盤として多様な顧客接点を取り込みつつ、カスタマーサポートからカスタマーサクセスへと歩みを進めるアダストリア。オンラインでリアル店舗さながらの接客・販売を実現できる日が、着々と近づいている。

担当エンジニア紹介

内村 和博
アプリケーションサービス部ディベロップメントサービス2課
内村 和博
Web アプリケーション・インフラエンジニア/プロジェクトマネージメントの実務経験後、サーバーワークスへ入社。
Web サービスの AWS 移行技術支援、DB EOL に伴う AWS 移行支援、機械学習を用いた Web サービス機能開発支援、Amazon Connect を用いたシステム開発支援などの案件にPMとして従事。
アプリケーションサービス部ディベロップメントサービス1課
柳田 恵里
SIerで業務システム開発の実務経験後、2019年サーバーワークス入社。Amazon Connect を用いたシステム開発支援や Glue / Step Functions 等を用いたデータ分析基盤構築支援といったサーバーレス開発案件に従事。プロジェクトリーダーも担当。Solutions Architect – Professional、Data Analytics - Specialtyなど、AWS認定資格を6つ保持。
保田 和馬
アプリケーションサービス部ディベロップメントサービス1課
保田 和馬
サーバーレスアプリケーションの開発案件やAmazon Connect案件に従事。機械学習やデータレイク、IoTも少々。Python で綺麗(当社比)なコードを書くのが趣味。好きなAWSサービスは AWS Lambda 、Amazon Cognito
孔 允培
アプリケーションサービス部 ディベロップメントサービス2課
孔 允培
サーバーレス開発及びAmazon Connectの弊社ソリューション開発や案件を中心に従事。子供の時の夢は芸人、マジシャン。人を幸せにすることが好きだったため(まだ諦めてません)。優しさと前向き精神で日々精進中。好きなAWSサービスはAWS Lambda、Amazon DynamoDB
水垣 岳志
アプリケーションサービス部ディベロップメントサービス2課
水垣 岳志
主に Amazon Connect 案件やサーバーレスアプリケーション開発案件に従事。Python と Git が好き。好きなAWSサービスは AWS Lambda・Amazon CloudWatch

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