AWSの見積もりにおいて確認すべきこと|見積方法とフロー・注意点
AWSの見積もりを行う際にまず確認すること
AWSでサーバー構成の見積もりを行うには、以下の3つの情報を事前に整理しておくとスムーズです。
① 現行環境の構成情報
- サーバーの台数
- CPU・メモリなどのスペック
- ディスク容量、ネットワーク使用量 など
この情報をもとに、必要なリソース量を把握することで、無駄なスペックの過剰見積もりを防ぐことができます。
② 利用用途(ワークロードの種類)
Webアプリ、バッチ処理、データベースなど、用途によって必要なスペックが異なります。例えば、バッチ処理であればCPU重視、DBサーバーならI/O性能重視など、見積もりの精度に直結します。
③ 今後の構成変更の意向
現行環境をそのまま再現するのではなく、クラウド移行にあわせて構成を見直すケースであれば、新構成でのインスタンス選定に備え、必要な台数や役割分担の整理もしておきましょう。
AWSの見積もりを行う方法
AWSの料金を自社で試算するなら、AWS公式の見積もりツール「Pricing Calculator」を使うのが基本です。事前に整理した構成情報をもとに、月額利用料のシミュレーションが可能です。
【できること】
- 利用予定のAWSサービスを選び、リソース単位で料金を試算
- 複数パターンの構成(例:本番・開発・検証環境)を比較
- 結果をPDFや共有リンクで出力可能(社内稟議にも使える)
AWSで課金対象になる主要なポイント
AWSは使った分だけ課金される従量課金制ですが、「どこにどれだけ課金がかかるのか」を押さえておかないと、想定外の請求になることもあります。主な課金要素は以下のとおりです。
AWSサービス | 課金要素 |
---|---|
サーバーのスペック | 使用するCPUやメモリ数によって1時間あたりの利用料が変わります。 |
ストレージ | 1ヶ月に何GB利用したかでストレージ利用料が異なります。また、ストレージの保管先(Amazon S3やAmazon EBS)により料金が変わります。 |
データ通信料 | 1ヶ月で何GB通信したかにより、データ通信料が異なります。 |
AWS Pricing Calculatorの利用方法
AWSの料金を試算するには、AWS公式の「Pricing Calculator」を使います。ここでは、基本的な使い方を3ステップで解説します。
STEP.1 Calculatorにアクセスして「見積もりの作成」を開始
1.AWS Pricing Calculator にアクセス
2.画面上部の「Create estimate(見積もりの作成)」をクリック
3.右上の「Language」から日本語に変更可能(操作に不安がある場合は推奨)
STEP2:リージョンとサービスを選択し、詳細を入力
1. リージョンの選択
「ロケーションタイプ」から利用予定のリージョン(例:アジアパシフィック(東京))を選択します。リージョンによってサービスの提供状況や価格が異なるため、必ず実運用予定のリージョンを指定してください。
2. サービスの追加と入力項目の設定
左側のメニューから見積もりたいAWSサービスを選択し、必要な設定を入力していきます。
サービス例 | 主な入力項目 |
---|---|
Amazon EC2 | OS、インスタンスタイプ(例:t3.medium)、台数、稼働時間(常時 or 一時的) |
Amazon RDS | データベースエンジン、vCPU数、メモリ、ストレージ容量 |
Amazon S3 | 保存容量、ストレージクラス(標準/低頻度アクセスなど)、データ転送量 |
ほかにも、ストレージ容量やストレージタイプ、月間のデータ転送量など、事前に調査した現行情報に基づいて順次入力します。
STEP.3 合計金額を確認する
利用予定の各サービスの入力が完了し、見積もりの内容が確定したら、画面右上の「エクスポート」ボタンをクリックします。
見積もり結果は、PDFやCSVのドキュメント形式でダウンロードができます。また、作成した見積もりをAWS Pricing Calculator上で保存できる共有リンクも提供されるため、社内共有や修正、再利用が可能です。
自社で見積もりが難しい場合は、AWSパートナーに依頼するのも手
「リソースが足りない」「クラウド構成に自信がない」そんな場合は、AWS認定パートナーに相談するのが有効です。
AWSパートナーに依頼するメリット
1. 構成設計〜見積もりまで丸ごと任せられる
- 現行環境や要件をもとに、最適なインスタンスタイプや構成を提案
- トラフィックの増減や一時的な負荷など、ユースケースを考慮した見積もり
2. コスト最適化&割引メリット
- Savings Plansやリザーブドインスタンスの活用支援
- 請求代行による柔軟な支払い方法・割引の適用
3. 運用設計・移行支援も対応
- ベストプラクティスに基づいた設計レビュー
- 本番環境へのスムーズな移行支援
サーバーワークスでは、AWSの請求代行や運用支援を行う4つのプランをご用意しています。コストの観点だけでなく、一部のプランではAWS運用自動化サービス「Cloud Automator」の無料提供や、その他の支援サービスも行っているので、お気軽にご相談ください。
AWSの見積もりに関する注意点
AWSの料金体系は複雑なうえに、構成や使い方次第で月額コストに大きな差が出ます。見積もりを正確に行うには、以下の3つのポイントに注意しましょう。
1. リージョンによって料金が異なる
AWSは世界中に複数のリージョン(データセンター)を持ち、同じサービスでもリージョンごとに料金が変わります。たとえば、日本リージョン(東京・大阪)は、米国よりもコストが高い傾向があります。地理的制約がなければ、料金の安いリージョンを使うことでコストを抑えられる可能性あり
ただし、レイテンシや法令対応などの要件も踏まえて選定を
2. スペックは「ちょうどよく」が鉄則
AWSでは、サーバーのスペック(vCPU数やメモリ量)がそのまま料金に反映されます。性能が高すぎるとムダなコスト
性能が低すぎるとパフォーマンス不足で再設計コスト発生も
現行システムや将来的な負荷をもとに、必要十分なスペックを選ぶことがコスト最適化につながります。
3. 支払い方法によって大きく料金が変わる
AWSには複数の支払い方法があります。どれを選ぶかで月額料金が数十%変わることもあります。
支払い方法 | 特徴 | 割引の目安 |
---|---|---|
オンデマンド(従量課金) | 使った分だけ課金。柔軟だが単価が最も高い | なし |
リザーブドインスタンス(RI) | 1年または3年の契約。特定インスタンスを固定料金で予約 | 最大約72%(条件あり) |
Savings Plans | 使用量に応じた割引契約。インスタンスに縛られず柔軟 | 最大約66%(条件あり) |
AWS見積もりは「構成整理+ツール活用+適切な判断」がカギ
AWSを正確に見積もるには、次の3ステップが基本です。
1.現行構成や目的に応じて、必要なスペックや用途を整理
2.AWS Pricing Calculatorを使って複数パターンを比較試算
3.支払い方法やリージョン選定など、コスト影響の大きい要素を最適化
また、AWSには一部サービスに無料利用枠があり、開発・検証環境では費用を抑えられることもあります。さらに、支払い通貨がUSD建てになるケースもあるため、為替変動リスクも踏まえて予算を立てることが重要です。
構成検討や料金試算に不安がある場合は、AWS認定パートナーへの外部委託も有効です。最適な構成提案や割引活用の支援を受けながら、コストパフォーマンスの高いAWS活用が実現できます。