Amazon Connect 自動応答システム構築の事例

"運用を開始してから、2割ほどの問い合わせが自己解決されています。自動応答の仕組みは大きなPR活動などを行っていません。それでも問い合わせしてくれた人の多くが、回答を得るのに自動応答を選んでいます。これは大きな効果だと考えています"
NTTスマイルエナジー 価値づくり本部 エコめがねラボ リーダー 出村和之氏

2021.11.16 掲載

Amazon Connectで実現したクラウドコールセンターでの対応自動化にチャレンジした経緯とその効果について、NTTスマイルエナジー 価値づくり本部 エコめがねラボ リーダー 出村和之氏と 価値づくり本部 エコめがねラボ 担当部長 林田悠基氏に伺いました。

Amazon Connect 自動応答システム構築の事例

株式会社NTTスマイルエナジー様

NTT西日本とオムロンの合弁会社として設立されたNTTスマイルエナジー(20206月時点の親会社はNTTアノードエナジー、オムロンソーシアルソリューションズ、NTT西日本)。同社はAIIoTの制御技術を活用し、再生エネルギーや蓄電池などの分散型のエネルギーリソースをつないで制御することで、エネルギーの効率性や持続可能性向上を図るビジネスを展開しています。

  • この事例に記述した数字・事実はすべて、事例取材当時に発表されていた事実に基づきます。数字の一部は概数、およその数で記述しています。

目次

構築の概要

NTTスマイルエナジーでは、2018年にAmazon Connectを用いたクラウドコンタクトセンターの運用を開始し、コールセンター業務の効率化を実現してきました。今回さらなる効率化実現のために、簡単な問い合わせ対応の自動化の仕組みを構築しました。既存のサポートツールとAmazon Connectを連携させ、音声とSMSを組み合わせた自動応答の仕組みを迅速に構築。電話でのコールセンターへの問い合わせの2割程度の自動対応化を実現しています。

また、これまで蓄積したAmazon Connectのノウハウを社内で展開し、内製で新たに2つのクラウドコンタクトセンターを構築、運用を開始しています。NTTスマイルエナジーでは、今後もさらなるコールセンターの高度化、そしてAWS活用の拡大にも取り組んでいきます。

Amazon Connectでの対応自動化検討のきっかけ

AIやIoTの制御技術を活用し、再生エネルギーや蓄電池などの分散型のエネルギーリソースを遠隔制御することで、エネルギーの効率性や持続可能性向上を図るビジネスを展開するNTTスマイルエナジー。同社はコールセンターの電話受付業務を効率化するため、2018年頃から新たなIVR(自動音声応答)システム導入を検討し、2019年1月にはクラウド型コールセンターサービスAmazon ConnectのPoCを実施して採用を決めます。2019年6月からは、Salesforceと連携する形でAmazon Connectを活用するクラウドコールセンターの稼働を開始しました。

Amazon Connectの導入により、IVRによるコール対応の効率化を実現し、同時にソフトフォンによる架電で電話番号の押し間違えなどの人的ミスもなくなりました。さらに全ての通話の詳細な通話ログが自動的に記録、音声データの録音も全て可能となったため、問い合わせ対応品質向上のためのデータ活用も実現できるようになっています。

Amazon Connectで構築したクラウドコールセンターの仕組みを、さらに発展させる取り組みがNTTスマイルエナジーでは行われています。同社では大半のシステムが既にAWS上で動いており、「Amazon Connectのコールセンターの仕組みと既存システムを組み合わせると、さらに面白いことが実現できるのではと、導入当初から考えていました」と言うのは、NTTスマイルエナジー 価値づくり本部 エコめがねラボでサポートシステム開発を担当するリーダーの出村和之氏です。Amazon Connect導入時の出村氏は、コールセンターにおけるマネージメントを担当しており、現在では現場で培った経験や業務効率化のノウハウを活かし、コールセンターなど最前線で使用するシステムの企画から構築までを行っています。

NTTスマイルエナジーのコールセンターでは、顧客自身で自己解決できる仕組みを提供することで、オペレータによる問い合わせ対応の発生頻度を抑制したいと考えていました。顧客が同社の機器を取り付けた際に、コールセンターへ機器の動作確認を行う問い合わせがあります。それがコールセンター対応の4割程度を占めており、単調作業が多いこの対応を何とか自動化できないかと考えたのです。

問い合わせ対応の自動化システムの構築

「元々NTTスマイルエナジーでは、Web上にサポート系のツールを用意しており、機器設置時に必要な情報などが取得できるようになっています。とはいえ、機器取り付けを行う企業が同社と直接の取引関係にないこともあり、ツールを用いて情報を受け取れることが周知されていないケースもあります。そこでコールセンターに問い合わせしてくれた人に、必要な情報をすぐ渡せるように、Amazon Connectの仕組みにサポート系のツールを組み込んでしまおうと考えました」と出村氏は言います。

自動応答を検討した結果、2020年の6月頃にはAmazon Connectとツールを組み合わせて構築できそうだと目処が立ちました。そこから実装方法を検討し具体的な構築の方針を決め、2020年10月にはAmazon Connect導入時にサポートしたサーバーワークスに相談。開発方針を決める過程では、顧客へのアウトプットの形をどうするべきかで悩みました。当初は合成音声での返答も検討しましたが、専門用語が多く解釈が難しいのではないか、合成音声を長く聴かされるのはストレスになるのではないかという懸念があり、合成音声だけでの返答は採用しませんでした。幸い、問い合わせのほとんどが携帯電話からだと分かっていたため、音声とSMSのメッセージによる組み合わせを利用することで、回答の明確化や既存のサポート系のツールの利用を促すなど多くのメリットが実現可能と判断しました。

2021年1月からサーバーワークスのサポートで構築が始まり、テスト期間を経て、2021年5月のゴールデンウイーク明けに自動応答の仕組みの本番稼働が開始されました。電話で設置時の確認について問い合わせをする場合は、自動音声の案内に従い機器の製品IDをプッシュ操作で入力すると、必要な情報が記されたSMSのメッセージを受信することができます。

この仕組みを構築する以前は、電話を受けたオペレータが手作業でIDを打ち込んでから情報を口頭でお伝えし、電話対応が終わるとSalesforceに結果を入力していました。今回の自動応答システムでは、問い合わせしてきた人がセルフサービスでIDを入力すればすぐに回答が届き、対応した結果もSalesforceに自動で記録されます。その結果、問い合わせの手間を削減できただけでなく、何件の問い合わせに自動対応できたかという状況もリアルタイムで把握できるようになったのです。

システム構築後の効果

「Amazon Connect導入時に、サーバーワークスは依頼に基づき構築したものを単に納品するのではなく、プロジェクトを一緒に進めてもらったことで、我々の中にAmazon Connectのスキルを持つことができました。それが、今回の新たなAmazon Connect活用の展開につながっています」と言うのは、NTTスマイルエナジー価値づくり本部エコめがねラボ 担当部長の林田悠基氏です。

これまでのプロジェクトを通じて内部に知見が蓄積されていたため、自動化の構想だけでなく具体的な実装イメージに落とし込んだ形でサーバーワークスにサポート依頼ができ、構築プロジェクトはかなりスムーズに進められたと林田氏。コミュニケーションを取りながら一緒にAWSの活用に取り組めるのは、サーバーワークスに依頼して最も良かったポイントだとも言います。

「構築にあたり、電話とSMSを組み合わせた仕組みが自動で動くかどうか、多少の不安もあった」と出村氏。テキストメッセージを送信するAmazon SNSの利用経験もなく、さらに携帯電話キャリアが複数ありキャリアごと異なった制限があります。全ての環境を用意し、細かいレベルでテストするのは難しい面もあったのです。とはいえサーバーワークスにこの領域の知見やノウハウがあったため、構築プロジェクトは円滑に進みました。リリース後も自動応答の仕組みは極めて安定しており、本番稼働後にSMSでの返答に関してもトラブルは一切発生していません。

「運用を開始してから、2割ほどの問い合わせが自己解決されています。今回導入した自動応答の仕組みは大きなPR活動などを行っていません。それでも問い合わせしてくれた人の多くが、回答を得るのに自動応答を選んでいます。これは大きな効果だと考えています」と出村氏は言います。問い合わせしてくる人たちはすぐに情報を得たいので、その要望に応えられていることこそが、今回のシステムの最も大きなメリットです。

今後の展望

今回Amazon Connectと既存のシステムをつないだ自動化の成果により、社内からAmazon Connectの仕組みをさらに使いたいとの要望が出ています。実際にサーバーワークスから提供されたAmazon Connect活用のための情報や、蓄積したノウハウを他部署に提供することで、社内で2つのAmazon Connectのコールセンターが新たに内製で構築され運用が始まっています。成功体験を共有できたことが、このような活用の拡がりにつながっているのです。

NTTスマイルエナジーではAmazon Connectをさらに使いこなすために、機械学習を活用したリアルタイムのコンタクトセンター分析であるContact Lens for Amazon Connectの活用も検討しています。「音声認識機能を使いネガティブな対応を見つけられれば、コンタクトセンター管理者の負荷を減らせるはずです」と出村氏。これはまだ日本で実績のない先進的な取り組みであり、既にサーバーワークスに相談し具体的な活用方法の検討も始まっています。

もちろんAWSの新たなサービスを利用すればその分コストもかかります。しかし「この機能の費用はそれほど高くありません。管理者の業務が1日1時間でも削減できれば、十分に元が取れるでしょう」とも言います。

NTTスマイルエナジーでは、さらなるコールセンターの高度化を含め、AWSを活用しさまざまな業務を効率化したいと考えています。まだ模索している部分もあるので、サーバーワークスには一緒に考えサポートしてくれることを期待していると林田氏は言います。そしてクラウドネイティブなアプリケーション開発も実施していくので、その点においてもより深い連携がサーバーワークスには期待されています。

担当エンジニア紹介

プロジェクトリーダー
柳田 恵里
新卒入社したSIerで業務システム開発を担当。2019年サーバーワークス入社、Amazon Connect案件等の各種サーバーレス開発案件に従事。プロジェクトマネジメントも担当。Solutions Architect – Professional、Data Analytics - Specialtyなど、AWS認定資格を6つ保持。

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