AWS上で全社標準のインフラ共通基盤の構築・運用を内製化。ビジネスのアジリティを向上すると同時にコストコントロールの最適化も実現

各種イベントのチケット販売を柱に、ライブ・エンタテインメント領域で幅広く事業を展開するぴあ株式会社。これまで事業を支えるシステム開発・運用の多くを外部のベンダーに委託してきた同社は、2024年から本格的な内製化に舵を切り、現在はサーバーワークスの支援を通じてアマゾン ウェブ サービス(AWS)で構築した全社標準の次世代インフラ共通基盤上で新規システムの開発を進めています。内製化とアジャイル開発へのシフトによってビジネスのアジリティは向上し、運用保守などを含めた外部ベンダーへの委託コストも削減。自社でのコントロールによるコスト最適化が実現しています。今回は同社が運営する「ぴあアリーナMM」併設ラウンジのCLUB 38にて、その詳細を伺いました。
事例のポイント
Before
お客様の課題
- 外部ベンダーへの依存によるAWSの知見、ナレッジの不足
- 新たな案件に対応するためのビジネスアジリティの低さ
- 分散したAWS環境のコストコントロールの課題
After
課題解決の成果
- 内製化によるビジネスアジリティの向上
- 内製開発、アジャイル開発のノウハウ獲得
- 共通化されたAWS基盤上でコストコントロールを最適化
- 外部ベンダーへの委託コストの大幅な削減
導入サービス
Index
内製化によってベンダー依存から脱却しビジネスのアジリティを向上
日本最大手のチケットエージェンシーとして、ぴあは自社で行うチケット販売のほか、興行の主催者やスポーツ団体などエンタテインメント業界の取引先にもチケット販売システムを提供し、マーケティングの活性化や収益の拡大を支援しています。現在、同社が開発・運用を手がけるシステムの多くはAWS上で運用されています。
しかし、これまで複数のベンダーに開発・運用を委託してきたこれらのシステムはガバナンスが十分ではなく、AWSへの支払いも分散されるためコストの全体像が見えにくく、セキュリティの観点でも不安がありました。そこで同社はサーバーワークスに支援を要請し、2022年10月~2023年12月にかけて全社標準の次世代インフラ共通基盤を構築しました。システムソリューションリージョン IT共創開発部 部長 兼 システム戦略室の下田和幸氏は次のように話します。

「共通基盤の構築においては、インフラやセキュリティのあり方を“ぴあ標準”として再定義し、全社共通の運用ガイドラインを整備したうえで、新規システムの開発は共通基盤上で内製化する方針としました。そして、内製化に向けた伴走パートナーとして支援を要請したのが、共通基盤の構築でも実績があるサーバーワークスさんでした」
共通基盤の構築後、内製開発チームを立ち上げた同社が具体的な目標として掲げたのが、「ビジネスのアジリティ向上」「適切なコストコントロール」「社内エンジニアの技術力向上」「全社的なデジタル文化の醸成」の4つでした。
「事業部門から相談が寄せられる新たな案件をスピーディーに進めていくためには、内製開発チームのスキルを底上げし、ベンダー依存から脱却しなければなりません。そこで内製化の第1号案件として、既存顧客のチケットサイトと連携する会員管理システムのインフラ構築に取り組むことを決定しました」(下田氏)
専用のテンプレートを活用して要件定義や設計・構築を内製で実施
2024年1月から内製開発に着手した新たな会員管理システムは、サーバーワークスの支援を受けながら要件定義、設計構築、動作確認などを進め、同年3月には無事にリリースすることができました。
内製開発のステップとして、まず要件定義のフェーズではサーバーワークスから提供されたテンプレートを用いて要件を固めて、アーキテクチャを決定。その後の設計・構築フェーズでも、同じくサーバーワークス提供の設計テンプレートとパラメータテンプレートを用いて、内製開発チームのメンバーが主体となって設計と構築を実施しました。
「設計やパラメータのテンプレートを提供いただいたものの、初心者のため当初はわからないことが多くありました。その中で、サーバーワークスさんからは設計時の注意点、必要なパラメータとその設定値など、細かな疑問に回答をいただくことで、自力でゴールにたどり着くことができました。この経験を経て、その後もチケットのリセールシステムなど、内製開発チームでいくつもの新規システムの開発を継続的に手がけています」(下田氏)
内製開発は共通基盤の開発案件でも実施し、さまざまな改善を進めています。その1つが、トラフィックが急増した際にユーザーリクエストをバッファリングする「仮想待合室」の構築です。ここではサーバーワークスの支援を受けながらAWS Virtual Waiting Roomを開発し、導入を進めていくことでコストの削減を図ることができると考えています。また、AWS上のセキュリティリスクを検出するAWS Security Hubのアラート情報を、Slack上でリアルタイムに通知する仕組みも内製開発し、障害対応のリードタイム短縮と運用負荷の軽減を実現しました。システムソリューションリージョン IT共創開発部の升方覚氏は次のように話します。

「AWS上でのインフラ構築の経験がない中で、わからないことはサーバーワークスさんに相談しながら解決し、大きなトラブルもなく共通基盤の新機能をリリースすることができました。この過程ではサーバーワークスさんのレスポンスの速さに助けられたことに加えて、AWSの資格取得に関するアドバイスもいただくなど非常に有意義でした」
能動的なコストコントロールで外部への委託コストを大幅に削減
2025年7月現在、ぴあでは新規システムの開発におけるAWSインフラ構築の多くを内製で行えるようになっており、当初掲げていた「ビジネスのアジリティ向上」「適切なコストコントロール」「社内エンジニアの技術力向上」といった目標は着実に達成されつつあります。さらに内製化を機に従来のウォーターフォール開発からアジャイル開発にシフトしたことで、新たなシステムをいち早くリリースし、改善を繰り返すことができるようになった点も大きな成果です。
コスト面においても、設計・構築の外注委託コストが削減され、月単位の運用保守コストも低減することができています。
「AWSの知識が蓄積されたことで、定額割引プランの適用などコストの最適化を能動的に考えられるようになりました。1カ月単位でCPUの使用率を見て、スケールダウンが可能と判断した際には事業部門に提案し、成果を上げた実績もあります」(下田氏)
既存システムも共通基盤へ移行しブラックボックス化を解消
今後について、共通基盤上で新たなシステムや機能の内製開発を積極的に進めていく方針に変わりはありません。一方、外部ベンダーの開発・運用が継続している既存システムは、将来的に共通基盤上に移行してブラックボックス化を解消する方針です。共通基盤自体の開発についても、サーバーワークスの支援領域を徐々に縮小しながら内製化比率を高めていく考えです。
サーバーワークスとのパートナーシップについては、今後もAWSの知見のさらなる向上、内製システムの運用支援、本格化する全社的なデジタル文化の醸成など、幅広い支援に期待を寄せています。
「実際に支援を受けてみて、サーバーワークスさんは通常の伴走支援以上にぴあという会社の性格を理解し、私たちに寄り添ってくれていることを実感しています。今後も引き続き、業界特有の要件を踏まえた杓子定規ではないアドバイスをいただければと思います。また、これから重要になるマルチクラウド領域での支援にも期待しています」(下田氏)

ぴあ株式会社様
「ひとりひとりが生き生きと。」を理念に、音楽・スポーツ・演劇・映画など各種イベントのチケット販売、各種興行イベントの主催・運営、イベント主催者へのソリューションサービスの提供、ぴあアリーナMMをはじめとするホール・劇場の運営、その他、出版物の企画・編集、ネットメディアの運営、スマートフォン向けアプリの提供など、エンタテインメント領域全般にわたる事業を展開。
取材に協力いただいた方々
- 下田 和幸 氏
- ぴあ株式会社 システムソリューションリージョンIT共創開発部 部長 兼 システム戦略室
- 升方 覚 氏
- ぴあ株式会社 システムソリューションリージョン IT共創開発部
※ この事例に記述した数字・事実はすべて、事例取材当時に発表されていた事実に基づきます。数字の一部は概数、およその数で記述しています。
担当プロジェクトメンバー
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エンタープライズクラウド本部 ソリューションアーキテクト課 磯谷 洋輔
前職ではインフラエンジニア、アプリケーションエンジニア、PMを経験。サーバーワークス入社後は主にインフラ構築案件のPMとして活動。
仙台在住。趣味はキャンプ(ハイエース買いました!)とスポーツ観戦(仙台89ers)。2024-2025 Japan All Certifications Engineers。 -
エンタープライズクラウド本部 ソリューションアーキテクト課 松田 渓
2021年に中途入社。以来AWS OrganizationsやAWS Control Towerを活用した統合管理基盤の導入から運用保守案件を担当し、マルチアカウント環境の管理と統制を軸としてお客様の支援に従事。好きなAWSサービスはAWS OrganizationsとAWS Security Hub。
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エンタープライズクラウド本部 ソリューションアーキテクト課 篠﨑 勇輔
主にインフラ構築案件のメンバーとしてVPCやEC2からAWS Organizations等様々なサービスの設計構築を担当。
好きなAWSサービスはAWS CloudFormation。 -
エンタープライズクラウド本部 ソリューションアーキテクト課 櫻井 誠大
2021年に新卒入社。VPCやEC2のインフラ構築案件を経て、現在は主にAWS OrganizationsやControl Towerを用いたマルチアカウント環境の構築・運用支援を担当。
好きなAWSサービスはAWS Transit Gateway。趣味は登山で、好きな山域は八ヶ岳。 -
エンタープライズクラウド本部 ソリューションセールス課 櫻沢 善行
前職は大手コンピューターメーカー系SIerで官公庁営業に従事(主にLAN/WANシステム案件を担当)。サーバーワークスには2020年10月に入社し、エンタープライズ企業/金融機関への営業を担当。
Webサイト構築から共通基盤導入まで多くのAWSインフラ案件を経験。運用支援の実績も豊富。
選ばれる3つの理由
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Reason 01
圧倒的な実績数による
提案力とスピード- 導入実績
- 1480 社
- 案件実績
- 27100 件
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Reason 02
AWS認定の最上位
パートナーとしての技術力 -
Reason 03
いち早くAWS専業に
取り組んだ歴史