会社統合に伴うサーバーインフラの再構築にAWSを選んだ目的と経緯、サーバー移行にAWS Application Migration Service を利用した効果について、日清紡マイクロデバイス株式会社 コーポレート統括本部 経営戦略本部 IT企画推進部 高橋氏に伺いました。
事例のポイント
- お客様の課題
-
- 2社の統合に伴い、早期にインフラ環境の見直しが必要だった
- 従来、東京・大阪でのバックアップは実現していたが、BCPの観点より大規模災害時に他拠点でサーバー立上出来るDR環境構築が必要であった。
- 課題解決の成果
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- AWS Application Migration Service(AWS MGN) を利用し、3ヶ月程の期間で30台のサーバをAWSに移行し、サーバー移行工数を大幅に削減した
- 大阪リージョンと東京リージョンを併用する事で、地域を跨いだDR環境を実現した

日清紡マイクロデバイス株式会社様
日清紡マイクロデバイス株式会社は、2022年1月に新日本無線株式会社とリコー電子デバイス株式会社の統合によって誕生した会社です。同社は統合前会社それぞれの強みとノウハウを併せ持つことで、車載器・産業機器・民生機器向けの半導体や衛星通信コンポーネントなどの製造を通して産業界の進歩やエンドユーザーの利便性向上に貢献しています。
お話を伺った方:
コーポレート統括本部 経営戦略本部 IT企画推進部
山野 雅一 様
宮里 哲平 様
岡田 正 様
高橋 一智 様
- ※この事例に記述した数字・事実はすべて、事例取材当時に発表されていた事実に基づきます。数字の一部は概数、およその数で記述しています。
目次
企業統合に伴う課題をAWSとサーバーワークスの伴走型支援で解決
日清紡マイクロデバイスでは、2社の企業統合に伴い「ネットワークの統合」を必要としていました。しかし従来のオンプレ環境、およびIaaS基盤として使用していたクラウド環境では、新しいゼロトラストベースのネットワークにつなぐにはコストがかかりすぎます。そこで導入したのが、DR環境の構築が容易で初期コストがリーズナブルなAWS。実際の導入作業には AWS Application Migration Service(AWS MGN) を利用し、サーバーワークスの伴走型支援を受けることでトラブルのないスムーズなサーバー移行を実現しました。同社ではSaaSサービス利用を含め、今後もAWSの利用拡大を目指していきます。
ゼロトラストベースのネットワークへの接続が課題に
2つの企業が統合して生まれた日清紡マイクロデバイス。業界屈指の企業同士が合流するには「ネットワークの統合」も欠かせません。しかしこれには課題がありました。「統合先が構築していたゼロトラストベースのネットワークに我々も合流する必要がありましたが、従来のデータセンターやクラウドサービスではそれが困難だったのです」と語ります。
これまで旧リコー電子デバイスがインフラとして利用していたのは、オンプレとクラウドの両方。しかしクラウドはあくまでIaaS基盤として利用しており、「実質的にはオンプレみたいなもの」だったといいます。こうした環境から直接ゼロトラストベースのネットワークに接続し運用するには、「非常に高額のコスト」が必要でした。
もうひとつ課題として挙げたのはDR対策です。日清紡マイクロデバイスは東京(本社)に加え西日本にも多くの拠点を保有しており、これまでも地域(拠点)をまたいだデータのバックアップは実施していましたが、本格的なDR環境でのサーバーの立ち上げには対応していませんでした。BCPの観点からも、新たなDR環境が必要だったといいます。
DR環境構築の容易さと初期コストの低さがAWS採用の決め手に
IT部門が新しいサーバーインフラの移行に着手したのは、2社の統合を目前に控えた2021年6月ごろのこと。サービスの選定にはその少し前から取り組んでいました。「当時の選択肢は3つでした。インフラをオンプレに統合するか、すでに利用していた他社のクラウドを利用するか、新たにAWSを利用するかです」と振り返ります。
統合先は関東が拠点でオンプレ中心の運用でした。関西拠点の旧リコー電子デバイスが統合先と同様のオンプレ環境を新たに整備するには、自分たち自身でハードウェアを用意して、専用回線を設置、バックアップ環境も自分たちで作らなければなりません。「大阪で被災したときに、東京ですぐサーバーを立ち上げる」システムを構築するには非常に大きな手間とコストが必要でした。
その点、AWSには同社のニーズを満たすDRを構築できる環境が備わっており、環境さえ整えればすぐにでも利用できる状態でした。コストもオンプレ環境の整備よりかなりリーズナブルだったといいます。これまでIaaS基盤として利用していた他社のクラウドとの比較でも、さまざまなSaaSサービスを利用できる点が大きな強みとなりました。
同社がAWSの導入を決めたのは9月で、その時点でサーバーワークスをベンダーとすることも決まっていたといいます。「ベンダーとしては3社に声を掛けていました。サーバーワークスさんを選んだのは、一番親身になって相談に乗ってくれたためです。実際、AWS導入にあたってはいろいろなサポートをしてもらいましたが、レスポンスも技術レベルも満足できるものでした」(高橋氏)。
その後は1ケ月程かけPoCで技術的な問題点を検証し、11月から本番移行に着手。全サーバーの移行が完了したのは、新会社への統合を果たした直後の2022年1月半ばのことです。
AWS MGNの活用によりサーバー移行の工数を大幅削減
サーバー移行にはAWS Application Migration Service(AWS MGN)を採用しました。ツール選定の理由は「現行の環境をそのままAWS上に再現」できること。「詳細が把握できないサーバーに関しても、そのまま移行してAWS上で稼働できるのが魅力でした」と高橋氏は語ります。通常サーバーの移行は、「サーバーを新規に立て、アプリケーションとミドルウェアをインストールし、動作検証をする」手順が必要になりますが、AWS MGNを利用することで大幅な工数削減となりました。「我々の場合、1TB程度の容量のサーバーも数日でAWS環境に移行する事が出来ました。AWS MGNは、移行元とAWSサーバー間のレプリケーションを切断しない限り、ほぼリアルタイムで元サーバーとのレプリケーションが継続できます。AWSへ移行したサーバーの動作検証中も常にデータを最新に保ったままできたことが検証の精度アップ、AWS上での移行サーバーの早期CutOverにも繋がりました」
一方、PoCを含めてサーバー移行に伴う大きなトラブルはなかったといいます。細かなトラブルについてもサーバーワークスの支援ですべて解決しました。「サーバーワークスさんとは週一でWeb会議を行い、移行の際にはWeb画面を共有しながらその場でレクチャーしてもらいました。伴走型支援に満足しています」(高橋氏)。
DR対策については、AWSの機能を生かすことにより「大阪リージョンをプライマリーとして、東京リージョンでバックアップする」という環境が構築できました。大規模災害等で大阪リージョンが利用できなくなった場合、東京リージョンで大阪のサーバーを立ち上げることも可能で、当初のニーズをしっかり満たす結果となりました。
AWS上のSaaSサービス活用にも積極的に取り組んでいく
今後の取り組みについて高橋氏は2つの目標を掲げています。1つ目の目標は「クラウド化の促進」です。「今後オンプレ機のライフサイクル・タイミングでDR環境まで含めた投資と運用コストをクラウドと比較検討した上でクラウド化を進めていきます」。
もう一つは「SaaSサービスの活用」です。「AWSからはインフラだけでなく各種SaaSサービスも提供されており、社内展開を推進していく予定です」。
今後は、日清紡マイクロデバイス全体でのAWS活用を進めますので、
「サーバーワークスさんには技術サポート・運用サポートに続き、弊社が実現したいシステムへのより高度なアドバイス・提案を期待しています」。
担当エンジニア紹介
AWS導入・活用に関するご相談はサーバーワークスへ
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